研究・開発現場レポート - ハイスループットを実践されている研究室のインタビュー

第12回 - 人工視覚システムの開発

太田 淳 氏

奈良先端科学技術
大学院大学
物質創成科学研究科
物質創成科学専攻
光機能素子科学講座
教授 工学博士
太田 淳 氏

10年先の実用化をめざして研究にまい進

 研究が着実に進む人工視覚システムだが、医療現場で導入に向けて課題が多いのも事実。まず現段階では眼内装置であるLSIチップの刺激電極数は数十個程度。これに対して、日常生活で必要とされる数は最低1000個とされている。これだけの電極を一つのLSIチップに収めるのは簡単ではない。また、眼内に埋植するにはLSIチップを100μm以下の厚さにする必要がある。しかも、眼球の曲率に沿って曲げなければならない。

 こうした課題の解決方法として考えられているのが、LSIチップを500μm角程度に小分けにしてそれぞれを配線でつなぐというマイクロチップ分散方式だ。簡単にいえば、柔らかい樹脂のような基板に粒々のマイクロチップを規則正しく配列した画期的な構造。個々のチップには刺激電極とともに制御回路も組み込まれている。

 これによって、基板全体を折り曲げることができ、眼球の湾曲に沿った埋植が可能になるとされている。太田研究室ではこの方式による試作品を開発し、すでに動物実験を進めている。

網膜神経の刺激用に用いられる電極。右側がマイクロチップ分散方式

網膜神経の刺激用に用いられる電極。右側がマイクロチップ分散方式


 このほか、生体内にLSIチップを埋植するには、電極の腐食などをどう防ぐかといった問題や、生体の異物に対する防御機能をどうクリアするなどの問題が山積している。太田氏は「生体内はいわば塩水の環境。そのままでは電極はすぐに腐食してしまいます。有機物の世界に無機物を持ち込むのは想像以上に困難が伴うのです。そのため、電極の素材を何にするかなど、材料工学からのアプローチも欠かせません。私としては10年後の実用化をめどに研究を進めています」と語っている。

眼球に沿って湾曲するように設計されたデバイス。

眼球に沿って湾曲するように設計されたデバイス。

パーキンソン病の解明に役立つデバイスの開発

 現在、太田研究室では、人工視覚システムの研究で培った技術を活かして、脳機能のイメージングを行なうデバイスの研究も行なっている。これによって、めざしているのは脳における記憶や学習のメカニズムを解明することだ。太田氏は薄型CMOSイメージングチップを開発し、マウスの脳に埋植。生きた状態で脳の活動状況を観察することが可能になっている。

脳内埋込みセンサの概要

脳内埋込みセンサの概要


 医学上での応用として考えられているのは、パーキンソン病の解明だ。この病気は脳内の神経伝達物質が不足することで、指先の震えなどが生じる難病。これに対して、脳内にチップを埋めることで、症状が起こった際に素早く感知し、同時に電気信号を出すことで脳に刺激を与えることで、症状を抑えるといった治療の開発をめざしている。

脳内埋植用デバイスの試作品

脳内埋植用デバイスの試作品


 このほかに、太田研究室ではCMOSデバイスによるセンシングや信号処理技術を応用して、より高機能なμTAS(micro-Total Analysis System)技術をめざした研究も行っている。数mm角の小さなガラス基板上の流路にバルブやセンサなど集積化したμTASは、短時間で高効率かつ低コストでの化学分析を実現するための手法として期待されている。




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