キーエンス開発プロジェクト

3次元カメラ XR

目に見えないノイズとの戦い。
高速3D検査を現実にしたアルゴリズムと設計。

下平 真達/嶋野 智貴 [画像システム事業部]

XRシリーズは、画像システム事業部の新たな領域への挑戦だった。これまでのFAにおける画像システムは2次元的な検査がほとんどであり、検査できる内容にも限界があった。そんな中で、「μmオーダーの3次元検査を、インラインで高速に行う商品」を開発しようというのだ。しかも3次元検査は、画像システム事業部にとって完全な新規事業。当然ながら相当の難易度が想定され、キーエンス社内でも「本当に商品化できるのか?」とざわめきが起こった。けれど、これが完成すれば間違いなく、製造の現場に新たな価値を提供できる。そんな事業部をあげた一大プロジェクトに抜擢されたのは、入社2年目から画像処理のアルゴリズム開発に携わってきた下平と、入社3年目に開発へ引き抜かれてきた嶋野だった。

本社実験施設を長期占有して、試行錯誤の日々。

「どう計算したら3次元計測ができるのか?」プロジェクトのスタートはそんなゼロの状態からだった。3次元計測に関する本や論文を読みあさり、高速・高精度に3次元計測するためのアルゴリズムの工夫も重ねた。しかし、事業部初の試みというだけでなく、そもそも構造的にも過去の商品とは比べものにならないほど難しいものだったため、次々に課題に直面した。構造内のほこりやレンズの指紋までもがノイズとして計測結果に現れてしまう。μmの世界は、目に見えないものとの戦い…。なぜそんなことが起こってしまうのか?問題の原因特定にこれほど骨が折れるとは思いもしなかった。そして、インラインという特性上、コンパクトで取り付けも容易なものにしなければならない。据え付けで使いつづけられることに意味があるのだから、問題が生じるたびに調整するのではインラインでの実用性がなくなってしまう。課題が見つかれば必ず解決し、一つひとつ精度を高めていかなければ…。あらゆる角度から現場の声に即した商品を作るため、試行錯誤の日々は終わらない。下平は「夢の中までアルゴリズムを考えた」と当時を振り返る。

何としてでも課題を克服し商品として完成させるため、下平・嶋野は環境を整える決意をした。普段は東京勤務の二人だが、大阪本社の実験施設の一部を長期間占有し、設計部門・品質部門・量産部門を含め、社内の他の事業部での3Dに関する知見も結集するため様々な部門の人達と密に連携を取った。一つひとつ、複数の視点から改善を繰り返す毎日。数か月間にわたるホテル住まいの末、ついに商品を完成させ発売へとこぎつけることができた。

市場は厳しい。突きつけられた最大の難問

しかし、XRシリーズを市場に投入!という一歩手前で最大の難問が持ち上がる。新規市場はそれほど甘い世界ではなかった。金属に対する撮像の不安定さが浮き彫りとなったのだ。市場から突き付けられた最後の課題。立ちふさがる難題に、言葉も出なかった。鏡面反射による強い反射光や、金属間での多重反射が生じることで、誤計測を避けられない金属。それをどう安定的に撮れるようにするか…。プロジェクト最大の難関だった。しかし二人は、立ち止まるつもりはない。答えは見つけ出せばいいのだ。ふりだしには戻ってはいない。世の中を変えられる商品となるための大きなヒントに出会えたということなのだから。勝負所は、ここなんだ!下平と嶋野の挑戦心に再び火が付いた。

多重反射はどのようにして起こっているのか?角度を変えて撮影するとどうなるのか?糸口を見つけては実験し、一歩ずつ地道に答えを探求しつづけた。「パチンコ玉を3D計測できるように」という目標を掲げ、徹底的に金属と向き合った。

常識を覆した、「光学系と新アルゴリズムの融合」という解法。

徐々に課題の改善方法が明らかになっていくものの、中には一筋縄では解決できないものもあった。光学系の改善、レンズやプロジェクターの部品改良、アルゴリズムでの対策、もしくは他に何か手はないものか…。嶋野は、誤計測が発生する根本原因の追究や光学シミュレーションから、プロジェクターの光の当て方を含む光学系の改善によって強い反射光の影響を大きく抑えられるということを突きとめた。下平は、金属間の多重反射を強力に除外する新アルゴリズムを完成させ、ついにこの二つが融合することで金属ワークに対する測定精度を大幅に向上さることに成功した。そこからが最終仕上げだ。様々な実ワークでケーススタディを行い、初期設定の状態でも一発でキレイに撮像できるよう、下平はチューニングにも力を注いだ。「もう死角はない」二人は確かな自信に満ちていた。

そして、XRを営業担当に紹介する日がやってきた。「これはすごい!」方々から歓声があがった。実現可能性すら疑われたこの難易度の高いプロジェクトを成し遂げた実感を、二人は力強く噛みしめる。新たな世界の扉が開かれた瞬間だった。

解を導き出す力。それは「キーエンス」というチーム力

市場は当たり前のように、それが技術的に難しいかどうかは関係なく、的確な課題を突きつけてくる。だからこそ答えを導き出すことは、ビジネスとしての大きな競争力を生み出すための必然だとも言える。その観点から見ると、どれほどの困難があろうとも、新規性が高いプロジェクトのやりがいは計り知れない。キーエンスの開発には、そのような難解な課題にも解を導き出す連携や、試行錯誤ができるフィールドが用意される。そうして、世の中のありようを変えるようなインパクトのある商品の開発が実現されていくのだ。「自分の担当範囲で見つかった課題だから、自分で何とかしなければいけない…ということはない。互いに知識や経験を持ちよって、時にはプロジェクトや事業部を超えて解決策を考える。それがキーエンスというチームだから」と下平は語る。「そして最後は気合だよ」と嶋野は笑った。こうして多くの頭脳と情熱が注がれたからこそ、このXRは市場のニーズを超越した商品へと成長したのだ。二人の前にはもう、次なる世界への道が拓かれはじめている。

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