導体に対する対策

2つの物体が接触するとき、そこには必ず電荷の分離が起こり、静電気が発生することは今まで説明しました。
静電気障害を防止するためには、この静電気の発生を防止することが最良なのですが、実際は不可能です。現実的には、電荷の発生を少しでも抑制することや電荷を速やかに逃す方法として、帯電体の逆符号の電荷を作り出して帯電物の電荷を中和するイオナイザーなどの除電器による除電方法と加湿、接地などの静電気対策処置を組み合わせて、適切な処置を施すことになります。
静電気対策は物質の電気的特性や対策に効果的な環境をよく理解しなければいけません。例えば、電気産業の中には、ICやLSIなど静電気に非常に敏感なものから、製品の包装に使用する材料のダスト吸着のような大きな静電気エネルギーを対象にするものまで様々です。
この場合、包装材に対してICなどに要求されるクリティカルなレベルの静電気対策は必要ありませんが、このICなどが包装材料に接近する可能性があれば、包装材料もICの静電気防止レベルでの静電気対策が必要となります。
ここでは、帯電物が導体である場合の静電気対策を取り上げます。

接地(アース)/リストストラップ

接地(アース)/リストストラップ

物体が金属などの導体である場合は、一般的な静電気対策方法に「接地(アース)」があります。地球が大きな導体で、しかも大地の表面がゼロ電位であることを利用して、たまった電気を文字どおり地球(アース)に逃がします。つまり、接地とは“無限の電荷の吸収源”なのです。また、電気を地面(=地球)に逃すことから、グランドとも呼ばれています。

帯電した導体に接地をすることにより、電荷は瞬間的に大地に流れ失われます。
図は、電荷の漏洩速度と電荷漏洩時間の関係を示しています。接地抵抗をR[Ω]、導体物体の静電容量をC[F]とすると、電荷の減衰の時定数はτ=RCとなります。
Cの値はその形状、大きさ、配置によって違うが、C=1×10-9F(1000pF、人間の約5倍)とすると、R=1[MΩ](M=106)でτ=1/1000sになります。

接地の電気抵抗値は1[MΩ]以下であればよいとされており、その他特別な工夫も必要なく、静電気対策方法としては容易で効果的な点で、一般的に多くの環境で使用されています。
逆に考えると、万が一機械類の接地を忘れられる危険性があり、また、気づかないうちに接地部分が腐食することにより接地が機能しなくなることがあるので、注意する必要があります。

接地が効果的なのは導体の場合だけであって、ガラスやプラスチックなどの絶縁体には効果はありません。絶縁体の場合、帯電した電荷は移動せずそのまま残ることになり、除電されることはありません。

接地(アース)/リストストラップ

しかし、接地をした導体に絶縁体が接していると、絶縁体の静電気が消えたように見えることがあります。実際、この状態で電位を測ると電位が低くなっています。これが、接地により絶縁体でも除電ができると誤解される原因なのです。(図)

その理由は、導体の場合は接地により自由に電荷の移動ができる状態にあり、そこに帯電した絶縁体が接すると導体の表面には帯電した絶縁体の電荷と反対極性の電荷が引き寄せられます。
つまり、接地した導体と接している面では、プラスとマイナスが中和した状態になることで、見かけ上は除電できたように見えるのです。しかし、当然ながら、絶縁体の電荷は移動していません。導体から引き離すと、消えたように見えた静電気はそのまま残っていることがわかります。

このように、絶縁体の場合は接地をしても、電荷は普通漏洩しません。ただし、絶縁体が多少の導電性を持っていれば、接地によって電荷が少しずつ失われることもあります。


リストストラップ構成図

極めて帯電しやすい人体の電荷を逃すには、人体は導体に近いので、接地が有効的になります。
人体の接地には、「リストストラップ」があります。
リストストラップとは、人体より発生する静電気が、作業中に悪影響を与えないようにするために、作業者の皮膚を接地することで、人体の電位を逃すことです。静電気防止を考える上で、作業中はこのリストストラップは必ず着用するべきです。

