メンテナンス

除電能力の経時的変化

除電器の除電能力(除電速度とイオンバランス)は、使用している時間が経過するにつれて徐々に劣化します。除電能力が劣化する要因は、コロナ放電式が使用する電極針に起因します。
一つ目は「電極針の磨耗」、二つ目は「電極針の汚れ」です。いずれも、イオン生成量の減少(除電速度の低下)および、イオンバランスの崩れが生じますので保守/メンテナンスが必要です(下図)。

除電能力の経時的変化

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電極針摩耗のメンテナンス

電極針の磨耗のメカニズム

コロナ放電時には、電極針先端にて電流の担い手の電子を放出・吸収します。
プラスの電圧印加時は、電極針先端にて電子を吸収します。
マイナスの電圧印加時は、電極針先端から電子を放出します。
これら、放出・吸収時の物理的エネルギーにより、電極針先端が徐々に磨耗します。

電極針の磨耗のメカニズム

上図のように、プラスの電圧を印加した電極針とマイナスの電圧を印加した電極針では磨耗量が異なります。この理由としては、電極針にて電子を放出吸収する時の電極針に与える衝撃の違いと考えられています。
プラス電圧印加時は電極針が電子を吸収します。この時電子が電極針に衝撃エネルギーを与えます。
逆に、マイナス電圧印加時は電極針から電子を放出します。電極針に衝突エネルギーはほぼ発生しません。

電極針の磨耗のメカニズム

電極針が磨耗した場合、プラスとマイナスで磨耗量が異なります。
そのため、電極針への印加電圧極性が異なっている場合、電極針毎で磨耗量が違います。マイナスイオンの発生量が相対的に多くなり、イオンバランスはマイナス側にずれていきます。
このことから、一般的に電極針への印加電圧極性は同一であるタイプが良いとされています。

電極針磨耗への対処

一定期間使用し、磨耗した電極針は交換する必要があります。
交換時期の目安は、電極針の材質で異なります。下図交換する方法は一般的に3タイプあります。

材質 寿命 特長
タングステン 約2年 最も一般的に使用されている材質で長寿命
シリコン 約2年 金属汚染を嫌う環境で使用されている材質
SUS 約1年 安価ではあるが他の材質と比べると短寿命

電極針磨耗への対処

交換不可のタイプは、除電器そのものの交換となります。その分ランニングコストが加算されます。
工具による交換のタイプは針キャップ交換タイプに比べ一般的に部品代がローコストですが、交換作業の煩雑さや、ペンチによる電極針先破損、作業時のポト落ちなどのリスクがあります。

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電極針汚れのメンテナンス

電極針の汚れのメカニズム

電極針には、コロナ放電を行うため高電圧(±3kV以上)の電圧が印加されています。電極針先端には強い電界が発生します。この電界の影響により、

1. 空中に浮遊するパーティクルが電極方向に吸引され付着し堆積
2. 大気中に含まれる有機物([(CH3)2SiO2]x)など


が、電極針先端に析出という二つの現象が発生し電極先端に汚れが発生します。
※付着物は周囲環境によって異なります。

『詳細メカニズム』

『詳細メカニズム』

『詳細メカニズム』

除電器は、電極針に+、-の高電圧を印加しイオンを発生させています。このとき、電極針の周辺では、図のように、電極針周辺に存在する微少なパーティクルが、発生しているイオンによって帯電し、電極針とパーティクル間にクーロン力が働きパーティクルが電極針に付着します。
また、右下図は、電極針へのSiO2付着の様子で、下図は、SiO2付着のメカニズムです。

『詳細メカニズム』

組成分析結果

試料 Si O S
白色析出物 38.0 61.0 0.9

※代表例データ
参考データ(付着物の組成分析結果)

電極針の汚れによる影響

除電器は電極針周辺にある空気を電気的に分解する事でイオンを生成しています。電極針先端部分にパーティクルが付着すると、物理的に空気に触れる面積が減少するため、イオンの生成量が減少します。
生成するイオン量が減少するということは、除電速度が遅くなるという事です。

