部品が付着して離れない

トラブル内容

射出成形は高温で溶かした樹脂を金型内に高圧力で流しこむ。金型内で樹脂が冷却し固まってから取り出す成形方法である。金型の転写性をよくするために高い圧力で樹脂を金型に密着させる。金型から成形品を取り出すときには突き出しピンで成形品を突くことで金型から離れる。しかし成形品が金型から離れずに金型内に残る場合がある。成形品が金型内に残ると次の成形のときに金型が十分に締まらず、成形不良となったり金型を破損させたりする。樹脂成形品は年々軽量化や薄肉化の傾向にあり、わずかな帯電によって金型内に残りやすくなっている。射出成形の工程の概要を図5-2に示す。

射出成形機のイメージ図

図5-2 射出成形の工程の概要

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静電気の発生と帯電の特徴

金型である金属と成形品である樹脂の異なる物質が接触することで電荷が移動し帯電(接触帯電)する。射出成形は金型に圧力をかけて樹脂を密着させるため帯電量が多い。図5-3に金型と成形品との接触帯電のモデルを示す。

図5-3 金型と成形品との接触帯電のモデル

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金型と成形品の静電気現象

静電気によるトラブルが発生するのは突き出しの工程である。金型は導体であり、接地されていれば帯電することはないが成形品は帯電したままである。帯電している成形品は影像力によって金型に貼り付く。したがって突き出しても成形品が金型内に残る。図5-4に成形品が金型に残るモデルを示す。

図5-4 成形部品が金型に残るモデル

コラム

成形後に帯電したまま成形品を放置すると成形品表面にホコリが付着する。 しばらく時間が経過すると図5-5のように特徴的な模様が表れる。これをスタティックマークという。外装ケースであればホコリを拭き取ることができるが、レンズ等の光学部品だと性能に影響が出る場合がある。

図5-5 成形品のスタティックマークの例

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除電方法

図5-6のように金型に成形品が貼り付くと除電が困難である。成形品の電荷と金型の誘導電荷が引き付けあうためイオンは成形品と金型の間の電荷を中和できない。

図5-6 密着した成形品と金型の誘導電荷

除電が容易にできるのは図5-7のように成形品を突き出した瞬間である。 突き出して成形品と金型が分離しているとイオンが金型と成形品の間に入り除電することができる。

図5-7 成形品を突き出した状態

図5-8のように突き出しピンの移動量を変化させることができると、イオンが成形品と金型の間に入りやすくなり除電の効果が高まる。

イオンを電界搬送している除電器は金型内の除電に使用できない。図5-9に示したように金型内では電界が遮蔽される。除電器が発生した電界は金型内部に影響を与えることができない。したがって金型内にイオンを送り込むことができない。

図5-9 金型内部の電界イメージ

金型内の除電には図5-10のようにイオンを気流搬送する除電器を用いる。 金型は高温になるので除電器を金型から離す必要がある。したがって除電器は生成するイオン量が多いだけではなく、より遠くまで搬送できるものを用いる。 すなわち距離を離したときに除電時間が短い除電器を選定する。除電するためにエアを金型に吹きかけているので金型が冷却されてしまう。金型の温度管理に影響を与えないように消費エア流量はできるだけ少ないほうがよい。

イオンバランスも重要なパラメータである。図5-11に示したように成形品の電位Vが同じでも金型からの距離によって成形品に帯電している電荷Qは異なる。距離が近ければ成形品の静電容量Cは大きくなり電荷Qは大きい。 距離が遠ければ成形品の静電容量Cは小さくなり電荷Q は小さい。この関係は式(5-1)のとおりである。

図5-11 金型からの距離と電圧の関係

金型内の限られた空間の中で突き出し量は限られる。成形品と金型の距離が大きくないので静電容量Cは大きい。成形品に帯電している電荷Q を小さくするために除電器は除電対象をより低い電位にする能力が求められる。すなわちイオンバランスがよい除電器を選ぶ必要がある。式(5-2)のとおり帯電した成形品と金型に働くクーロン力は電圧ではなく電荷量で決まる。成形品が持つ電荷を中和しなければトラブルの解消はできない。

(5-2)

この式でF:クーロン力、Q:帯電電荷、ε0:真空の誘電率、d:成型品と金型の距離である。

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対策例

除電器のイオン搬送は電界搬送ではなく気流搬送にする。図5-12はバータイプ除電器を使用した例であるが、スポットタイプ除電器を使用して成形品と金型のスキマを狙うのもよい。エアをあてると金型の温度を下げてしまうので供給エア量はできるだけ少なくする。

図5-12 樹脂成形機での除電器設置例

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