工作機械を能力いっぱいで使うのは正解?
たとえば、9kWのモータを搭載した工作機械。その能力いっぱい、つまり、常に9kWの負荷をかけて使用することは、本当に理にかなっているのでしょうか。
- この記事でわかること
能力と負荷への配慮について
比較的新しい機械・装置であれば、モータの負荷などを自動制御するものがほとんどでしょう。しかし、製造現場によっては、こうした自動装置のみで構成されているとは限りません。手動制御が必要な工作機械が、ある加工や工程に不可欠である場合、工場設備に混在、もしくは主力となっていることもあります。
このような工作機械は、ものによって「工作機械を能力いっぱいで使うほうが、電力効率と加工能率などの点で良い」という意見があるかもしれません。しかし、これは必ずしもすべての工作機械に当てはまるとは限りません。
工作機械で 「精度」を重視するには、機械の「負荷への配慮」が必要となります。
機械の設計基準による分類
人による調整や制御が必要とされる機械ともうまく付き合うためには、機械の設計基準からその特徴を理解することが大切です。機械の設計基準は、大きく下記の2つに分類することができます。
許容応力を基準とした設計(航空機的設計)
一般的に、能力いっぱい(許容応力ぎりぎり)で使うことで、高い性能を発揮します。「航空機的設計」と呼ばれることがあります。
ひずみを基準とした設計(工作機械的設計)
許容最大ひずみを基準に、動剛性などが設定されています。なるべく小さいひずみで使用したほうが、精度が上がります。「工作機械的設計」とも呼ばれます。
複数の設計基準を持つバランス型
現代的な機械の多くは、精度やパワー、スピードといった複合的な基準・目的を持つため、上記の「許容応力」と「許容最大ひずみ」のバランスによって設計されています。これを「バランス型設計」と呼び、高精度な加工装置では、センシングと制御の技術も重要となります。高速・高精度・高トルクを制御・両立した産業用ロボットは、バランス型設計の代表例といえるでしょう。
機械を最適に運用するには
上記のことから多くの場合、工作機械的設計で作られた加工機も能力いっぱいで使用すると、機械に過剰な負荷がかかり、加工精度に影響するといえます。それにより機械の不具合や加工不良につながる場合があります。
古くからある工作機械もその特性や仕様を確認したうえで、最適な運用を心掛けたいですね。
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