機械産業のコメと呼ばれる“29億6,098万個”の正体は?
さまざまな回転部分に使われている「ベアリング(軸受)」は、高精度なボールを複数内蔵することで、回転摩擦を最小限にする部品です。今回の数字、約29億6,098万個は、2018年の日本国内における、さまざまなベアリング(軸受)完成品の年間生産数。普段、目にすることはなかなかありませんが、「機械産業のコメ」と呼ばれ、ありとあらゆる機械製品などに利用されていますが、一体どういったモノで使われているのでしょうか。
ベアリングは、製造現場において、加工装置やライン設備などでは欠かせない存在のため、その業務に携わる方にとっては馴染み深いモノ。また、趣味で使用する道具や機械にこだわる人なら、abec規格や各部の材料、ベアリング専用の潤滑オイルなどにも精通しているかもしれません。
一方であまり馴染みがない方であっても、日常生活のあらゆる場所やモノの多くが、じつはベアリングによって支えられているのです。
たとえば、自動車や電車、航空機などの乗り物では、エンジンや駆動モータ、車輪、方向操作などの回転部分。施設・設備では、駅の自動改札機やエスカレータ、プラットホームの安全扉など。オフィスでは、パソコンのHDDやプリンタ・コピー機。ビルやマンションでは、エレベータや制振装置など。また、家庭では洗濯機や掃除機、エアコンなどの家電製品から子どもの玩具まで、あらゆる回転部分でベアリングが活躍しています。
ベアリングの原点は、古代エジプトでのピラミッド建設という説があります。古代の壁画では、巨大で重い石の下に転がる丸太を置き、摩擦抵抗を減らして運搬する様子が描かれています。
現代のベアリングと同じような原理や構造は、15世紀のルネサンス期に「万能の天才」と呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチが考案。そして18世紀後半から始まった産業革命でさまざまな機械が作られたことで、大きな広がりを見せることになります。
ベアリングの役割は力を効率的に伝えることにあります。そのため自転車競技や、オリンピック競技としても注目されるスケートボードといったスポーツの世界でも、ベアリングの選定は重要です。
ちなみにベアリングの世界シェアはスイス、ドイツ、日本の企業で5割を超えていることからも、高い精度と技術力が必要とされていることがわかります。
日常生活で目にすることのないベアリング。しかし、モノをスムーズに動かすのには必要不可欠な存在です。「これスムーズに動くな」と感じたときには、見えないところで働く、高品質なベアリングの存在に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
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