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キーエンスを知る:開発最前線 MD-V9600
商品開発が、事業部をつくった
今から6年前、キーエンスに新たな事業部が誕生した。きっかけは、レーザマーカだった。当時、キーエンスで初めて開発されたレーザマーカが大きな反響を呼び、マーキング装置を扱う事業部として発足することになったのだ。市場が求めるなら、ビジネスとしての可能性があるなら、どんな分野の商品でも開発していい。時にその開発力は、事業体をもつくる力を発揮する。まさに、キーエンスの商品開発の特性を象徴する出来事だった。
より市場価値の高い商品を開発しよう。そのための技術を磨こう。そう決意して6年。事業部の主力商品たる期待を背負い、V9600は開発された。プロジェクトマネージャーには、森脇が就いていた。
キーエンスの名にかけて、失敗は許されない
目指したものは、これまで以上に、美しく、速く、使いやすいレーザマーカだった。その目的のどれ1つとっても、今ある技術だけでは実現は不可能だった。スタートから、難易度は高かった。
「レーザマーカは、さまざまな技術の複合体です。レーザの技術、光学技術、それらを制御する技術、ソフトのアプリケーションも必要だし、発熱を抑える冷却の技術もいる。しかも、より美しくより高速の印字を求めるのですから、その一つひとつの技術をさらに高めていかなければいけない。特に今回は、省スペースやメンテナンスしやすさといったユーザーメリット実現のために、キーエンスとして初めて空冷方式を採用しましたから、まったく新しい技術にもチャレンジすることになりました」。
プロジェクトマネージャーとしての森脇には、そのすべての技術を理解し、相互に調整し、事業部の主力にふさわしい商品へと導く任務がある。「新しいレーザマーカとして、絶対的なものを創りたい。しかし、失敗は許されない」。プレッシャーは、大きかった。
やりたい開発が、最高の環境でできる
技術の数だけ、メンバーが集まった。経験豊富な開発者がそろった。担当する技術の割り振りには苦労した。向き・不向き、興味の方向性、こだわりなど、いろいろと考えた。「ハイレベルの技術力が要求されるだけに、開発者一人ひとりの能力が重要になってきます。だから、適正や志向性は重視して担当を決めると同時に、一人ひとりが最も力を発揮できる環境をつくることに、尽力しました」。日ごろから自分がやりたいことを発信している者が、それを極めるためにプロジェクトに呼ばれる。そして、やりたいことが、最高の環境でできる。それが、キーエンスだ。
もちろん、困難も多かった。レーザマーカ自体、比較的新しい分野の商品である。言い換えるならば、社内に技術的なノウハウがまだ少なかった。あらゆる局面で技術の転換が要求された。メンバー全員が技術革新とともに進歩していくプロジェクトでもあった。
顧客満足。そして、開発者の満足
もう一つ、森脇には重要な役割があった。商品の最適化だ。美しさも、速さも、時間とコストをかければどこまでも向上するだろう。しかしそれでは、顧客が買いたいと思う商品にはならない。過剰スペックは、ユーザーにはデメリットでしかない。
営業とのコミュニケーションを密にした。あらゆるユーザーニーズを徹底して調査した。細かい情報の積み重ねから、一つひとつのクオリティを決定した。顧客の満足こそが、V9600の基準だった。
しかし、「そこに必ず開発者の満足がなくてはならない」というのが森脇の持論だ。「やりたい、と思う気持ちを尊重したいのです。それがなければ、決して良いものは創れない。でも、ユーザーニーズとのバランスを取るのは簡単ではありません」。正解は、自分自身で見つけなければならない。難しい局面での判断を迫られるたびに、森脇は、担当する開発者の情熱へ、思いを馳せた。
美しさとは何か。終わりなき追求が、技術の進歩へとつながる
開発期間ぎりぎりまで、クオリティを追求し、調整が進められた。特にこだわったのは、「美しさ」だった。どんな物にでも、美しく印字できる。たとえそれが、高さ0.1mmの極小文字であっても。「しかし」森脇は言う。「美しさというのは、どこまで行っても満足できるものではありません。10年前に美しいと言われたものと、今、美しいと評価されるものとは違う。美しさの追求に終わりはないんです」。
まぎれもなくV9600は、今のニーズを反映し、今の美しさの頂点を極めるものだ。しかし、その頂からは、もう、次のルートがはっきりと見えている。「ニーズに合わなかったり、技術的にクリアできなかったり、コストバランスが取れなかったり。さまざまな理由で商品に反映できなかった要素もありました。だから今度は、必ずそれらを実現させたいのです」。森脇のまなざしは、今、「10年後の美しさ」にそそがれている。
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