ホコリが付着する

トラブル内容

ホコリや異物によるトラブルは多い。洗浄したレンズにホコリが付着していたり、バンパーを塗装前にエアブローでホコリを吹き飛ばしても塗装後にゴミブツ不良があったりする。製品や部品を洗浄しても静電気が残っていたり、帯電したホコリが空気中を浮遊していたりするとホコリが製品や部品に引き寄せられ付着する。

図 5-84 レンズ洗浄後にホコリが付着する例

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静電気の発生と帯電

製品や部品は、その製造方法や搬送方法で静電気発生の仕組みが異なる。ここではホコリが帯電する仕組を説明する。ホコリは空調などの気流に乗って移動するとき、いろいろな場所に衝突することで帯電する。ホコリが壁などに衝突した瞬間に電荷が移動し帯電する。

ホコリが壁などに衝突して帯電するモデル

ホコリの発生源が帯電していると、そこから出るホコリは帯電している。一般的なホコリの発生源は人(衣服)である。人が何か動作をすると衣服では摩擦帯電や剥離帯電が発生し、その衣服から出るホコリが帯電している。図5-86にホコリの発生源が帯電しているモデルを示す。

図5-86ホコリの発生源が帯電しているモデル

ホコリの発生源が帯電していなくても、帯電しているものが近づくと誘導電荷が表れる。電荷の誘導された場所からホコリが出るとそのホコリは帯電している。図5-87に発生源に帯電体が近づくモデルを示す。

図5-87ホコリの発生源に帯電したものが近づくモデル

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ホコリ付着の静電気現象

ホコリ付着の静電気現象はいくつかのパターンに分けて考えなければならない。ホコリが帯電している場合としていない場合、製品や部品である除電対象が帯電している場合としていない場合がある。さらにホコリが導体か絶縁体か、除電対象が導体か絶縁体かの場合がある。これらの組み合わせで静電気現象は異なる。ホコリも除電対象もどちらかが帯電しているとクーロン力が働き、引き合う方向であればホコリは付着する。場合によってクーロン力が働く様子が異なり、必要な静電気対策も異なる。
除電対象とホコリ両方が帯電している場合を考える。お互いに逆極性であればホコリは除電対象と引き合い、逆に同極性であれば反発する。図5-88にホコリと除電対象が帯電している場合のモデルを示す。この場合、ホコリと除電対象の間に働くクーロン力がおよぶ範囲は広い。

図5-88ホコリも除電対象も帯電している場合

除電対象が導体で帯電しておらず、ホコリが帯電している場合を考える。ホコリが帯電している極性と逆極性の電荷が除電対象表面に表れる。ホコリの帯電電荷と除電対象の誘導電荷との間でクーロン力が働き引き付けあう。図5-89に除電対象が導体でホコリが帯電している場合のモデルを示す。この場合、ホコリと除電対象の間に働くクーロン力がおよぶ範囲は狭い。

図5-89ホコリが帯電している場合(除電対象は導体)

除電対象が絶縁体で帯電しておらず、ホコリが帯電している場合を考える。ホコリに帯電している電荷の電界によってプラスチックなどの誘電体は分極する。分極している電気双極子は除電対象表面で同極性にそろって配列するため、電荷が誘導されたような状態になる。分極の強さは誘電体の誘電率の大きさに依存する。誘電率の大きい物質ほど強く分極し、あらわれる分極電荷も大きい。帯電したホコリと分極電荷との間にクーロン力が働き引き付けあう。図5-90に除電対象が絶縁体でホコリが帯電している場合のモデルを示す。
除電対象の材質の誘電率が無限大ならば、ホコリに帯電している電荷と同じ大きさの電荷が除電対象表面に表われる。しかし実際の絶縁体の誘電率は有限である。例えばプラスチック類の誘電率は3程度である。除電対象表面に表われる分極電荷の大きさは、導体の場合に表われる誘導電荷より小さい。つまりホコリと除電対象との間に働くクーロン力がおよぶ範囲は先述の除電対象が導体の場合より狭い。

図5-90ホコリが帯電している場合(除電対象は絶縁体)

