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いまさら聞けない
メタバースが製造業に及ぼす影響とは?

いまさら聞けないメタバースが製造業に及ぼす影響とは?

近年、メタバースという言葉がよく聞かれるようになりました。特にゲームをはじめとしたエンタメ業界の例はよく話題に上ります。メタバースは今後さらに広がり、製造業にも影響があるといわれていますが、実際にはどのような影響があるのでしょうか。

この記事では製造業とメタバースの現状について解説していきます。

この記事でわかること

そもそもメタバースとは? 答えはインターネット上の3次元の仮想空間

メタバースとはインターネット上に構築された3次元の仮想空間やサービスを意味します。「meta(超越)」と「universe(世界)」という二つの言葉を組み合わせて作られた造語です。
まずはメタバースがどのようなものであるかを、整理していきましょう。

メタバースの概要

複数人で同時に同じミッションを楽しめるネットゲームやアバターを用いたチャットなど、仮想空間で人と人がつながるサービスは既に私達の生活の中にも数多く存在しています。このような仕組みはメタバースにも近いものであります。しかし、メタバースに分類されるものには次の特徴があり、これら全てを満たすと考えられています。

  • 永続性
  • アバターをもってコミュニケーションする
  • 多くの人が同時に同じ空間を過ごす
  • 売買や仕事などの機能がある
  • コンテンツやプラットフォーム間の制限がない

それぞれの特徴について詳しく説明します。

  • 永続性
    一つの会議が終ったら一旦閉じられるWeb会議サービスのように、接続時間が限られません。そこに接続する人がいる限り、常につながれるのがメタバースの特徴です。このような意味では、常にフィールドがオープンになっているインターネットゲームは、メタバースに近い特徴を持っています。
  • アバターをもってコミュニケーションする
    顔写真のアイコンや、カメラで撮影された直接の画像ではなくアバターでコミュニケーションするのが特徴です。アバターとは自分を表わす架空のキャラクターであり、キーボードやマウスで操作したり、カメラで認識した自身と同じ動きをさせたりします。Web会議で利用できる、動物やキャラクターのフィルタは、メタバース的な要素といえるでしょう。
  • 多くの人が同時に同じ空間を過ごす
    1対1や少人数のグループではなく、多くの人がリアルタイムでつながるのがメタバースの特徴です。動画のライブ配信を大勢の人が同時に見てリアルタイムでコメントを送るような仕組みは、アバターを伴っていないためメタバースではないものの、同じ空間をリアルタイムに共有するという意味ではメタバース的な要素を含むものです。
  • 売買や仕事などの機能がある
    メタバースの特徴の重要な役割の一つが、商品の売買や仕事などの機能を備えていることです。前述でインターネットゲームはメタバースに近いと述べましたが、アクセスしている人同士でリアルな金銭を使用した売買をする機能が備えられていないため、メタバースには該当しません。
  • コンテンツやプラットフォーム間の制限がない
    メタバースの特徴のうち、さらに重要なのが、コンテンツやプラットフォーム間の制限がないことです。例えばネットゲームなら、同じゲーム機という共通のプラットフォームから同じソフトという共通のコンテンツを使わなければ通信ができません。Web会議でも共通のサービスを使用しなければならないため、コンテンツやプラットフォームに強い制限があります。

デジタルツインやAR、VRとの違いは?

メタバースと近い言葉としてデジタルツインやAR、VRが挙げられるケースもあります。ここではそれぞれの違いについて解説します。

  • デジタルツインとの違い
    デジタルツインとは、現実の空間をネットワーク上に再現する技術です。例えば、近くにいる空車のタクシーの位置やバスの位置や移動の様子をマップ上にリアルタイムで表示するシステムなどはデジタルツインに該当します。デジタルツインは現実を元に、それをネットワーク上に再現します。
    一方でメタバースは、ネットワーク上の仮想空間が現実の再現である必要はありません。ゲーム空間やバーチャルオフィス、仮想のショップなどが含まれます。さらにデジタルツインでは必須ではなかったアバターが必要になります。
    デジタルツインはシミュレーションや現状の把握などが主な用途になる一方、メタバースは商品の売買や会議、コミュニケーションなど、広い用途を持つのが特徴です。
  • AR、VRとの違い
    ARは現実世界をベースにして、そこに視覚情報を追加するものです。例えば機械のメンテナンス作業員がARグラスを着用し、機械の隣にバーチャルで表示された作業手順書を参照しながら作業するのもARの活用方法の一つです。
    一方でメタバースは仮想空間がベースになります。VRもまた仮想空間をリアルに体感するための手法ですので、メタバースへのアクセス方法のひとつになります。