右上図はリストストラップの構造図で、手首に取り付けるカフ部とその接続部、リード線、接地接続部などでできています。
また、下図は、タイプ別リストストラップです。

タイプ別ストラップ

リストストラップは、構造、使用目的によって様々な種類があります。また、リストストラップを効果的に使用するためにはしっかり手首にフィットし、完全に皮膚と接触するように使用し、作業者に不快感を与えない装着が求められます。
また、リストストラップを選択する上で考慮すべき点として、使用時の安全性を保持するために、人体安全性、作業性、品質管理などを考慮する必要があります。

以下は、リストストラップ選択時の内容として必要な確認事項です。

1)溶剤への耐久性
作業領域内で使用する可能性のある溶剤すべてによって、リストストラップの構成材料が劣化しないことや特性が変化しないことを確認します。これは、リストストラップは手首に装着するので、あやまって溶剤がカフ部やリード部分にかかる可能性があるためです。

2)汗に対する耐久性
人体から発生する汗が原因で、リストストラップの金属製部分にさびや腐食に対する耐久性を確認します。また、繊維製やプラスティック製のカフの場合には、吸着現象により汗による塩やゴミがたまり、コンタミや抵抗増加の可能性もあるので、さびや腐食、コンタミ発生の試験などが必要です

3)着脱の加減
リストストラップの着脱加減を確認します。リストストラップは着脱が簡単で、作業中にあまり簡単にはずれることことのない程度の接合力が必要です。簡単にはずれてしまうと、効果の低下につながるので、各コネクタ部分(カフとリード、リードとアース端子)は、ある程度の接合力が必要です。しかし、一方過大な電流が流れたり他の機械的な危険があった場合に、瞬時に人体よりリストストラップを取り外すことも考えなくてはなりません。

4)リードの強度
リードの強度は、着脱試験で定めた基準値を上回っているか確認します。

5)ライフ
ライフ試験装置により、リストストラップの交換サイクルを確認します。ただし、このライフは、リストストラップの構造や破壊モードにより変化するので、定期的な接続不良、コードの劣化検査、カフ部分と皮膚との接触の安定性などの確認が必要です。

6)電流限界抵抗
電流限界抵抗は、基本的には高電圧電源からの電流値をあるレベル以下に設定され、一般的には1MΩ~800kΩ程度となっています。(領域によってはこれより小さい抵抗値のものを使用する場合もある)この抵抗値の確認には、ステンレスシリンダにリストストラップを取り付け、そのシリンダとアース間の抵抗を測定する方法があります。

7)使い心地
作業者に不快感を与えない装着感(違和感)を確認します。リストストラップは、直接人体へ装着することから、作業者には違和感があるものです。最近では、デザインの改良も進み不快感は軽減されつつありますが、着脱作業が面倒や手首への重量感など問題点は様々です。中でも、洗浄ができないことへの不潔感やカフ部分の金属製のボタンにより使用後に手に跡が残るなどの不快に関しては、リストストラップの選択で解決できることもあります。作業効率が悪化しないよう可能な方法で改良を行うことが必要です。

以上のように、リストストラップの主要目的は、人体の静電気を逃すことですが、リストストラップを着用することで、作業性を落としたり、汚染を発生させたりすることがなく、しかも、長時間着用しても作業者に負担がかからないよう設計されたものを選択することが重要です。

入門書ダウンロード

静電気防止床材

静電気管理を行う上で、管理領域の床帯電は、移動する人間や機器類に静電気を発生させる大きな要因となります。床の静電気防止管理を大きく2つに分けると、まず、“作業者との接触においての帯電を抑制する”帯電防止の考え方と、“発生した電荷を穏やかに拡散する”接地の考え方があります。
ここでは、主な床材料であるカーペットやフロアマット、タイルなどの帯電防止について検証します。
下表は、静電気防止床材料とその構造的な特徴や利点などを比較した表です。

