
奈良先端科学技術
大学院大学
物質創成科学研究科
物質創成科学専攻
光機能素子科学講座
教授 工学博士
太田 淳 氏
ビジョンチップや脳内埋込みセンサの研究開発において、世界をリードする太田研究室。ここでキーエンスの顕微鏡が活躍している。現在、導入されているのは、デジタルマイクロスコープ(VHXシリーズ)と蛍光顕微鏡(VBシリーズ)、そしてSEM(VEシリーズ)だ。VHXシリーズは主に製作したLSIの低倍率による観察に用いているほか、VBシリーズは動物実験での視神経や脳などの観察用、VEシリーズはLSIの細部をサブミクロンのオーダーで観察用として、それぞれ研究室ではなくてはならない存在である。
VHXのメリットについて、太田氏は「従来の光学顕微鏡では難しかった深い被写界深度を実現している」点を挙げている。これによって、球面などの観察が的確に行なえるようになったという。試作したLSIチップの全体像を素早く拡大観察する場合などに重宝しているのだそうだ。
また、SEMは「LSIに超微細加工したホール形状などの精度を確認する上で不可欠な観察機器」という。まずデジタルマイクロスコープのVHX-200でおおまかな観察をした後、精密な観察が必要な箇所をキーエンスのSEM、VEシリーズで行なうという。
「VEシリーズは、小型で設置場所を取らない上、使いやすい点がメリット。いつでも使いたい時に気軽に使える、いわば日常使いのSEMです。また、操作のほとんどが自動化されているので、準備の手間が要らず、観察に集中できるメリットもあります」
奈良先端大には、共通の実験室に大型のSEMが導入されているが、学内共用のために利用するにはあらかじめ予約が必要。小型で設置スペースをとらないVEシリーズは自研究室に設置することが可能であり、結果、SEMの使用頻度が高くなったという。
太田研究室では、10人以上の研究員がキーエンスの顕微鏡を利用している。その一人、助教の笹川清隆氏は、「3機種とも使用する人のことを考えた顕微鏡で使い勝手が良いです」と、使用の感想を述べている。特にVEシリーズについては「従来のSEMと比べて操作が格段に簡単」とのこと。
「以前はSEMの使用方法を学生に指導するのは大変でしたが、VEシリーズは初心者でもすぐに利用してもらうことができます。論文発表用の写真も多くはVEシリーズで撮っていて利用価値は高いです」
人工視覚システムを中心として、光機能素子を医療の分野で活用することを取り組んでいる太田氏。今後は動物実験を経て、臨床試験を行なうことに全力を尽くしている。
将来、めざしているのは「生体とインタラクションできるLSIをつくり出すこと」。生体内の状況をセンサで把握しながら、必要に応じて自立的に作動するLSIを開発することで、人の健康に役立つ技術を提供したいと考えている。
太田氏が研究を進める、LSI技術とフォトニクス(光工学)を融合したフォトニックLSIデバイスは、医療での幅広い応用が期待されており、従来では治療が困難だった病気や障害の克服に大きく役立つものと思われる。また、脳という未知の領域を拓くツールとしても重要な役割を果すことになるだろう。
(2009年4月現在)
画像センサと演算機能、通信機能を兼ね備えた大規模集積回路(LSI)。外界画像を読み取り、その信号を網膜細胞に伝達することを目的としている。現在、研究段階の電極数は数十点程度だが、実用化に向けては1000点程度が必要とされる。また、眼球に埋込むことから電極材料や包埋材料など材料開発も重要。世界中で臨床試験に向けた取り組みが進んでいる。
太田 淳 氏
奈良先端科学技術大学院大学
物質創成科学研究科 物質創成科学専攻 光機能素子科学講座 教授
工学博士
1958年、岐阜県生まれ。81年、東京大学工学部物理工学科を卒業。83、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程を修了後、大手電機メーカーに入社。92年、University of Coloradoの客員研究員。98、奈良先端科学技術大学院大学、物質創成科学研究科の助教授、2004年、教授に就任。専門は医用生体工学・生体材料学をはじめ、マイクロ・ナノデバイス、応用光学・量子光工学、電子デバイス・電子機器など。これまでに「科学技術庁注目発明賞」「丹羽高柳賞・論文賞」「LSI IPデザイン・アワードIP賞」など受賞多数。
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