研究・開発現場レポート - ハイスループットを実践されている研究室のインタビュー

第12回 - 人工視覚システムの開発

太田 淳 氏

奈良先端科学技術
大学院大学
物質創成科学研究科
物質創成科学専攻
光機能素子科学講座
教授 工学博士
太田 淳 氏

日本における研究の遅れを危惧

 こうした中で、日本における人工視覚システムの第一人者が、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)教授、太田淳氏である。めざしているのは人の網膜の代わりとなる画像センサの開発。「欧米で研究が進む一方で、日本は取り残されかねない状況にありました。この現状を知って、日本の患者さんのためにできることはないかと研究に取り掛かったのです」と、研究の動機を語っている。

 太田氏は東京大学大学院の修士課程を修了した後、大手電機会社に就職。同社の研究所にて大規模集積回路(LSI)や画像センサの研究開発に取り組んできた。在任中は、有名なゲーム機向けに、画像センサを組み込んだLSIチップなどの開発を手掛け、市村産業賞貢献賞や科学技術庁注目発明賞などを相次いで受賞してきた。

 太田氏が大学への転身を志したのは、「先端的な研究を通じて人々の暮らしに役立ちたい」という思いが強かったから。電機会社の上司が奈良先端大の教授に就任することが決まっており、一緒に大学に移らないかと誘われたことも理由の一つだ。

 大学に移った後、自身の研究分野をどう社会に活かすかを模索していたところ、眼科医療機器メーカーが人工視覚の開発プロジェクトを立ち上げることを知った。そこから視覚回復に役立つビジョンチップの開発に向けた取り組みが始まったのである。

独自開発の方式で人工視覚システムを追究

 2001年からは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が始めた「人工視覚システムの研究開発」に参画。大阪大学や眼科医療機器メーカーとの共同研究に着手している。人工視覚システムの網膜刺激方式には、チップを埋植する部位によって網膜上方式や網膜下方式などが挙げられる。これらは欧米を中心に海外で研究が進んでいる方式だ。

 これに対して、太田氏らの研究グループが試みているのはSTS(Suprachoroidal Transretinal Stimulation=脈絡膜上経網膜刺激)方式と呼ばれる日本独自の方式である。これは眼外装置で捉えた画像を処理し、ラジオ波によって体外から電力および信号を皮下の受信装置に送電して強膜内あるいは脈絡膜上に設置された電極に刺激信号を送ることで人工視覚を実現するというメカニズムだ。電極を眼の硝子体の中に設置することで電流が網膜を貫通し、効率よく刺激ができるのが特長。しかも、強膜という眼球外部に電極を埋植することから、ほかの方式に比べて手術が容易で、網膜への侵襲が少ないなどのメリットがある。

網膜刺激型人工視覚は、チップを埋植する部位によって主に3つの方式がある。網膜上および網膜下の方式は従来、研究が進められてきた方式。これに対して、STS式は太田氏らの共同研究先である大阪大学が開発した独自方式だ。

網膜刺激型人工視覚は、チップを埋植する部位によって主に3つの方式がある。網膜上および網膜下の方式は従来、研究が進められてきた方式。これに対して、STS式は太田氏らの共同研究先である大阪大学が開発した独自方式だ。


 共同研究の中で太田氏が担当しているのは、眼内装置であるLSIと組み合わせた小型画像センサ(埋込みチップ)だ。それとともに、画像を認識する半導体(CMOS)センサとLSIを組み合わせた眼外装置(通信装置)の開発も行なっている。

人工視覚システムの構成

人工視覚システムの構成


 研究チームでは、2005年に網膜色素変性(RP)の患者2人に急性臨床試験を実施。9極の電極を埋植することによって、光覚を得るという画期的な成果を挙げた。世界的にも注目を集めている方式で、オーストラリアや韓国でも同方式の研究が始まっている。




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