除電対象が帯電していてホコリが帯電していない導体の場合を考える。帯電した除電対象の電界によってホコリ内部で電荷の誘導が起きる。除電対象に近い側には除電対象と逆極性の誘導電荷、除電対象から遠い側には除電対象と同極性の誘導電荷が表われる。除電対象の帯電電荷とホコリの誘導電荷との間にクーロン力が働き、除電対象に近い側は引き付けあう力で、遠い側は反発する力が働く。電界が平等電界であれば、お互いの力の大きさは等しく打ち消しあうのでホコリには力が働かない。しかし実際には平等電界になることは稀である。不平等電界の場合には除電対象に近い側の電界強度が強いので、ホコリには帯電している除電対象に向かう力が働く。図5-91に除電対象が帯電していてホコリが帯電していない導体のモデルを示す。

図5-91除電対象が帯電している場合(ホコリは導体)

除電対象が帯電していてホコリが帯電していない絶縁体の場合を考える。帯電した除電対象の電界によってホコリ内部で分極が起きる。分極によって除電対象に近い側には除電対象と逆極性の分極電荷、除電対象から遠い側には除電対象と同極性の分極電荷が表われる。先に述べたホコリが導体の場合と同様にホコリには除電対象に向かう力が働く。図5-92に除電対象が帯電していてホコリが帯電していない導体のモデルを示す。
クーロン力は分極電荷の大きさに依存する。その分極電荷の大きさは誘電率に依存しており、誘電率が大きい絶縁体のホコリ(またはゴミ)ほど働く力は大きい。誘電率が無限大ならば導体の場合の誘導電荷と同じ大きさの電荷が表われるが実際には誘電率は有限である。ホコリが絶縁体の場合に働く力は導体の場合の力に比べると小さい。

図5-92除電対象が帯電している場合(ホコリは絶縁体)

コラム

ホコリ付着の簡単な実験

ホコリを除電すれば付着しないと考えられている除電対策があるがそれは誤りである。これは簡単な実験で確かめられる。アルミ箔(導体)と紙(絶縁体)を短冊状に切って、棒の先端に取り付ける。アルミ箔と紙が帯電していないことを確認したあと、上から帯電したプラスチック板を近づける。短冊状のアルミ箔と紙は、図5-93のように上に跳ね上がる。これは帯電していなくても導体と絶縁体の両方ともに、帯電したプラスチック板に引き付けられることを示す。

図5-93アルミ箔と紙の短冊での実験

紙の短冊をプラスチックフィルムの短冊に付け替えて同じ実験をした。紙もプラスチックフィルムも帯電したプラスチック板に引き付けられるが、図5-94に示したようにプラスチックフィルムは引き付けられる力が弱い。プラスチックは紙よりも誘電率が低いためである。実験では短冊をホコリに見立てている。この実験結果からホコリだけを除電しても効果がないことがわかる。被付着物(実験ではプラスチック板)が除電されていないと付着する。

図5-94アルミ箔とプラスチックフィルムの短冊での実験

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除電方法

製品や部品にホコリが付着しないようにするためには、製品や部品を除電し、空気中を浮遊するホコリも除電しなければならない。ホコリ付着の静電気現象について述べたとおり、製品や部品が帯電しているのかしていないのか、導体なのか絶縁体なのかによってクーロン力が影響する範囲が異なる。つまり除電方法の着眼点が異なる。以下に製品や部品の除電とホコリの除電の2つに分けて説明する。

製品や部品の除電

  • 製品や部品が導体であるならば接地して、帯電している電荷を大地に逃がすようにする。導体でも接地できないものや、プラスチックなど絶縁体でできているものは、除電器で除電する必要がある。
  • ホコリ付着の静電気現象で述べたとおり製品や部品が帯電していない場合は、ホコリに働くクーロン力が重力より大きくなる範囲は狭い。つまりホコリが付着する力が働く範囲は製品や部品の近傍しかない。除電対象は製品や部品とその近傍のホコリだけになる。
  • 加工や搬送で帯電しているならば、すぐに除電できるよう除電器が生成するイオン量は多いほうが良い。イオン量の多少は除電時間の長短で比較できる。
    除電器は製品や部品の大きさや形状に合わせて、バータイプ、ブロアタイプ、スポットタイプの除電器を使い分ける。風で吹き飛ぶような小さなものや、風が当たると変形してしまうものでない限り、イオン搬送は気流搬送を行う方がよい。エアの力で除塵の効果も得られる。

