コラム製造業における3Dプリンタ利用の実態
現在、もっとも3Dプリンタの活用がすすんでいると言われる製造業。では、具体的にどの程度すすんでいるのだろうか?
本稿では、さまざまな企業や団体によって公表されている調査結果を元に、その実態を探ってみる。
製造業における3Dプリンタへの投資は今後も増え続ける
2015年5月、主にフランスと米国を拠点にサービスビューローを展開するスカルプティオは、ユーザー1,000人に対して行われたアンケート「3Dプリンティングの現状」についての調査結果を発表した。
それによると、アンケート回答者の44%が今後も「3Dプリンタへの投資を50%以上増やす」とし、また68%が「なんらかの形で増やす」と回答した。なお、回答者の内訳は、コンシューマー向けグッズ製造26%、ハイテク産業15%、工業製品14%、電子機器8%などとなっている。
サービスビューローのユーザーを対象とした調査ということもあり回答者の属性には若干の偏りは感じられるが、今後も製造業全体として3Dプリンタへの投資は増加傾向が続くものと予想される。
ちなみに、投資を妨げる要因としては「素材の価格と3Dプリンタのキャパシティ(性能)」が50%と圧倒的で、続いて「3Dプリンタ使用にかかるトレーニング」「法的な問題」などが挙げられている。
米国製造業企業の2/3が実際に3Dプリンタを利用
続いて、2014年10月、米国の大手コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(PWC)が発表した3Dプリンタの調査レポートを見てみよう。
「The road ahead for 3-D printers」と銘打たれたこのレポートによると、米国における製造業企業の約2/3が3Dプリンタを利用しているとのことである。利用目的としてもっとも多く挙げられたものは「3Dプリンティング技術を何に活用できるかを評価するため」で28.9%。続いて「試作品の製造」が24,6%、「試作品と製造」が9.6%となっている。なお、最終的な製品まで製造しているケースは全体の0.9%にすぎなかった。
つまり、「利用している」とされた製造業企業の4割強は現時点においては評価段階で、本当の意味で「利用している」と言えるケースは、現時点では、ほぼ「試作品の製造」のみであり、最終製品を製造するまでには、まだ時間がかかるものと考えられる。
これらの調査結果から、製造業における3Dプリンタの利用については、効果が明確に現れている試作製造を中心に投資が増えていくものと考えられ、当面その傾向が続いていくものと予想される。
参考
世界の3Dプリンタニュース
「スカルプティオ、企業の3Dプリンタ利用状況を発表」
「PWC、アメリカの製造企業の三分の二が3Dプリンタを利用と公表」
PWC
「The road ahead for 3-D printers」