東急建設株式会社

東急建設株式会社 建築事業本部 執行役員 原価企画統括部長 寺嶋 浩氏、同本部 事業統括部 原価管理専門部長 河合 信明氏、同本部 原価企画統括部 見積部 グループリーダー 田中 敏浩氏、経営戦略本部 コーポ-レートデジタル推進部 企画グループグループリーダー 小和瀬 咲絵氏、同本部 同部 インフラ・セキュリティグループ 神矢 圭一氏、同本部同部 企画グループ 栗山 茜氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「東急建設ではKIを、案件選択の最適化、原価傾向分析、安全・品質分析などに使っていきます」

東急建設株式会社

東急建設株式会社は、東急グループの中で建築・土木を事業領域としている企業です。ヒカリエをはじめ渋谷駅前の再開発計画の施工でも、主導的な役割を果たしています。

年商(取扱高) 2580億円
従業員数 2624名
創業 1946年

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

KI活用の目的

東急建設ではKIをどのように活用していますか?

東急建設ではKIを、「案件選択の最適化」「原価傾向分析」「安全・品質分析」などに使っていきます。東急建設では昨年、今後10年の長期経営計画を発表しました。計画の中では、デジタル技術を競争優位の源泉と定めており、変化の激しい情報技術革新の潮流に取り残されないためには、蓄積されたさまざまなデータを分析しその結果を意思決定や判断に活かすデータドリブンな経営や事業運営が必須であると考えています。KIはそれを実現するための、重要なソフトウェアです。

用途1.「案件選択の最適化」

「案件選択の最適化」とは具体的には?

大きくは「数多ある案件の中で、自社の強みが本当に生きる案件に注力できる体制を確立する」ことを目指します。現在、東急建設では年間1000件近くの建築・土木の案件があります。うち見積書の提出に至るのが約6割、さらにその3割ほどが受注に至る、という流れです。建設業とは、一品一様の建築物を、多数の協力会社、何百人、何千人の人員を使い、数億から数百億円の費用をかけて作り上げる業態なので、見積書は、複雑かつ大がかりなものとなります。見積書を作るだけで、社内の人的資源が大量に必要になります。

この前提において、顧客満足と企業価値の両方を最大化するには、自社の強みが本当に生きる仕事に注力し、そこに限られた人的資源を投入できる状態が、理想の姿です。その理想を実現するためにデータ分析を駆使していきます。

社内には、これまで見積をおこなった案件に関する情報が、多量に蓄積されています。情報の内容は大きく分けて、建物の用途・規模・発注者・設計事務所・床面積・工期・競合会社・設計図書・予算などがあります。これら案件のうち、受注に至った案件(あるいは至らなかった案件)を、KIを使って分析し、その特徴量から自社の得意案件(あるいは不得意案件)の共通点、傾向を見いだします。この知見を元に、見積への社内資源の振り分けを最適化していきます。

用途2.「原価傾向分析」

「原価傾向分析」とは?

見積書を作るとき、原価の算出が重要になります。しかし建物の建設は数ヶ月、時には複数年の長期にわたる作業なので、その期間中、原価が変動することがあります。具体的には、外部環境の変化による材料費、労務費の高騰、施主側の要望による仕様変更、バリューエンジニアリングの提案による仕様変更などが原因となります。

この受注後の原価変動については、「○○のときはこうなる、××があるなら要注意」のように、すでに経験則が定着しています。この経験則に関して、データ分析を通じて検証し、確信を得たいと考えています。

また「○○のときはこうなる」というだけでなく、できれば「○○の数値が△△を超えると、高確率でそうなる」のように、閾値まで理解したい。経験則を精緻に裏付けしたい、という狙いがあります。

原価変動には「早めにわかれば手が打てる」という大原則があります。データ分析により、原価変動の兆候を素早く認識することを目指します。

用途3.「安全・品質分析」

「安全・品質分析」とは?

これらは今後、取り組んでいきたい分野です。基本的な流れとしては、先に述べた2つの分析と同じで、過去に安全面、品質面で好成績だった案件の情報、あるいはそうでなかった案件の情報を分析し、共通点、傾向、特徴量を抽出し、知見を得ます。

このように「過去事象の共通点、特徴量を知って、未来の改善につなげる」という方法論は、今後、さまざまな課題解決に応用可能だと考えています。

KI導入の経緯

KIを導入した経緯を教えてください。

(小和瀬氏) データ分析ツールの情報収集をしている中で、KIを知りました。当初は高収益企業であるキーエンスが作ったツールであることに関心を持ちつつも、導入するかどうかは一般的なBIツールや統計解析ツールなどの複数製品を比較したうえで、どの程度の優位性や投資対効果が見込めるか次第と考えていました。ですが、デモで実際の画面や操作性を見ることで、簡易な操作で高度な分析ができることに驚きを感じるとともに、同業他社での活用事例を聞くことで、自社の課題解決にも活かせるのでは、という期待を感じ始めていました。デモにはデータ分析に興味や関心を持っている社員が部門横断で十数名参加しましたが、同じ印象を持った参加者が多かったようです。

