ユーザー視点でみた3Dプリンタニーズの拡大
設計者とデザイナーで異なるニーズ
デザインの確認という用途で最初の活路を見出した3Dプリンタですが、すぐに設計者も、試作の有効性に気づきました。デザインは外観や大きさを重視して検証しますが、設計は内部の構造や製造時の組立性まで把握することが求められます。設計者には、3Dプリンタが内部構造まで造形できるのが大きな助けとなったのです。
デザイナーと設計者とで、視点や求めるものが違っていましたが、3Dプリンタを使うことでお互いのニーズをよく認識し、新たな課題に取り組むきっかけにもなりました。
活用事例
組み付け確認

設計で重要な要素が組立性です。性能的に優れた商品でも、組立性に優れていなければ、歩留りが悪化し、タクトタイムが長くなり、生産コストが増大する、という悪循環を起こします。早い段階で組立性を確認し、設計に反映することが重要です。
機能確認

3D CADの普及に伴いコンピュータ上での事前検証も増えましたが、気体や流体の機能検証は難しく、なかなか正確なデータは得られません。機能の検証に模型を使って実際に稼働させたり、ミニチュアモデルで簡易試験を行ったりすることで、手戻りを減らすことができます。
金型検証

金型の製作にはコストも時間もかかります。修正が必要になると、さらに余分なコストと工期が発生します。場合によっては製造遅れや、発売時期を逃したことによる機会損失などのリスクも伴います。金型の製作を依頼するときに造形モデルを使って説明することで、製作ミスや手直しのリスクが減らせます。
また、金型製作と並行して加工用の治具を検証しておけば、金型と治具の製作を同時に進められます。生産に必要なツール類の完成時期を合わせることで、ラインの立ち上げを早めることにもつながります。
冶具製作

難易度の高い機械加工や組立作業が必要な場合は、部品や工具の形状や作業位置が事前に検討できます。治具を用意しておくことで、現場に移管した後のトラブルを減らして、生産ラインを早く立ち上げられます。治具の修正や工程の見直しなどの余分な作業も発生しません。
設計者が求める精度とのギャップ
導入当初の3Dプリンタに問題がなかったわけではありません。組立性を評価したい設計者にとっては、熱溶解方式の3Dプリンタの精度は十分とはいえませんでした。当時の素材や技術では、細かな組み付けがまだ正確には再現できなかったのです。