【製造業DX】センサを用いた
省エネ・省力化の方法とは?
エネルギーと資源を使い、製品を作る製造業は、SDGsが目指している「持続可能でよりよい世界」の実現に大きく係わっています。SDGsの掲げる目標を実現するため、これまでも多くの製造現場で、様々な取り組みが行われてきました。
省エネ、省力化もその一つです。従来から多くの製造現場で行われてきましたが、目標実現のためにも、今後さらに強く推し進めることが求められています。省エネ、省力化の強化で重要となるのが製造現場のデジタル化です。製造現場のデジタル化では、装置や設備の状況を自動で取得できる各種センサが活用できます。
- この記事でわかること
製造業に関連の深い目標とは
SDGsで掲げられた17の目標の中で、特に製造業の生産活動との関連の深いものには以下が挙げられます。
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
12:つくる責任 つかう責任
エネルギーや働き方、DX、製造責任、使用責任などにかかわる目標
目標7では、世界のエネルギー問題解決のため、安価で信頼できる現代的なエネルギーを、世界の全ての人が使い続けることができるようすることを目指しています。目標の達成には、エネルギー消費の削減や、クリーンな再生可能エネルギーの利用促進などの取り組みが必要です。
目標8では、生産効率の向上や働き方改革などの取り組みにより、持続可能な経済成長と共に、全ての人が人間らしく生産的な仕事ができる社会を実現します。
目標9では、新しい技術の開発(イノベーション)や、持続可能かつ強靱なインフラを構築し誰もが使えるようにすることなどを求めています。
目標12では、持続可能な消費と生産を目指し責任をもって消費する、廃棄ロスの削減やリサイクル、リユースを推進しています。
これらの目標には、エネルギー消費削減による省エネ、省力化、働き方改革、DX、リサイクル、リユースなど、製造業に関わりの深い取り組みが含まれています。
製造現場で行われている省エネ、省力化の取り組みの例
SDGsの目標達成に向けた省エネ、省力化の取り組みの具体的な例を挙げてみましょう。
まずは省エネについて。建物内の照明を、消費電力の少ないLED照明へ変更する取り組みは以前から行われてきました。ポンプやモーターのインバーター化の他、コンプレッサーの圧力適性化などにより、無駄なエネルギー消費の削減を行う取り組みも多く行われています。
省力化では、自動化装置の導入による製造環境の改革は以前から行われてきましたが、近年では製造業DXによる省力化も進んでいます。クラウドとIoTによるスマートファクトリー化により、作業者の負荷を削減した例も多く出てきました。
省エネ、省力化が可能な事例
製造現場で省エネ、省力化が可能な事例は数多くあります。工場内の各種生産設備は多くのエネルギーを使います。定期的な稼働状況のチェックも必要です。生産設備を稼働させるために必要となるコンプレッサーや、ボイラー、受変電設備なども同様です。これらのエネルギー消費を見直し、チェックの手間を削減すれば、省エネ、省力化が実現されます。
例えば、生産設備では、駆動装置のインバーター化だけでなく、加熱設備やタンクの断熱、保温をすることで。熱効率がよくなり、エネルギー消費が抑えられます。動作不要時に駆動停止しておけば、その間にエネルギーが消費されません。工場内の温度環境を適性化することでも、設備に余計な負担をかけることが無くなり、効率的な設備稼働が可能になります。また、コンプレッサー、ボイラー、受変電設備などについても、圧力や温度、運転効率の適性化、不要時の停止を行う事でエネルギー消費の削減が可能です。
稼働状況のチェックに関しては、自動で記録や検査が行われ、遠隔でも確認できるシステムを導入する方法が考えられます。これにより、大幅な省力化が実現されます。
省エネ、省力化が可能な事例を複合的に組み合わせて実施することで、SDGsの目標達成に大きく近づきます。
省エネ、省力化による目標の達成
省エネ、省力化による目標の達成では、製造現場のデジタル化が大きな鍵となります。例えば、工場内装置の最適運転によるエネルギー消費削減では、装置の動作状況の確認が必要です。各装置を目視で確認して調整を行う方法では、多くの手間と時間がかかります。エネルギー削減は行えますが、一方で働き方改革の点では目標から遠ざかります。自動で確認できて、遠隔地からでも装置の調整ができれば問題は無くなります。そのためには、数値を自動で確認してクラウドへ送り、遠隔操作を行えるシステムが必要です。
システムの導入、スマートファクトリー化よる省力化を進めている企業は既に多くありますが、SDGsの目標達成のためにも製造現場のデジタル化は積極的に進めるべきです。
センサを用いた製造業DXで省エネ、省力化
製造現場のデジタル化で活用できるのが、各種のセンサです。温度、圧力、流量、変位などの各種センサを用いてデジタル化を進めれば、検査の自動化、予兆管理、遠隔監視、設備運用の最適化が実現できます。これによって、省エネ、省力化が進み、目標達成に近づけることができます。
検査の自動化
従来、圧力、温度、流量のような装置の動作、工場操業に必要な数値は、計測器が取り付けられた現場まで検査員が出向き、確認、検査表への記入が行われていました。しかし、計測器の数は非常に多く、現場は高温、多湿のような過酷な環境の場合もあり、作業者の負担となります。
その点、センサのデータをPLCやPCへ直接伝送できるデジタルセンサならば、その問題を解決することができます。データを自動で取得し、遠隔地から装置の操作も行えますし、多数の計測器を歩いて確認することや、過酷な環境に入る必要も無くなります。
また、外観検査でも従来は目視で傷や凹みなどの不具合を検査していましたが、画像センサとAIを活用したシステムを用いることによって、高速かつ自動で不具合を見つけることができます。これによって、検査効率が大幅に向上します。
予兆管理
センサによりデータを自動で取得して伝送できれば、予兆管理も行えます。自動でデータを収集することで、人が確認できないほどの膨大なデータを収集することができます。これらをクラウドに送り、AIで解析すれば、不具合が発生する可能性を事前に検知することも可能です。メンテナンスにかかるコストを減らし、不具合による事故を未然に防ぐことで、復旧にかかる損失を無くすことができます。
遠隔監視
センサを用いることにより遠隔監視も可能になります。データがPLCやPCへ直接伝送されれば、設備や工場内の状況をリアルタイムで把握することができます。これと合わせてエッジコンピューティング、クラウドを用いれば、遠隔地での集中監視、一括管理が可能となり、労働環境の改善にも貢献することができます。
設備運用の最適化
センサを用いることで、リアルタイムでデータが取得できます。データに基づき、リアルタイムで装置の調整を行えば、常に最適な状況で稼働させることが可能となります。また、クラウドを用いて工場全体の稼働を連携させれば、工場全体の設備運用が最適化され、無駄なエネルギー消費を削減することができるでしょう。さらに、生産管理システムを用いることで、装置の稼働状況に合わせて人や、原材料、製品などの動きも最適化していくことも可能です。これにより、工場全体が最適化されていきます。
まとめ
SDGsの目標達成において、製造現場のデジタル化が非常に重要な位置を占めています。そこで製造業のデジタル化に必要になるのが、温度、圧力、流量、変位などの数値を自動で取得できる各種センサの活用です。センサにより、設備運用の最適化による省エネ、検査の自動化などによる省力化が進みます。製造業における「持続可能でよりよい世界」の実現への貢献の為にも、センサを用いたデジタル化を積極的に進めることが求められています。