ロール搬送でシートを巻き込む

トラブル内容

フィルムや樹脂シート(以降シート)の製造ではロール搬送を用いる。シートにはテンションがかかっており、シートはローラーに押し付けられて密着している。絶縁体であるシートを金属のローラーで搬送すると静電気が発生し、その静電気によるクーロン力でたるみや巻き込みなどのトラブルが発生する。

ロール搬送でシートを巻き込むイメージ図

シートがローラーに巻き込まれるまでの過程を図5-14に示す

(a)
正常に搬送されている。
(b)
ローラーから離れたシートは帯電してローラーに引き寄せられる。この時点でたるみが生じている。
(c)
たるみが大きくなるとローラーから離れたシートがさらにローラーに引き寄せられる。ローラーに巻きついているシートと送り出したシートが接触する
(d)
ローラーがシートを巻き込み、送り出したシートが逆送する。

図 5-14 シートがローラーに巻き込まれる過程

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静電気の発生と帯電の特徴

ロール搬送での静電気発生の要因となるのはシートと材質が異なる搬送ローラーとの接触である。搬送されるシートにはテンションがかかっており、これが大きいほどローラーに強く押し付けられるため帯電量が大きくなる。また搬送ローラーはシートとスリップ(シート速度とローラーの周速が異なること)していることが多いので摩擦帯電も発生している。

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ローラーとシートとの静電気現象

ローラーとシートは接触帯電によってお互いに逆の極性に帯電している。したがってローラーからシートが離れても図5-15のようにローラーに引き付けられる力が働く。

図 5-15 シートに作用するクーロン力

この力はシートとローラーを無限平行平板で近似すると式(5-3)のようになる。

(5-3)

fは単位面積あたりの力[N/m2]、σは単位面積あたりの電荷量[C/m2]である。力の大きさはローラーとシートの距離によらず、電荷密度すなわち帯電量で決まる。ロールからシートが離れてもクーロン力の変化はない。
シートとローラーが貼り付くと図5-16のようにシートのたるみが発生する。ローラーには帯電したシートに誘導された電荷が現れる。ローラーとシートが接している部分では、シートの帯電電荷はローラーの誘導電荷とペアになり(図中点線部分)見かけ上の電荷はゼロになる。シートは同極性に帯電しているがたるんだシートが近づいても反発力は働かない。したがって、たるんだシートがローラーに貼り付き、シートはローラーに巻き込まれる。

図 5-16 シートのたるみと巻き込み

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除電方法

ローラーとシートが密着している部分にはイオンが入り込めないために除電が困難である。したがって、図5-17のようにローラーとシートが離れた瞬間を狙う必要がある。

図 5-17 除電器の設置場所

除電器からローラーとシートが離れる場所までの距離が近ければ(概ね100mm以内)イオンの搬送方式にはこだわらなくても良い。近づけることができないようであれば気流搬送方式を用いる。
図5-17のような配置ができないようであれば、図5-18のように反対面から行うことも可能である。

図 5-18 除電器の設置場所( 帯電面の裏側)

シートの厚みが1mm以下程度であれば、帯電している面の反対面にイオンをあてても効果がある。帯電している電荷と除電器から搬送されたイオンはシートの表裏で引き合い対をなす(双極帯電)。シートやフィルムは絶縁体であるが抵抗値は無限大ではない。わずかに電気を通すため双極帯電の対は時間が経つと中和する。

図5-17でも図5-18でもどちらの場合もイオンバランスは重要なパラメータとなる。ローラーからシートが離れるときのシートの電位の様子を図5-19に示す。シートとローラーが接触しているときは電位は0Vである。ローラーからシートが離れるにつれ電位が上昇していく。
シートとローラーが離れた直後はシートの電位はそれほど高くないので除電器はこの低い電位を低下させなければならない。イオンバランスの良い除電器ならばローラーから離れた直後で除電できる。イオンバランスの悪い除電器はローラーから遠ざけて設置しなければならない。しかしローラーから除電器を遠ざけるほど搬送トラブルは発生しやすくなる。

図 5-19 ローラーとシートが離れるときのシートの電位と除電器の設置位

もしシートの電位が高くない場所にイオンバランスの悪い除電器を設置すると逆効果になる。図5-20に示したようにイオンバランスの悪い除電器をローラーの近くに設置するとローラーでは除電器が生成したイオンに誘導されて表面に誘導電荷が集まる。シートに付着したイオンと誘導電荷はお互いに引き合う方向のクーロン力が働くのでシートはローラーに貼り付く。

図 5-20 イオンバランスの悪い除電器でシートが貼り付く例

DCタイプの除電器を使用するとシートが貼り付く現象はさらに顕著になる。DCタイプの除電器は、プラスイオンを出す電極とマイナスイオンを出す電極が異なる。たとえ除電器全体でのイオンバランスはよくても電極の近くではイオンバランスの分布があり、図5-21に示したようにシートには電荷の分布ができる。シートとローラーには引き合う方向の力が働いて貼り付く。DCタイプの除電器を用いる場合はローラーから遠ざけて設置し、イオンを気流搬送する必要がある。シートが停止している時間が長い工程ではブロアタイプの除電器を選ぶことができる。

図 5-21 DC タイプ除電器とシートの電荷分布

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対策例

除電器のイオン搬送は電界搬送でも気流搬送でもどちらでもよい。イラストでは表裏の両方に除電器を配置しているが、シートが薄ければ片方向からでもよい。シートの搬送速度が速いときはイオンの生成量が多いもの、すなわち除電時間の短いものを選定する。イオン量が不足する場合は複数台を用いる。

ロール搬送での除電器の設置例

除電器の動作周波数にも注意が必要である。除電器の除電エリアW[m]と動作周波数f[Hz]、シートの搬送速度v[m/sec]は式(5-4)の関係になるように選ぶのが望ましい。[※]

(5-4)

除電エリアWは除電器によって異なるが、概ね設置距離(シートと除電器の距離)と同じと考えてよい。

(例)

設置距離50mmで除電器を使用する場合は、除電エリアは50mmと考える。動作周波数が100Hzとして、これを式(5-4)に代入するとシートの速度は50mm×100Hz=5000mm/secまで対応できることになる。分速で表すと300m/minである。
除電器はローラーとシートが離れる瞬間の場所にできるだけ近づけて設置する。そのためイオンバランスのよい除電器が必要である。またイオンバランス調整に用いるプレートモニタは、電流検出タイプのプレートモニタが良い。

参考文献:長崎誠三, 平林眞, 二元合金状態図集, アグネ技術センター,p350-353(2008)

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