電極針の汚れによる影響

また、電極針の極性により付着物量が異なります。

電極針の汚れによる影響

プラス電圧を印加した側に比べマイナス電圧を印加した側の方が、付着物が大きく成長しています。印加する電圧の極性により、電極針に対する電子の放出/吸収の違いによります。

電極針の汚れによる影響

付着物量が異なるということは、生成するイオン量が異なるという事です。
結果、プラス側の除電速度とマイナス側の除電速度に差が発生します。
※付着物の様子は周囲環境により異なります。

電極針汚れへの対処

電極針汚れへの対処

電極針のメンテナンス方法
前述のように、電極針が汚れることによってイオンの発生量が単純に減少し、除電速度が遅くなるだけでなく、+、-イオンの減少量が異なることによってイオンバランスが悪化し、悪くすれば「帯電器」になる恐れがあります。
そのため、除電器の能力を最大限に引き出し活用していくには、電極針のメンテナンスが必要不可欠です。
電極針のメンテナンスは、図のように、アルコールを浸した綿棒で行うのが一般的で、メンテナンス周期は、通常のオフィス環境下で使用した場合、2週間毎に行うのが一般的です。
(メンテナンス周期は、使用環境によって大きく異なるため、あくまで一般的な目安だと考えてください。)

電極針汚れの低減技術

現在市場では、電極針の異物の付着を低減する方法が3つあります。それぞれの特長を説明します。

【方法1】自動ブラシ清掃

【方法1】自動ブラシ清掃

除電器内に装着したブラシをタイマー動作で動かします。
電極針への付着物を自動で払い取ります。
○ 簡便
× 清掃完了確認ができない
× 清掃度合いが低い
× 異物を周囲に散らしている

【方法2】パージエアによる付着低減

【方法2】パージエアによる付着低減

電極針周囲からエアを噴出させます。
噴出エアにより電極針へのパーティクルなどの接近を少なくします。
○ 低減効果が高い
× エア設備が必要
× 方法3に比べ、エアが乱流であるため低減効果が低い

【方法3】シースエアによる電極針の防護(キーエンス特許)

【方法3】シースエアによる電極針の防護(キーエンス特許)

電極針をシースエアで覆います。シースエアによる防護で電極針へのパーティクルガスの接近を少なくします。
◎ 低減効果が非常に高い
× エア設備が必要

これらの技術を用いた製品の場合、異物の付着が低減され、メンテナンス期間が延びます。
但し、いずれは異物が付着する可能性があります。
異物が付着したまま除電器を運用していると、十分な除電効果が得られていない可能性があります。
クリーニング自己チェック機能も付いた除電器であればメンテナンス時期を逃さず安心です。

コラム

電極針汚れの清掃期間

電極針汚れの清掃期間

前述のように、除電器の電極針にはパーティクルなどの付着が発生します。
付着する物質は様々です。
空気中に含まれる微小なパーティクルの場合や、有機ガス分子が酸化などの化学反応の結果として付着する場合などがあります。
クリーンルームの場合、空気中のパーティクルはクリーン度に応じて少なくなり、高いクリーン度の場所では、ほぼパーティクル付着がなくなります。有機ガス成分は、クリーンルーム中では濃度が高くなるのが現状です。化学プロセス装置周辺では、通常環境に比べて付着が多い場合などあります。
結果として、付着量は環境の大気成分により異なります。
そのため、電極針の汚れを清掃する期間は使用場所により異なります。
清掃期間を決める方法は2つあります。

  1. 当初は定期的に付着の影響を除電可否にて判断。除電不可になるまでの期間に繰り返し性が見られれば、その期間を清掃期間とする。
  2. 清掃時期を知らせる自己チェック機能のある除電器を使用。

装置の定期点検をこまめに行っている場合は、点検作業項目に組み込むケースもあります。

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