静電気防止床材料比較表

製品名 利点 問題点 電気特性
カーペット 美観・快適さ 電子産業製造用途では使用しない。 低いものもあるが通常は、1010Ω程度
フロアマット
1導電型
2静電気防止型
取付け容易
良好な静電気防止特性
既存の床に使用可能
局部的保護
カールしやすい
温度依存性あり
コンタミの発生あり
107Ω以下
109~1012Ω
静電気防止塗布床
1導電型
2塗布床型静電気防止剤
3床用静電気防止剤
既存の床に使用可能
良好な静電気防止特性
処理が簡単・コスト安
処理が簡単・コスト安
コンタミ耐久性
ライフ、特性
バラツキ、温度依存、
保守/再処理
107以下
109~1012Ω
109~1012Ω
静電気防止張床 静電気防止特性が良い
耐久性・永続性が良い
一部クリーンルームに使用できるものがある
コスト
既存設備への取付
105Ω程度

カーペット

カーペットは、美観や快適さの利点からコンピュータルームなどで使用されますが、IC製造などクリティカルな現場での静電気管理上の防止効果はありません。

フロアマット

局部的な静電気防止管理に向いています。主に静電気防止床材料を施していない作業台周辺や検査室内の局部保護的に使用します。材料としては、導電性カーボンを配合したゴム、ビニール、ポリオレフィンの材料とニトリル系のポリマーの2層構造になったものが主流です。
特徴としては、比較的施工が容易な反面、マットの汚れや材料の劣化、マットがめくれ上がりやすいなどの問題点もあります。

静電気防止塗布床

静電気防止塗布床には、導電性塗料と塗布型静電気防止剤と床用塗布型静電気防止剤の3種類があります。
導電性塗料は、導電性カーボン繊維や金属繊維などを混入した導電性床材料で、非常に使用しやすく静電気防止特性も良いので広い工場全体の静電気防止が可能です。ただし、ダスト発生や耐久性の問題点などからクリーンルームでの使用には不向きです。塗布型静電気防止剤に関しては、本来床に使用するものではなく、耐久性や再処理期間(ライフ)に問題があります。コストが安いのが利点です。
床用塗布型静電気防止剤は、床表面のワックスなどを除去した後に床表面を洗浄し、静電気防止剤塗布という3液で処理するものが主流です。一度目については、処理コストが比較的安く特性も良いという利点もあるが、特性の維持が湿度や外部要因による依存性のあるものがあったり、業者委託による再処理にかかるコストが予想より高くつく可能性があります。

静電気防止張床材

静電気防止張床材には、タイルやシートなど導電性ビニール素材のタイルやシートタイプと、メタルファイバ繊維などを混入したカーペットタイプがあります。
タイルやシートタイプは、導電性材料がタイル全体に分布していることから電気防止特性はかなり良く、耐久性も良いので、静電気管理には最適です。
ただし、コストが非常に高くなります。

入門書ダウンロード

静電気防止靴

靴の静電気防止対策としては、一般的な靴にヒールストラップやアンクルストラップなどを取り付けて接地する方法や静電気帯電防止用安全靴など導電性特性を付加したものがあります。その場合の導電性は、構造と材質に依存します。
床と同様に靴についても、静電気管理領域でチェックすべき重要なポイントです。

入門書ダウンロード

静電気帯電防止衣服

人体と衣服は、静電気的に分離あるいは絶縁されています。ですから、人体に接地が施されていても衣服の帯電を拡散することはできません。
衣服の静電気防止については、様々な管理衣料品がありますが、その特性は衣服の中に着るインナーや作業者の汗など衣服の中の湿度や温度に大いに依存します。
静電気管理領域での、静電気防止されていない衣服を着用する場合は、その発生静電気電圧の測定や、一般的な静電気防止された服の着用の場合は、摩擦電気の発生量や減退特性、表面抵抗率などを測定し、その特性による対策が必要になります。

入門書ダウンロード

静電気についてもっと知りたい方!

静電気対策を本格的にスタートさせるお客様必読です!

ダウンロードはこちら

お問い合わせ お困りごと相談はこちらから
ご相談・お問い合わせ

静電気ハンドブック

トップへ戻る