樹脂(プラスチック)材料や樹脂成形の工程はデリケートで、成形条件や材料と添加材の状態などによっては、品質を損ねる成形不良が生じる場合があります。成形不良の種類と発生原因は多岐に渡ります。
ここでは、代表的な成形不良の種類と原因を解説。そして、正確で素早い観察・測定・評価を実現し、素早い原因特定と対策に繋げることができる、最新の4Kデジタルマイクロスコープの活用事例を紹介します。

樹脂成形不良や成形材料の観察・解析・検査

樹脂(プラスチック)成形品のニーズと成形不良

軽量化のニーズを背景に、高機能化・高耐久化した樹脂(プラスチック)を用いた成形品が、さまざまな分野で採用されるようになりました。たとえば、自動車業界などにおいては、これまで金属材料で構成されていた部品の一部を高付加価値な樹脂成形品に置き換えることで、軽量化による省エネルギー化を実現するケースも見られます。
一方で、樹脂成形では、材料や添加材の配合・分散状態、溶融樹脂の温度、圧力、冷却時間といったさまざまな条件が、品質を大きく左右します。特に代表的な成形方法である射出成形においては、金型や溶融樹脂の圧力、また、装置停止や金型のダメージの原因となる離型不良などにも注意と対策が必要です。

代表的な成形不良

樹脂(プラスチック)成形品の品質を損ねる、代表的な成形不良・欠陥(形状不良・表面不良)とその原因の例を以下に示します。

バリ
バリ

現象:雄型・雌型のパーティングライン(分割線)から溶融樹脂がはみ出た状態で固化した形状不良。
原因:射出出力が高い、型締め力の不足、射出した樹脂の量が多い、金型の歪みなど。

ヒケ
ヒケ

現象:成形品の表面にくぼみが生じる形状不良。シンクマークとも呼ばれます。
原因:溶融樹脂が金型内で固化するときに収縮することで、樹脂の量が不足しくぼみとなります。このヒケが内部に生じたものは「ボイド(気泡)」や「内ヒケ」と呼ばれます。

そり
そり

現象:成形品が一方向に歪む形状不良。
原因:離型時に加わった外力による変形(離型不良)、または、金型内で溶融樹脂の流動方向により収縮率が異なることで生じます。

ウェルドライン
ウェルドライン

現象:金型内で溶融樹脂が合流する部分(ウェルド)が、溝または模様として表面に現れる表面不良。
原因:射出成形において、溶融樹脂の温度または、流動性が低い。射出圧力・速度が不十分なことで生じます。

フローマーク
フローマーク

現象:ゲートを中心に年輪のような波模様が発生する表面不良。
原因:射出成形において、射出する溶融樹脂の温度が低い、または射出速度が遅いことにより、金型内で樹脂の流動性が低下。後から射出された樹脂と重なることで生じます。

クラック・クレージング
クラック・クレージング
  • A.クラック
  • B.クレージング

現象:欠け(クラック)や細かいひび(クレージング)が発生する表面不良。
原因:外部応力または、内部応力によって、成形品に欠けやひびが発生します。

樹脂(プラスチック)成形品・材料・添加材の観察・検査の最新事例

先に挙げたような成形不良や、その材料である樹脂(プラスチック)材料への気泡混入、フィラーなど添加材の分散状態は、品質に大きく関わるため、光学式顕微鏡を用いた観察・評価が頻繁に行われます。
しかし、従来の光学式顕微鏡では、色のコントラストが低い・立体的・複雑形状・表面の光沢や透明性などの条件を持つ成形品において、観察による正確な外観検査が困難でした。また、不良箇所の測定や、材料の粒子・添加材の分散状態の計測による定量評価には対応できませんでした。

キーエンスの高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、長年現場の声を集めながら、従来の光学式顕微鏡の課題を解決しました。加えて、近年高度化する樹脂成形品や材料・添加材の研究開発や製造の現場における新たなニーズに対応することができる1台です。
「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと4K CMOS、独自設計のシステムにより、高精細4K画像での正確な観察、高精度な2D・3D測定・自動面積計測による定量評価、そしてレポートの自動作成までをマイクロスコープ1台で素早く簡単に実現します。
ここでは、樹脂成形品・材料・添加材の評価における「VHXシリーズ」の活用事例を紹介します。

ウェルドラインの観察

多色成形などの手法を除き、一般的な樹脂成形品は単色であるためコントラストが低く、表面の欠陥・不良の観察が困難でした。特に射出金型内の溶融樹脂が合流する部分(ウェルド)での融合不良が原因で生じる溝や模様「ウェルドライン」の観察では、照明条件出しが困難でした。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「マルチライティング」機能により、ボタンを押すだけで全方向からの照明による複数の画像を素早く取得します。その中から観察に適した画像を選ぶだけで観察が可能です。
これまで照明条件出しに費やしていた時間を省き、正確かつスピーディな観察を実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのウェルドライン観察
通常(×100)
通常(×100)
マルチライティング(×100)
マルチライティング(×100)