ホコリの除電

  • 空気中を浮遊しているホコリの除電は、広範囲を除電する必要があるためブロアタイプやバータイプの除電器を用いる。落下したホコリを巻き上げないためにも風速には十分注意する必要がある。
  • イオンを電界搬送するタイプの除電器ではホコリが帯電してしまい、ホコリは製品や部品に付着してしまう可能性がある。ホコリが帯電するのは、「加工クズが除去できない」図5-79で説明したモデルと同様である。電界搬送タイプの除電器を使用するときは、その動作周波数に注意が必要である。

ホコリがイオンで帯電するモデル

除電器で生成したイオンによって帯電したホコリの挙動について考える。除電器に近づいたホコリは除電器によって、そのホコリが持つことができる最大の電荷を受け取るとする。ホコリを直径R[μm] の球体に近似して、空気中で球体が持つことができる最大の電荷Qm[C]を図5-96に示す。

図5-96空気中で球体が持つことができる最大の電荷

除電器が形成している電界強度を1000V/mとすると、ホコリが受ける力は図5-97のようになる。

図5-97ホコリが受ける力

ホコリはクーロン力で加速し除電対象に向かっていくが、空気抵抗があるのですぐに最終速度νに達する。最終速度νはストークスの式と呼ばれる式(5-15)で求めることができる。

ν=1/3πRu f(5-15)

μは空気の粘性係数(1.8×10-6Pa・sec)である。

図5-98ホコリの最終速度ν

図5-98 から1mm 前後の球体は除電器によって帯電し1m/sec程度の速度になる。これは1Hz 以下の低い動作周波数の除電器では、1mm前後のホコリを数mも飛ばしてしまうことを示す。動作周波数はできるだけ高くしてイオンは気流搬送を用いるほうがよい。エアが使用できない場合など電界搬送の除電器を用いる場合は動作周波数を高くする。電界搬送の効果は下がるがダウンフローなど空調の気流を利用して除電を行う。
その他、除電器を使用する場合の注意点として2点あげる。

保管庫で除電器を使用する場合

部品庫等の密閉空間でホコリの付着を防ぐため、長期間除電器を使用する場合は除電器が発生するオゾンに注意が必要である。除電器の中にはオゾンの発生量が多いものがある。保管部品がオゾンに対して弱いプラスチックやゴムであるとオゾンで劣化する。保管部品がオゾンに対して強くても保管している棚や容器の塗装やジグがオゾンに対して弱いものがあると劣化して、その劣化物の一部が製品や部品に付着してしまうことを見落としがちである。

除電器を複数使用する場合

除電器を複数使うときは注意を要する。お互いの除電器の動作周波数が完全に一致していることはなく微妙にずれている。動作周波数を高くしてもお互いの周波数差のビートが発生する。ビートが出ると図5-99のように、イオンを生成する極性が完全に一致している期間と、逆極性のイオンを生成している期間が長い周期で繰返し起きる。このような場合は除電器の動作周波数を異なる値に設定する。例えば2台の除電器をそれぞれ20Hzと30Hzの動作周波数に設定するとビートは10Hzで発生する。ビートの周波数を10Hz以上にすることで、ホコリを電界搬送してしまう現象を弱めることができる。

図5-99複数の除電器を使用した場合の注意

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対策例

部品や製品の除電にはイオンを気流搬送する除電器を用いる。その形状は部品や製品にあわせて選定する。小さい部品や狭い範囲など極所的な除電にはスポットタイプの除電器を用いて(図5-100)、ホコリの除去と兼用するとよい。大きい部品など広範囲の除電には、バータイプの除電器を用いる(図5-101)。セル生産の作業台(屋台)など、エア供給が困難な場所にはブロアタイプを用いる(図5-102)。

図5-100スポットタイプ除電器を用いた対策例

図5-101バータイプ除電器を用いた対策例

図5-102ブロアタイプ除電器を用いた対策例

空気中を浮遊しているホコリの除電には広範囲に除電できるバータイプの除電器が適している(図5-103)。広い空間を除電するために高い位置に取り付け高範囲に除電する。天井など高い位置に取り付けるとメンテンスを行うことが困難になる。電極の汚れに対する保護構造を搭載している除電器を選ぶと頻繁なメンテナンスが不要になる。また動作周波数調整やイオンバランス調整が遠隔操作できる機能があると除電器の導入時の調整が容易に行える。

図5-103バータイプの除電器を使用した広範囲除電の例

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