電子回路基板が静電破壊している

トラブル内容

セル生産の工程では電子部品や電子回路基板に作業者が直接触れたり、帯電した作業者が近づいたりする。そのため静電気放電による静電破壊が発生しやすい。セル生産の工程では静電気対策として導電性材料の机やパイプでセルが構成されている。また作業者もリストストラップなどで接地されている。このように静電気対策がされているにもかかわらず電子回路基板が静電破壊している場合がある。

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静電気の発生と帯電

作業者が歩くとき靴と床との摩擦帯電や剥離帯電が発生する。また作業者が椅子から立ち上がるとき椅子の表面と衣服との剥離帯電が発生する。このように人が何か動作をすると必ず静電気が発生する。
帯電体(帯電した作業者)が電子部品や電子回路基板に触れて静電気放電が発生することはよく理解されている。ここでは静電誘導による帯電について解説する。図5-104のように、帯電体(帯電した作業者)が導体(電子部品や電子回路基板)に近づくと静電誘導によって導体の表面に誘導電荷が表われる。この誘導電荷が接地電位などに放電するときに静電破壊が起きる。

図 5-104 誘導電荷による放電モデル

対象物が導体ではなく絶縁体ではこの現象が表われない。図5-105に示したように帯電体が絶縁体に近づくと絶縁体内部では静電誘導によって分極が発生する。絶縁体表面には分極電荷が表われるが絶縁体であるため電荷の移動はほとんどなく放電は起きない。

図 5-105 絶縁体に帯電体が近づいて分極するモデル

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静電誘導の静電気現象

帯電体が接地していない導体に近づくと静電誘導によって導体表面に誘導電荷が表れる。接地と導体との間の静電容量に応じて導体の電位が上昇する。等価回路で表わしたものが図5-106である。VCは帯電体(帯電した作業者)の電位、Vdは電子回路基板の電位、CSは作業者と電子回路基板との間の静電容量、Cdは電子回路基板とトレイなど接地との静電容量である。

図 5-106 帯電体が近づいて電位が上昇する導体のモデル

基板が接地した導電性トレイに収納されていても、トレイと基板との電気的な接続が不十分である場合、基板の電位が上昇しトレイの間で放電が発生する。放電が発生する最低の電圧は(平等電界であると仮定して)パッシェンの法則から350Vである。そのときの電子回路基板と導電性トレイとの隙間は約10μmである。図5-107に電子回路基板とトレイとの放電のモデル、図5-108に大気中でのパッシェンカーブを示す。

図 5-107 電子回路基板とトレイとの放電のモデル 図 5-108 大気中でのパッシェンカーブ

導電性トレイに入れた電子回路基板に帯電した作業者が近づいたときに上昇する電子回路基板の電位を計算する。電子回路基板をトレイに入れたとき、電気的接続が不十分で20pFの静電容量を持っているとする。そこに10kVに帯電した作業者が近づき、電子回路基板と作業者の間の静電容量が1pFになるとする。電子回路基板の電位を計算すると約500Vになる。これは電子回路基 板とトレイの間で放電が発生しうる電位になっている。図5-109に帯電した作業者と接地していない電子回路基板のモデルを示す。

図 5-109 帯電した作業者と接地していない電子回路基板のモデル

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除電方法

電子回路基板を確実に接地する必要がある。搬送トレイの形状を工夫し、電子回路基板のパターンがトレイに確実に当たるようにする。電子回路基板と搬送トレイなどのジグの寸法公差や電子回路基板のソリによって接地されない場合がある。これらを考慮して設計を行う必要がある。
接地していない電子回路基板の静電誘導を防止する方法として電界遮蔽を用いる方法がある。図5-110のように電子回路基板を金属や導電性樹脂でできた箱に収納しフタをすると電子回路基板には静電誘導が発生しない。作業者がリストストラップをはずしてセル屋台を離れるときは、リストストラップをはずす前に導電性の保管容器で電子回路基板を包み込む。また保管庫を開けるときはリストストラップを接続してから保管容器を開ける。

図 5-110 電界遮蔽の例

保管容器が大掛かりになったり、作業効率が著しく低下したりする場合は除電器を用いて作業者を除電する必要がある。作業者は移動中に床や衣服との摩擦で帯電する。その帯電した作業者はセル作業台でリストストラップをつけるため電子回路基板に近づく。
帯電した作業者がセル作業台に近づいて、電子回路基板の電位が上昇する前に除電する必要がある。したがって遠い距離でも速く除電できる必要があるためイオン搬送は気流搬送がよい。また除電範囲も広いので、ブロアタイプまたはバータイプの除電器を用いる。
セル作業台では遠い距離だけでなく除電器の近くにも除電対象物は存在する。イオンバランスの空間分布が小さいものがよい。
作業者の移動速度に合わせて動作周波数を調整する必要がある。1Hz以下の低い動作周波数では作業者を帯電させてしまう。動作周波数が高すぎるとイオンの再結合が多く遠い距離では除電時間が長くなる。適切な動作周波数となるように調整できる機能があったほうがよい。

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対策例

作業者の動線に合わせてバータイプ除電器を天井に取り付ける。イオンバランスの空間分布が小さく、動作周波数の調整ができるAC タイプを使用する。動作周波数は10Hz以上として、ダウンフローなどのエアを用いてイオン搬送を行う。天井に取り付けるためメンテナンス性を考慮すると、電極の汚れに対する保護構造を搭載している除電器を選ぶとよい。

バータイプ除電器を使用した作業者の除電

セル作業台に取り付ける場合はブロアタイプを用いる。除電器は作業者が近づいてくる方向に取り付ける。作業者がリストストラップをアース端子に接続したら作業者の除電は不要になるので除電器をOFF にするかブロアの風量を弱くする。ブロアタイプの除電器は作業者に直接風を当てることになるので作業環境を考慮する必要がある。

ブロアタイプ除電器の使用例

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