錠剤の包装で中身が飛び出す

トラブル内容

薬のカプセル剤や錠剤の包装にブリスター包装がよく利用される。ブリスター包装とはプラスチック(PET やPVC)の透明フィルムに、熱成形でポケットと呼ばれるドーム型の形状を形成した容器を用いた包装形態である。「ブリスター」には気泡や水ぶくれなどの意味があり、ドーム型の形状をしたポケットに被包装物を入れる。
ブリスター包装のフタとして、フィルムをシールして内容物を取り出すときには指で押出すPTP(Press Through Package)というものや、台紙が接着されているもの、または台紙をスライドさせて取り出すものなどさまざまである。医薬品の錠剤の包装に使われているのは、ほとんどがPTP包装である。図5-45にPTP 包装の例とブリスター包装機の概要を示す。

図 5-45 PTP 包装の例( 上図) とブリスター包装機の概要( 下図)

  • ボトムフィルム供給工程
  • ロール搬送によって巻き出されてホットプレス工程へ搬送される。
  • ポケット成形工程
  • ボトムフィルムにポケットをホットプレスによって成形する。
  • ボトムフィルム搬送工程
  • ポケット成形のあと被包装物充填工程へロール搬送される。
  • 被包装物供給、搬送工程
  • カプセルや錠剤が、ホッパー(漏斗状の供給装置)から供給される。
  • トップフィルム供給工程
  • トップフィルムがロール搬送によって供給される。
  • 被包装物充填工程
  • 被包装物をポケットに充填する。
  • ヒートシール工程
  • トップフィルムを熱溶着する。
  • カッティング工程
  • 製品の大きさに切り取る。

ブリスター包装での特徴的なトラブルは、充填工程において図5-46に示したように被包装物がポケットから飛び出したり、別のポケットに入ったりする。このままヒートシール工程に進むと過剰包装やシール噛み込みが発生する。

図 5-46 ブリスター包装でのトラブルの例

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静電気の発生と帯電

ボトムフィルムのポケット成形では、図5-47で示すようにフィルムが帯電する。圧力を加えフィルムを金型に密着させることで、金型の形状をフィルムに転写する。強い圧力を加えるほど帯電量は増加する。

図 5-47 ボトムフィルムの帯電

カプセルはパーツフィーダで搬送され、充填工程に送られる。パーツフィーダの激しい振動により、図5-48、図5-49のように摩擦や剥離を繰り返し帯電する。

図 5-48 カプセルの剥離帯電

図 5-49 カプセルの摩擦帯電

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フィルムとカプセルの静電気現象

カプセルとフィルムが帯電しているとクーロン力が働く(図5-50)、お互いが同一極性であれば反発力となり、その力がカプセルの重力を上回るとカプセルは飛び出す。ここではフィルムを無限に広がる平板、カプセルを球体としてクーロン力がどのくらいであるか求めてみる。

図 5-50 カプセルに作用するクーロン力

無限に広がる平面が電荷密度σ [C/m2]で帯電しているとする。そのときの電界強度E[V/m]は、式(5-8)で表される。

(5-8)

電界強度Eは平面からの距離dに無関係に一定である。球体が電荷Q[C]を持っているとき、球体に働くクーロン力fは式(5-9)で表される。

(5-9)

式(5-8)、(5-9)から、球体に働くクーロン力f は式(5-10)で表される。

(5-10)

平面と球体に働くクーロン力は、球体の大きさrも球体と平面の距離dに依存せず、球体の持つ電荷Qと帯電した平面の電荷密度σで決まる。

(例)

カプセルの大きさを直径5mmの球体とし、その比重を0.5とする。電荷密度σ =10-5C/m2でフィルムが帯電し、カプセルは電荷Q=10-9Cで帯電していたとする。

▼反発力の計算
カプセルが受けるクーロン力は式(5-10)から、およそ5.65×10-4Nとなる。カプセルとフィルムが同一極性に帯電しているとすると、この力は反発力である。
▼重力の計算
カプセルの質量は、およそ3.3×10-5kgなのでカプセルに働く重力による力は3.2×10-4Nである。重力よりも反発力のほうが大きいため、この例の場合ではカプセルはポケットから飛び出すことになる。

薬剤の包装ではフタであるトップフィルムはアルミ製フィルムが一般的である。金属は導体とは言え帯電するのでフィルムと接するローラーなどをアースに接続し静電気を逃がすことが重要である。
トップフィルムが金属フィルムではない場合、トップフィルムは帯電してシール工程でトラブルが発生することがある。この様子を図5-51に示す。トップフィルムがプラスチック製であると、ローラーとの摩擦や剥離で帯電する。帯電したトップフィルムがカプセルに近づくとカプセルは分極する。カプセルに表れた分極電荷はトップフィルムとは逆極性なので、カプセルとトップフィルムの間には引き合う力が発生する。カプセルおよびボトムフィルムが帯電していなくても、トップフィルムが帯電していると分極によりクーロン力が働き、カプセルがポケットから飛び出すことがある。

図 5-51 シール工程でのトラブル

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除電方法

充填工程で除電器を使用すると、製品とフィルムの両方が同時に除電できる。イオン搬送方式は、除電器を近くに設置できるのであれば電界搬送、気流搬送のどちらでも良い。充填工程では、ハンドリングのための装置が入り組んでいる場合が多いので、除電器を近くに配置できるスペースがない。この場合は、遠くからイオン搬送できる気流搬送タイプの除電器を用いる。

図 5-52 充填工程での除電例

カプセルがポケットから飛び出す要因は、カプセルとボトムフィルムが同一極性に帯電しているためである。どちらかが帯電していなければ、飛び出すようなクーロン力は働かない。充填工程に除電器を設置できない場合は、充填工程前にボトムフィルムを除電するだけでも効果がある。
その逆に、カプセルを充填前に除電することも効果がある。充填工程の前で除電を行う場合は、除電を行ってから帯電するような工程がないことを確認する必要がある。また、イオンバランスのよい除電器を使用して、確実にボトムフィルムまたはカプセルの帯電を取り除かなければならない。ボトムフィルムの除電方法は「ロール搬送でシートを巻き込む」の項を、カプセルの除電方法は「部品が貼り付いて動きが悪い」の項を参照していただきたい。
トップフィルムがプラスチックの場合は、トップフィルムを除電する必要がある。トップフィルムとカプセルの入ったボトムフィルムが近づく場所で除電を行うのが最も効果が高い。トップフィルムを除電するとともに、分極したカプセルにイオンをあてて分極電荷を中和する効果が期待できる。除電器はボトムフィルムとトップフィルムの隙間にイオンを送り込む必要があるため、イオン搬送は電界搬送ではなく気流搬送で行う。除電方法は「ロール搬送でシートを巻き込む」の項を参照のこと。

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対策例

除電器はACタイプで気流搬送を用いる。除電を行う場所からの距離を離すことができればDCタイプでもよい。電界搬送を行うDCタイプ除電器を使用すると逆効果になる場合があるので注意する。

図 5-53 充填工程のイメージ

図 5-54 ヒートシール前に除電

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