加工クズが除去できない

トラブル内容

切削加工後の製品には加工クズが付着している。この加工クズをエアブローなどで除去しなければならないが完全には除去できない。次の工程の組立工程で除去できなかった加工クズが原因となって異物混入などのトラブルが発生する。

図 5-75 切削加工のイメージ

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静電気の発生と帯電

切削加工は被加工物と刃物との間で、摩擦、剥離、変形、破壊さらには熱や化学変化などが複雑に絡みあった現象がおきている。これらの現象の過程で静電気が発生している。金属は導電性なので静電気トラブルは無いと思われる。
しかし加工クズは加工熱で酸化し、金属酸化物になると非導電性になる。非導電性の加工クズが帯電し被加工物に付着する。一度付着するとクーロン力で引き合い簡単には除去できない。
図5-76に加工クズが付着するモデルを示す。

図 5-76 加工クズが付着するモデル

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切削加工での静電気現象

帯電した加工クズと被加工物(導体)との間には影像力が働く。加工クズを球体とみなすと、その影像力fは式(5-14)で表される。Qは加工クズが持つ電荷、rは加工クズを球体としたときの半径である。この式中の係数Keはコピーで使用するトナーの例で、実験的にKe=1×1010Nm2/C2が求められている。

f=keQ2/r2(5-14)

空気は電界強度が約3MV/mを超えると電離する。空気中では帯電した球体が形成する電界の強度が、この約3MV/mを超えるような帯電にはならない。つまり空気中で球体が持つ電荷には上限がある。球体が持つことができる最大の電荷Qmは図5-77のようになる。

図 5-77 空気中で球体が持つことができる最大の電荷

加工クズが金属に付着したときの影像力fkと加工クズの重力fgを示したものが図5-78である。加工クズはアルミの酸化物であるアルミナ(密度4000kg/m3)とした。グラフより、10mm以下の球体は帯電による影像力のほうが強い。これは付着すると重力では落下しないということである。加工クズが理想的な球体で、なおかつ最大の電荷を持つことは現実的にはない。しかしそれを考慮してもmmオーダー以下の加工クズは重力よりもクーロン力が支配的なので、加工クズの電荷を除去する必要がある。μmオーダー以下の加工クズについては、重力よりも影像力のほうがはるかに大きい。半導体などの微細加工の工程では静電気管理が重要となる。

図 5-78 球体に働く影像力と重力

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除電方法

密着している加工クズは、電気的な力以外に物理的な力でも付着している。静電気を除去するだけでは加工クズは除去できない。したがって静電気を除去するとともに物理的な外力を必要とする。物理的な外力としてエアブローを使用するのが手軽である。除電方法としては、適度なエア圧力で加工クズに物理的な力を加え、同時にエアブローのエアを利用してイオンを搬送し除電を行うのがよい。除電器が生成するイオン量が少ないと加工クズが除電されないまま飛散し、再度付着することがあるので生成するイオン量の多い除電器を選ぶ。
イオンを電界搬送する除電器はこの用途に適さない。除電されて被加工物から離れた加工クズが、再び帯電し製品に付着する可能性がある。図5-79に帯電していない加工クズがイオンによって帯電して製品に付着するモデルを示す。除電器が生成したイオンで加工クズが帯電する。帯電した加工クズは電極の電位と同極性なので、反発して除電器から遠ざかる。これはイオンの電界搬送と同じメカニズムである。遠ざかる加工クズは帯電しているので製品に付着する。

図 5-79 イオンによる加工クズの帯電

図 5-79 イオンによる加工クズの帯電

図5-80、図5-81はアルミ箔片を加工クズに見立てて、電界搬送している除電器に近づける実験の様子である。図5-80は除電器の動作周波数を3Hzに設定している。アルミ箔片を除電器の電極に近づけると反発して除電器から離れようとするのがわかる。図5-81は除電器の動作周波数を33Hzに設定している。動作周波数を高くすると電界搬送の効果が弱くなりアルミ箔片の挙動は小さく目視では確認できない。この実験より動作周波数が低いほど、除電器から反発する挙動は大きい。DCタイプ除電器の動作周波数は0Hzと等価なのでこの現象は顕著に表われる。

図 5-80 動作周波数3Hz でのアルミ箔片の挙動

図 5-81 動作周波数33Hz でのアルミ箔片の挙動

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対策例

圧縮空気を利用してイオンを気流搬送する除電器がよい。また動作周波数は出来るだけ高くできるものが望ましい。除電対象が小さい製品の場合は、図5-82のようなスポットタイプ除電器が適している。除電対象が大きな製品の場合は、図5-83のようなバータイプ除電器で広範囲に除電するのが適している。

図 5-82 スポットタイプ除電器を用いた対策例

図 5-83 バータイプ除電器を用いた対策例

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