電子機器が誤動作する

トラブル内容

近年の電子機器は省電力化や高速化の進歩が目覚しい。省電力化への対応策としてIC回路では低電圧化が進められている。その結果として信号レベルの変動に対する余裕度が小さくなる傾向がある。また大量のデータを短時間に処理を行えるよう周波数は上昇し、使用する周波数帯域が広くなっている。静電気の放電によって誤信号の検出やデータのビットエラーが発生し、機器の停止や意図しない動作が起きる。このトラブルは発生頻度が低く再現性も乏しいので原因追及と対策が困難である。

アルミ缶搬送工程でラインが停止

入門書ダウンロード

静電気の発生と帯電

製造している製品や工程によって、摩擦帯電、剥離帯電、誘導帯電などさまざまな要因で静電気が発生している。しかしトラブルが発生している工程と静電気が発生する工程が一致しているかを検証する必要がある。トラブルが静電気によって起きているのか確認するためである。ピンホール検査用の高電圧電源やプラスチック部品の溶着用の高周波ウェルダーなどの高電圧を発生する機器は静電気ではないがノイズの発生源となっていることがあるので区別が必要である。

入門書ダウンロード

ノイズ発生の静電気現象

静電気の持つエネルギーは非常に小さい。静電気試験で用いる人体モデル(HBM)の静電容量は100pFである。この100pFのコンデンサに電荷をためて10kVにしてもエネルギーは5mJしかない。静電気のエネルギーは極めて小さいが、放電は短時間でエネルギーを放出する現象なので大きい電流が流れる。100pF/10kVの電荷を1μsec で放電させると電流は1Aになる。静電気は物体を温めたりモーターを動かしたりするようなエネルギーはないが、短時間でそのエネルギーを放出するためIC回路などでは瞬間的に大電流が流れてICを破損することになる。
放電による電流を測定するために帯電したプラスチック板と導体との間に放電する実験を行った。プローブに47Ωの抵抗を図5-151のように取り付けて抵抗の両端の電圧をオシロスコープにて観測する。抵抗に流れた電流は、抵抗値と電圧値から求めた。プローブには減衰比が10:1、入力インピーダンスが10MΩ /12pFのものを使用した。

図 5-151 放電電力の測定回路とオシロスコープに取り付けた抵抗

実験の結果を図5-152に示す。1回のパチッという放電はピークで約0.4Aの電流であった。得られたデータから抵抗は約200nJのエネルギーを消費している。放電している時間は約100nsecである。非常に小さなエネルギーであるにもかかわらず、ピークの電流は大きな値を示していることがわかる。

図 5-152 放電電流の測定結果

静電気放電は短時間で電流が大きく変化する現象なので、放電によって発生する電磁波の周波数帯域が広い。放電にともない発生する電磁ノイズを電波暗室にて測定した。プラスチック板の表面をティッシュペーパーでこすり摩擦帯電を連続して起こし、静電気放電を発生させ続けた。図5-153に測定した結果を示す。非常に広い周波数範囲の電磁波を放射していることがわかる。放電現象は瞬間的な大電流と広い周波数帯域の電磁ノイズを発生する。この電磁ノイズは電子機器が誤動作をする要因の一つである。

図 5-153 放電にともなう電磁ノイズ

入門書ダウンロード

除電方法

製品や部品の製造工程によって帯電のしくみは異なる。それぞれの現場に適した除電器を採用する必要がある。放電を発生させないようにするためには、パッシェンの法則より300V以下にすることが求められる。実際には余裕を持たせて100V以下にすることが望ましい。除電器を選定し設置するときは、除電対象の電位が±100V以内になるようにする。

入門書ダウンロード

対策例

半導体工場内でのAGVによる搬送を例にあげる。AGVとは無人搬送台車のことで工場内の決められた経路をプログラムされて自動的に無人で搬送する装置である。図5-154に半導体工場内でのAGV搬送のイメーを示す。FOUP(フープ)と呼ばれるウェハ搬送用の容器をAGVで搬送している。装置 (図中のEQ)にはLOADPORT(ロードポート)と呼ばれるフープの受け渡し部がある。AGVはこのロードポートのところへ近づきフープを受け渡しをする。帯電したAGVがロードポートに近づいたときにAGVとロードポートとの間で放電が発生してAGVが停止したり、装置が誤動作をしたりする。

図 5-154 半導体工場内でのAGV 搬送のイメージ

バッテリー駆動タイプのAGVは、車輪と床面との間で摩擦帯電や剥離帯電をする。床面と車輪ともに導電性にすれば帯電しないが、コスト、耐久性、発塵の問題から導電性にすることが困難である。また安全上の問題から放電用のチェーンを引きずって走行することもできない。図5-155に放電用のチェーンを装着したAGVのイメージを示す。

図 5-155 放電用チェーンを装着したAGV のイメージ

AGVが動く経路は決まっている。その動線にあわせてバータイプ除電器を設置する。ロードポートに接触する前に100V以下になるように周波数やエア供給量を決定する。図5-156のように天井に除電器を取り付ける場合はメンテナンスが困難な場所に設置するので、電極の汚れに対する保護構造を搭載した除電器を選定するのがよい。

図 5-156 バータイプ除電器を使用したAGV の除電イメージ

入門書ダウンロード

静電気についてもっと知りたい方!

静電気対策を本格的にスタートさせるお客様必読です!

ダウンロードはこちら

お問い合わせ お困りごと相談はこちらから
ご相談・お問い合わせ

静電気ハンドブック

トップへ戻る