メタバースの用法とメリット

メタバースの具体的な用法は次の3分野に大別されます

  • 製造業
  • エンタメ
  • ビジネス

メタバースの波は製造業にも及ぶ

製造業もメタバースによる変化を避けられないでしょう。メタバースは主にエンタメや商談、ビジネスミーティングなどでの活用が取り沙汰されていますが、製造業も決して無関係ではありません。

製造業でのメタバース活用

製造業でのメタバース活用

少なくとも現在の段階では、製造業でのメタバースはデジタルツインと非常に似た位置づけにあるといえます。製造業でのメタバースは、デジタルツインの延長線上というイメージで、従来のデジタルツインに対してアバターという形で「ヒト」が加わるケースが多いようです。

工場のメタバース化

自動車会社の中には、工場のメタバースに取り組んでいる会社もあります。生産性の向上や、ラインで発生する問題を遠隔で解決するなどを目標に、工場を丸ごと仮想空間化しています。そして仮想空間上で人のアバターを使って生産ラインを確認したり、機械を動かすシミュレーションを行ったりしています。
メタバース上の工場でロボットのシミュレーションやトレーニングを行うことで、実際の人やロボットを動かさずに生産状況を確認できるようになるなどのメリットがあります。

製品発表会での活用

自動車のバーチャルギャラリーにメタバースを活用した事例もあります。車の情報だけでなく、映像コンテンツなども同時に展開し、バーチャルならではの内容を参加者に伝えられるのがメリットです。
また高齢者を対象に、運転技術に必要な筋力と認知力を高める体操を、メタバースを用いて行う事例も出ています。

次にエンタメとビジネス分野での活用方法を紹介していきましょう。

エンタメでの活用

一番想像しやすいメタバースの活用がエンタメ分野といえるかもしれません。エンタメ分野では主に次のような用途が考えられています。

  • オンラインゲーム
  • バーチャルライブ、スポーツ観戦
  • ショッピング

メタバースを活用することによって、ユーザー間がリアルタイムにつながれば、お互いの情報や感情を共有することができるようになります。例えば、オンラインゲームであれば、同じミッションに挑む仲間とミッションの情報だけでなく危機感や達成感などの感情を共有することができます。また、バーチャルライブやスポーツ観戦もアバターを活用して視聴者とも同時につながることによって、パブリックビューイングのような一体感が生まれることになるでしょう。
ちなみに、製造業の活用例で紹介するバーチャルな車のギャラリーなどは、今はまだどちらかというとエンタメ分野での活用に近いものといえそうです。

ビジネスでの活用

近年、急速にリモートワークが広がった影響もあり、メタバースのビジネスシーンでの活用も非常にイメージしやすいものとなりました。ビジネスシーンでのメタバースの活用には次のような例があります。

  • 仮想オフィス
  • オンライン会議
  • 商談

仮想空間を活用することで、遠隔でありながら「そこにいる」臨場感のあるつながりが可能になるのが特徴です。例えば仮想オフィスでは、話しかけたい相手のアバターに近づいたときだけ音声通話がつながったり、バーチャル上の会議室にアバターを移動させることで同じ会議室にいるメンバーとだけWeb会議が可能になったりもします。またオンライン会議で、ある製品のデザインレビューを行う場合、仮想空間の机の上にモデルを置き、見える向きや色やデザインを変えるなどの操作が同時に双方向で行えるなど、現在もあるWeb会議をさらに発展させる用途が考えられています。
実際にマイクロソフトの「Mesh for Microsoft Teams」では、共通のホログラフィックスエクスペリエンスを通じて共同作業ができるのが特徴で、このような取り組みは今後、製造業のDRなどでも活用されていくと考えられています。

製造業とメタバースの現状と今後の展開

現在の段階では、メタバースの活用例として伝えられているニュースでも、ていねいに読んでいくと、どちらかというとデジタルツインやAR、VRの活用例であるケースが多いのが現状です。
例えば、VRで機械操作の教育を行ったり、労災事例を体験させたりするという安全教育がメタバースとして紹介されているケースもありましたが、実際にはVRの活用例です。またARメガネでマニュアルを表示させる事例は、ARの活用例になります。
前述のように、製造業でのメタバース活用は、デジタルツインの先にあると考えられています。そのためメタバースを活用したいと考えるならば、まずはデジタルツイン化が必要です。さらにデジタルツイン化を行うためにはIoT化が必要です。
今のところはメタバースを活用した取り組みが、製造業に革新的な変化をもたらした例はありませんが、国内や海外ではメタバースを活用した先進的な例も既に存在しています。このことから、今後、何かをきっかけに製造業でのメタバース活用が大きく進んでいく可能性は十分に考えられます。実際に、工場のメタバース化を支援するサービスも登場しており、製造業がメタバースにかける期待は少なくないことが伺えます。
何の準備もないところから急にメタバースを取り入れるのは困難です。まずは、メタバースの前段階となるIoT化から進めていき、今後の展開に備えておくといいでしょう。

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