静電気放電によるショックや不快感

トラブル内容

ゴムシートは原料シートに横延伸や縦延伸を行うことで整形し機能性を与える。図5-157にゴムシートの延伸のイメージを示す。延伸のため原料シートはローラーに押し伸ばされ密着する。搬送中はシートにテンションをかけるのでシートは搬送ローラーに押し付けられ密着する。シートが最後に巻き取られるとき、帯電したシートを巻き取っていくのでロールには電荷が蓄積される。ロールを交換する作業時にロールに蓄積した電荷が放電し作業者が電撃を受ける。

図 5-157 ゴムシートの延伸のイメージ

プラスチックの射出成形でも同様のトラブルがある。自動成形機の場合、成形された成形品は金型から自動的に排出される。図5-158にプラスチックの射出成形のイメージを示す。排出された成形品は製品をいれておく容器に溜められる。容器が成形品でいっぱいになると容器を交換する。成形品は帯電しており容器には電荷が蓄積され、交換作業時に蓄積した電荷が放電し作業者が電撃を受ける。

図 5-158 射出成形の金型のイメージ

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静電気の発生と帯電

搬送ローラーとゴムシートは物質が異なる。異なる物質が接触と剥離を繰返して帯電する。搬送されるシートにかかるテンションが大きいほどローラーに強く押し付けられるので帯電量が多い。また延伸工程ではシート速度とローラーの周速が異なるのでシートとローラーに摩擦帯電も加わりさらに帯電量が大きくなる。
プラスチックの射出成形では、金型である金属とプラスチック(樹脂)の異なる物質が接触し帯電した状態で金型から排出される(射出成形での帯電については「 部品が付着して離れない」を参照のこと)。射出成形はプラスチックに圧力をかけて金型に密着させるため帯電量が大きい。また高速成形機のように成形品と金型との摩擦スピードが速くなると帯電量はさらに大きくなる。

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電荷が蓄積する静電気現象

ゴムシートの巻き取りでは、巻き取られたシートが少ない(ロールが小さい)ときはロールに蓄積されている電荷は少ない。帯電したシートが次々に送られロールが大きくなると蓄積される電荷が大きくなる。ロールが小さいときは電撃を受けないがロールが大きくなると電撃を受ける。図5-159にシート巻き取りでの帯電量のイメージを示す。

図 5-159 シート巻き取りでの帯電量のイメージ

プラスチックの射出成形では、帯電した成形品が容器に溜まっていく。ひとつの成形品の持つエネルギーは小さいが、大量に集まると大きなエネルギーとなり放電による電撃を受ける。図5-160に容器に溜めたプラスチック部品の帯電量のイメージを示す。

図 5-160 容器に溜めたプラスチック部品の帯電量のイメージ

電荷の蓄積と静電気放電の強さについて考える。半径rの導体球が電荷Qを持っているとする。導体球が持つ静電エネルギーUは式(5-21)で表わされる。ε0は真空の誘電率である。

(5-21)

電荷Qを持った導体球の表面の電界強度Eは式(5-22)で表わされる。

(5-22)

大気圧の空気中では導体球表面の電界強度が約3MV/mをこえると空気が電離してしまうので、導体球が持つことができる電荷には上限がある。導体球の半径r を3.3mmとすると導体球が持つことができる最大の電荷Qm は3.6×10-9[C]である。このときの静電エネルギーUは1.5×10-5[J]である。この値は非常に小さく放電が起きたとしても人は感じ取ることができない。しかし帯電した導体球が100個集まると静電エネルギーは1.5×10-3[J]となり強い電撃を受けることになる。表5-1に2007年の静電気安全指針より抜粋したデータより人体の帯電電位と静電容量から静電エネルギーを求めた電撃の強さを示す。

表 5-1 静電エネルギーと電撃の強さ ( 労働安全衛生総合研究所技術指 針、静電気安全指針 2007、表 6-1)

コラム

電荷の蓄積による容器の電圧上昇を測定した実験例を示す。半径3.3mmのプラスチック球を帯電させ、図5-161の右図に示す簡易ファラデーケージに10個ずつ投入し、金属容器の電圧を表面電位計で測定する。プラスチック球の帯電方法は、プラスチック容器にプラスチック球を入れ上下に良く振って帯電させた。

図 5-161 簡易ファラデーケージの実験の様子( 左図) 使用した金属容器とプラスチック球( 右図)

表面電位計の測定結果を図5-162に示す。投入するプラスチック球の個数に比例して、電圧が上昇していくのがわかる。容器と大地の静電容量の変化はないとすると、投入したプラスチック球の個数とその電荷の総和は比例している。この結果から求めた導体球1個あたりの電荷量は5×10-10Cである。

図 5-162 投入したプラスチック球の数と測定電位

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除電方法

帯電量が小さいうちに除電をしなければならない。帯電した部品が蓄積してから除電を開始すると除電に時間がかかってしまう。除電器は製品、部品、製造工程にあった除電器を選ぶ。
電荷の蓄積が問題となる場合、帯電している極性がプラスかマイナスのどちらかの片極性になっている。容量(コンデンサ)結合タイプ除電器はこの用途には向かない。図5-163に容量(コンデンサ)結合タイプ除電器を示す。容量(コンデンサ)結合タイプ除電器は電極と高電圧電源の間にコンデンサが直列に入っており、簡単な構成で大まかにイオンバランスをゼロにすることができる。しかし片極性のイオンを放出し続けることがその構成上できない。例えばプラスに帯電しているものを除電すると、マイナスイオンが優先的に帯電物に吸収される。コンデンサは電荷をためて電極に与える電圧にDCバイアスを加える働きをする。この結果、電極の電圧はプラス方向にオフセットする。これは除電に必要としているマイナスイオン量を減少させる方向である。

図 5-163 容量(コンデンサ)結合タイプ除電器のモデル

静電気放電によって電撃を受ける事例において、除電器には高いイオンバランス性能は要求されない。放電による電撃を気にするのであればパッシェンの法則より300V以下であればよい。製品や部品が大きく静電容量が大きい場合は電圧が低くても電荷量は多くなる。この場合には放電はしないが接触したときに電撃を受ける場合がある。極端な例ではAC100Vのコンセントに触れると感電して非常に危険である。これは電圧は低いが容量が大きいためである。機器の安全性について規定したJISC6950-1ではDC60Vを超えない部分については感電の危険に関する試験を行わないとある。この値を参考にするとイオンバランスは60V以下にする必要がある。

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対策例

シートの巻き取りでは、ロールにシートを巻き取る直前でバータイプ除電器を使用して除電する。シートの搬送速度が速く1台では十分に除電できない場合は複数台用いる。図5-164にロール巻き取り部での除電の例を示す。

図 5-164 ロール巻き取り部での除電の例

プラスチックの射出成形では、金型が開いたときに成形品をスポットタイプで狙って除電する。金型は電界を遮蔽するのでイオンを電界搬送する除電器は使用できない(「部品が付着して離れない」の除電方法を参照)、したがってイオンを気流搬送する除電器を用いる。図5-165にプラスチック成形品の排出での除電の例を示す。

図 5-165 プラスチック成形品の排出での除電の例

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