成形品のバリの3D測定

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高精細画像による観察だけでなく、サブミクロンオーダーでの高精度な3D形状や不良箇所のプロファイルの測定が可能です。

金型の歪みや型締め圧力の不足などにより、パーティングライン(分割線)のわずかな隙間から溶融樹脂がはみ出すことで生じる微細なバリであっても定量的な測定・検査が可能です。また、不良箇所の詳細な3次元情報を得ることで、スピーディな原因究明と対策実施に繋げることができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのバリの3D測定・プロファイル測定
バリの3次元寸法測定・3D形状表示(×100)
バリの3次元寸法測定・3D形状表示(×100)
バリのプロファイル測定(×100)
バリのプロファイル測定(×100)
微小なパーティングライン(バリ)のプロファイル測定(×500)
微小なパーティングライン(バリ)のプロファイル測定(×500)

樹脂中のフィラー分散状態の観察と自動計測

樹脂(プラスチック)材料の高機能化や高付加価値化を目的に配合されるフィラーなど各種添加材は、樹脂材料に対していかに均一に分散させるかが課題となります。そのため、フィラー分散状態の観察や計測による正確な評価が重要となります。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高倍率においてもフィラーの分散状態を高精細4K画像で観察することができます。また、観察画像からそのまま高精度な自動面積計測・カウントが可能なため、観察だけでなく計測による定量評価がシームレスに実現します。
さらに、Excelのインストールとテンプレートの使用により、撮影画像や計測値を用いた自動レポート作成が可能です。マイクロスコープ1台でフィラー分散状態の評価における一連の作業が完結するため、作業効率を大幅に向上させることができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのフィラー分散状態の観察・計測
フィラー分散状態の観察(×1000)
フィラー分散状態の観察(×1000)
フィラー分散状態の自動面積計測(×1000)
フィラー分散状態の自動面積計測(×1000)

樹脂(プラスチック)材料の粒子観察

従来の顕微鏡を使った樹脂(プラスチック)材料の粒子観察では、表面の凹凸により、一部にしかピントが合いませんでした。加えて、材料の光沢によるリング状の反射光により気泡の観察が困難でした。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「ライブ深度合成」により凹凸のある表面の全体にピントが合った画像を取得することができます。また、「リング除去」機能により、リング状の反射光を除去することができるため、樹脂材料の粒子や気泡を鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での樹脂の粒子観察
通常(×200)
通常(×200)
深度合成+リング除去(×200)
深度合成+リング除去(×200)

樹脂成形品の破断面観察

樹脂(プラスチック)成形品の破壊・破損は、破断面の形態(脆性・延性・せん断・疲労・クリープなど)を素早く正確に解析することで、原因を特定し、対策・改善にスピーディに取り組むことができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと電動レボルバにより、20~6000倍まで直感的な操作で自動的にレンズを切り換える「シームレスズーム」を実現しました。レンズ交換の手間と時間を省き、高精細4K画像をスピーディに得られることで、正確かつ高効率な破断面観察・解析を実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での成形品の破断面観察
成形品の破断面(×20)
成形品の破断面(×20)
成形品の破断面(×50)
成形品の破断面(×50)

複合成形品の傾斜観察・外観検査

車載電装部品のコネクタなど、立体的かつ複雑な形状を持つ複合成形品の外観検査は、多様なアングルからの観察が必要となります。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」を活用することで、自由な角度からの傾斜観察を実現します。手動によるワーク位置の調整の手間と時間を省き、スムーズな傾斜観察を可能とします。

「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」
「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」

「VHXシリーズ」の高分解能HRレンズと4K CMOSが実現した高解像度・高精細4K画像により、ワーク全体を捉えた低倍率観察においても、ヒケやフローマークなど成形品の微細な欠陥・不良を鮮明に捉えることができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での成形品の外観検査
複合成形品の低倍率・傾斜観察(×5)

現場の声から実現した、簡単・多機能・高精細を兼ね備えたマイクロスコープ

キーエンスは、20年以上に渡って現場の声を集めながらデジタルマイクロスコープの改善・改良を続けてきました。そして完成したのが、高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
「VHXシリーズ」は、ここで紹介した以外にも、現場の課題を解決する機能を数多く搭載しています。いずれの機能も独自設計により、使う人の習熟度を問わず、簡単な操作で高度な観察・検査が実施できるシステムを実現しました。
また、レンズのタイプや観察システムを豊富にランナップしているため、取り扱うワークや材料に最適なセットアップが実現します。

「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。