現場改善のヒント

ロボットは“数年で元が取れる”というけれど

導入を決める前に、自社の数字で試算する

数年で元が取れる?自社の数字で投資判断

「ロボットは数年で元が取れる」そんな言葉を目にすることがあります。

では、自分の現場でも本当に数年なのか。それを確かめるには、自社の数字で一度試算してみるのが近道です。人手不足をきっかけに自動化を考えるのは、最近の製造の現場では珍しいことではなくなりました。ただ、「導入したい」と「導入を決める」のあいだには、もう一段あります。人件費、ラインの稼働時間、段取り替えの時間。自分たちの数字で、何年で回収できるかを出してみる段階です。

この記事でわかること

「導入したい」と「導入を決める」、そのあいだに何がある?

工場の事務所で、電卓と資料を使って設備投資の費用を試算する様子

「数年のうちに、ロボットを何台か」計画としては、よくある形です。

ただ、計画を立てることと、その計画に値段と年数をつけることは、別の作業です。いくらかけて、何年で回収するのか。何人分の作業を任せるのか。検討に時間がかかりやすいのは、ここに自社の数字を入れる段階です。

「検討中」の中身は、技術の壁とは限りません。見積もりに必要なのは、人件費や稼働時間など、社内に散らばっている数字です。日々の仕事と並行して集めて並べるだけでも、相応の手間がかかります。

自動化の検討、いまどのあたり? よくある3つの場面

製造の現場でよく耳にする、自動化検討の3つの場面と、それぞれで確かめておきたいことをまとめました。

  • ①「どこまでできるか」が見えないとき → 実物のワークで試してみる(例:検査の自動化)
  • ②計画に費用と効果の数字を入れるとき → 自社の数字で、何年で回収できるかを出してみる(例:ロボット・搬送ロボット(AMR)の導入)
  • ③検討がいったん止まったとき → 止まった理由を残しておく(例:要件が合わない、今は必要性が低い)

どの場面でも、自社の数字で一度試算しておけば、進めるにしても見送るにしても、納得して決められます。
ここからは、それぞれの場面について、現場でよく聞く声とともにもう少し詳しく見ていきます。

場面① 検査の自動化:どこまでできるか、見通しが立たない

目視検査の要員が確保しにくくなったため、画像処理やAIを使った検査に切り替えたい、と考える現場もあります。一方で、「対象物の形が複雑で、うまく判定できるか見通しが立たない」と、次の段階へ進むまでに時間がかかっているケースもあるようです。

やりたいことは、もう決まっている。残るのは「どこまでできるか」と「いくらまでかけてよいか」の2つです。

→ この場面での確認事項は「確認①」をご覧ください

場面② ロボット・搬送ロボットの導入:まだ始めたばかり

「搬送や組立の工程に、ロボットやAMR(自律搬送ロボット)を入れたい」という声は、業種を問わずよく聞きます。
ただ、その多くは「検討を始めたばかり」「数年先には導入したい」という段階で、費用と効果を数字にするのはこれからという状況です。

→ この場面での確認事項は「確認②」をご覧ください

場面③ いったん止まった検討:要件が合わない、今は必要ない

「要件が合わなくて、計画を見直した」「そこまで人手不足ではないので、今はいい」。そんなふうに、検討がいったん止まった話も聞きます。人の目でないと判断できない部分が残った、という話もあります。

技術の限界で止まることもあれば、「今は要らない」と決めて止めることもあります。どちらの場合も、手元の数字で見積もってあれば、あとで判断を見直すときの足場になります。

→ この場面での確認事項は「確認③」をご覧ください

何から確かめればいい? 自動化を考えるときの3つの確認

①〜③の場面ごとに、確かめておきたいことをまとめました。

確認① 「どこまでできるか」は、実物のワークで確かめる

技術の見通しが立たないなら、まずは実物のワークでテストしてみることです。どこまで対応できるかがわかれば、「いくらまでかけてよいか」も、確認②の試算で考えやすくなります。

確認② 「何年で回収できるか」を、自社の数字で出してみる

他社の事例や一般的な数字ではなく、自社の人件費や稼働時間で計算します。たとえば「導入にかかる費用 ÷ 自動化で浮く作業時間を人件費に直した1年分」で、おおよその回収年数が出ます。最初はざっくりでかまいません。保守費などは、あとから足していけば精度が上がります。工程ごとに出してみると、どこから手をつけるかの目安にもなります。

確認③ 見送った検討は、「なぜ止まったか」を残しておく

要件が合わなかったのか。今は必要性が低かったのか。理由が残っていれば、人手の状況や設備の更新時期が変わったとき、もう一度検討するきっかけをつかみやすくなります。

まとめ

「数年で元が取れる」の「数年」が自社にも当てはまるかは、自社の数字で試算してみないとわかりません。進めるにしても見送るにしても、一度自分たちの数字を並べておけば、判断の理由を社内で説明しやすくなります。

編集後記

「元が取れる」という言葉、口にするのは簡単です。ところが中身を埋めようとすると、人件費に稼働時間にと、社内のあちこちへ数字を取りに行くことになります。時間がかかるのは、むしろ年数が出る手前のこのあたりです。皆さんの現場で、いちばん集めにくい数字はどれでしょうか。

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