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キーエンスを知る:開発最前線 VK-9500
VK-9500シリーズ バックストーリー 可視光の限界が見せたものは、「別世界」だった。技術者が明かす開発秘話
アドバンステクノロジー
可視光の限界が見せたものは、「別世界」だった。

コンセプトは、可視光限界波長の顕微鏡

「紫色のレーザを使った顕微鏡を創ろう」。そのアイデアに、中務が呼ばれた。入社2年目。紫色レーザの情報を集め、レーザ顕微鏡を扱う営業マンからエンドユーザーの生の声をピックアップする。紫色レーザは、一般的な赤色レーザの2/3の波長。短い分だけ克明に見える。同時に、顕微鏡の情報をPCで操作できれば、ユーザビリティも大きく向上する。採用する紫色レーザは開発段階だったが、それは素子メーカーと協議してゆけば良い。中務が仕上げた企画に、GOサインが出た。中務は、顕微鏡の心臓部ともなる測定部の開発を任された。

「初めて」が、技術的な幅を広げる

企画が実施段階に入り、スタッフが増える。顕微鏡のコントローラ担当には、下中が呼ばれた。中務の同期。化学専攻で電気は専門ではない。ハードウェアには関わったことすらなかった。必要なことをいかに早く覚えて身に付けるか。「先輩エンジニアのフォローを得ながら、自分なりに考えて自分なりの方法を見つけていきました。必要性を実感していたから、覚えるのは早かった。一つ解かってくると、理解が次々に広がっていく。仕事がどんどん面白くなっていくんです」。測定部ができたらすぐ作業が進められるように、コントローラも日々微調整を繰り返しながら、その完成度を高めていった。

完成への道のり、何度、つまづいただろうか

中務もまた、試行錯誤の日々だった。学生時代の専門は生物。レーザの知識どころか、最初は、高価で壊れやすい紫色レーザを扱うことすら緊張した。「前機種の特徴をつかみ、紫色レーザにする際のポイントを勉強しました。だけど、知らないことの方が多いから、つまらないところでも必ず転ぶ。計画を立てて実験しても、性能が出ない。その繰り返し。不安がなかったと言えば嘘になります」。何とか試作品を完成させた時は、予定より大幅に遅れていた。

「たかが2/3」が、世界で初めて見せた風景

いよいよ、測定部をコントローラに接続する。実はその時、二人は思っていた。「可視光限界波長とはいえ、赤色レーザの2/3。たかが2/3じゃないか」。しかし、次の瞬間、画面に見えたものは、「全くの別世界」だった。赤色レーザではきれいな平面に見えていたミラー上のわずかな汚れまで、くっきりとその凹凸が映し出されていたのだ。「これはすごい!」。その場にいた全員が、いけると確信した。俄然、やる気が出た。

思いを、伝えること。口下手なんて、関係ない

商品の完成度をさらに高めるためには、商品をトータルで理解することが要求される。自分の担当分野を越えた範囲へと、開発者たちの意識は広がっていった。それはおかしい。こうするべきだ。そんな意見も出る。「なぜおかしいと思うのか。自分の考えを早く正確に伝える必要性をひしひしと感じていました。疑問点はその段階で解決しなければ、後で取り返しのつかないことになる」。下中をはじめ、誰もがそう感じていた。遠慮はない。それは、中務と組むことになった新入社員でも変わらない。「彼は計算が得意な人でしたから、私が学ぶことも多かったです」。それこそ全員が一丸となって、商品はついに完成した。

到達点−「他社に、負ける気がしない」

VK-9500が営業マンに紹介される日が来た。モニターに画像を映す。「おおっ!」あちらこちらから歓声があがる。誰もが、説明が終わるやいなや、商品を触りだし、あらゆるモノの形状を測定し始めた。その場に立ち会っていた下中は、手応えを感じていた。しかし、後日中務が営業所を訪れた時は、少し違っていた。反応は確かにすごかったが、要望も多かった。「そんなにダメなんだろうか」と肩を落とした中務に、営業マンが言った。「要望が出るのは気に入ってるからだ。基本的には、みんなむちゃくちゃ気に入ってるんだ」。今、営業マンたちは言う。「他社に、負ける気がしない」。
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