また、後でわかったことですが、インフラ・セキュリティグループの神矢は、このデモより、ずっと以前からKIに着目していたようでした。

(神矢氏) KIは、展示会で知りました。展示会に出展されていた多くのツールは「データアナリスト向けのための重厚長大なツール」か、あるいは「シンプルな計算ツール」が多かったのですが、KIは使いやすさと性能を兼備した希有な製品でした。私たちは統計やデータアナリストのプロを目指しておらず、分析方法の妥当性を理解できる一部の人間しか使いこなせない重厚なツールは向いていません。その点、KIのインターフェースは誰でも分析を始めやすいものでした。

また分析の基礎性能も重要です。展示企業の中には、少し突っ込んだ質問をすると「AIで処理します」のように安易に回答してくる所もありました。一方KIは、キーエンスが自社で使っているデータ分析システムを土台にした製品であり、分析結果から因果関係までをディスカッションすることが可能な点は特に秀でた点だと感じました。自社で使うならKIがよいと強く感じ、社内でも「是非導入したい」と意志を示しました。

(小和瀬氏) 今回のKI導入は「社内でのデータ分析人材の育成」も大きな目的の一つでした。しかしデータ分析を自在にこなせる人材は、座学で育成することは難しく、実際に手を動かしながらデータ分析の経験を積み重ねてもらうことが最も近道であると考えていました。ですので、弊社で使うツールは、ITリテラシーがそれほど高くない社員であっても「とりあえず触ってみよう」という気になれる親しみやすさがあり、統計学の専門的な知識が無くとも高度な分析ができるツールである必要があります。誰にでも使いこなせる親しみやすいユーザーインターフェースを持ち、簡易な操作で高度な分析ができるKIは、その点においても十分に要件を満たしていると評価しています。

こうしてKIの導入が決定し、現在に至っています。

これまで使ってみての評価

これまで使ってみてのKIへの評価をお願いします。

(田中氏) 使い始めて痛感するのは、データサイエンティストによる伴走サポートがあることの価値です。KIは、まずは分析してみるという「はじめの一歩」はすぐ踏み出せます。しかし一歩、二歩、踏み込むうちに、やはりツールの使い方でなく、「データ分析そのもの」の点で、つまづいてくる。あるいは思い込みにとらわれてしまう。これを乗り越えるには、データサイエンティストの支援が必要でした。それなしには、今も思い込みにとらわれたままだったでしょう。

(河合氏) KIは「答え合わせ」に役立つと感じています。私は長年、原価管理に携わってきました。その過程で多くの経験、勘が蓄積されました。ただ、個人的に勘の盲信は禁物だと思っています。自分の勘をKIで分析し、正しさを再確認できたこと、個人の勘を「組織で共有できる、根拠ある知見」に昇格させることができたことを、うれしく思っています。

(栗山氏) 私は今年度よりデータ分析の業務に携わっていますが、データ分析は、誰かの役に立てる気がするのです。そんな仕事はやりがいがあります。

先行ユーザーからのアドバイス

現在、KIの導入を検討している経営者に向けて、
先に導入している立場からアドバイスなどあればお聞かせください。

データ分析は、「準備を100%整えてから始める、というのはおそらく無理で、とにかく始めるしかない」と思っています。弊社でもKIを導入する際、少なからず反対論がありました。「社内にはたいしたデータもない。分析するには不十分だ」「本当に使えるのか」などの意見です。それら反対論は実は正しい。たしかにデータは現状、各部門に散在しています。これを解消すべく、いまデータを社内統一プラットフォームに格納するプロジェクトを展開中です。そして社内にデータ分析の素養がある人材はいません。そう考えると、導入したとして本当に使えるかどうか、その担保はありません。

しかし、それでもなお「すべて準備を整えてから始める」という手順では、事が始まることは永遠にない、そう感じます。そもそもデータの形式不備の問題は、結局、分析してみないことには、詳細の事情はわかりません。やるべきは、まずとにかく分析する、そしてデータの不備に気づき、それからその穴を埋める。このように、やりながら不備を埋める方式で前に進むのが良いと考えます。東急建設は、社内にデータ分析の文化と能力を根付かせることにより、より企業価値を高め、顧客に選ばれる建設会社でありつづけたいと考えています。キーエンスには、そうした弊社の取り組みを、優れた技術、製品、サポートを通じ、継続支援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。

東急建設株式会社

「東急建設ではKIを、案件選択の最適化、原価傾向分析、安全・品質分析などに使っていきます」

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