通信速度や接続台数(接続人数)
Wi-Fiの通信速度や接続台数(接続人数)の基礎知識に加え、速度低下の原因と対処法などについて解説します。
Wi-Fiの通信速度
Wi-Fiの通信速度は、『bps(ビーピーエス)』という単位で表します。bpsは、1秒あたりに転送されるデータ量を示し、『bit per second(ビット毎秒)』の略です。また、bpsの数字が大きい場合は、『kbps(キロビーピーエス)』『Mbps(メガビーピーエス)』『Gbps(ギガビーピーエス)』といった単位が用いられます。現在、Wi-Fiの速度を表す場合は『Gbps』が一般的で、数値が大きければ大きいほど送受信できるデータ量が増え、快適な通信環境だと言えます。
また、通信速度には、端末からインターネットへのデータ送信またはアップロードを示す『上り』と、インターネットからデータを端末で受信またはダウンロードする『下り』があり、上りと下りで通信速度が異なります。
通信速度の単位
1kbps | 1000bps |
1Mbps | 1000kbps |
1Gbps | 1000Mbps |
通信速度は理論値より実測値を重視
通信速度には、すべてが理想的な状態で最も速度が出る状態を示す『理論値』と、実際の使用環境で測定された『実測値』があります。Wi-Fiの場合は、壁や天井などの障害物や通信端末間の距離による影響、またアクセスが集中して混雑することで発生する『輻輳(ふくそう)』によって通信速度が低下します。
そのため、理論値よりも実測値が重要です。Wi-Fiルーターなどのパッケージに『スループット』『実効スループット』と記載されることもありますが、これが実際に利用する環境を想定した通信速度のことです。製品を選定する際は、この理論値で選びましょう。
たとえば、『Wi-Fiの規格について』でも説明していますが、Wi-Fi6/Wi-Fi6Eの最大通信速度は、理論値で9.6Gbpsです。実測値は、大元になる回線速度、またWi-Fiルーターの通信を行うチャンネル幅(帯域)によっても変わりますが、Wi-Fi6/Wi-Fi6Eでは1Gbps程度となります。正確な実測値を知りたい場合は、ウェブサービスなどを使えば簡単に計測できます。
世代 | 第1世代 | 第2世代 | 第3世代 | 第4世代 | 第5世代 | 第6世代 | |||||||||||||||||
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世代 | 第1世代 | 名称 | - | 規格名 | IEEE 802.11 | 最大通信速度 (理論値) |
2Mbps | ||||||||||||||||
世代 | 第2世代 | 名称 | 名称 | - | - | - | - | Wi-Fi4 | Wi-Fi5 | Wi-Fi6 | Wi-Fi6E | 規格名 | IEEE 802.11a | 最大通信速度 (理論値) |
54Mbps | 世代 | 第2世代 | 名称 | - | 規格名 | IEEE 802.11b | 最大通信速度 (理論値) |
11Mbps |
世代 | 第3世代 | 名称 | - | 規格名 | 規格名 | IEEE 802.11 | IEEE 802.11a | IEEE 802.11b | IEEE 802.11g | IEEE 802.11n | IEEE 802.11ac | IEEE 802.11ax | IEEE 802.11ax | 最大通信速度 (理論値) |
54Mbps | ||||||||
世代 | 第4世代 | 名称 | Wi-Fi4 | 規格名 | IEEE 802.11n | 最大通信速度 (理論値) |
最大通信速度 (理論値) |
2Mbps | 54Mbps | 11Mbps | 54Mbps | 600Mbps | 6.9Gbps | 9.6Gbps | 9.6Gbps | ||||||||
世代 | 第5世代 | 名称 | Wi-Fi5 | 規格名 | IEEE 802.11ac | 最大通信速度 (理論値) |
6.9Gbps | ||||||||||||||||
世代 | 第6世代 | 名称 | Wi-Fi6 | 規格名 | IEEE 802.11ax | 最大通信速度 (理論値) |
9.6Gbps | 世代 | 第6世代 | 名称 | Wi-Fi6E | 規格名 | IEEE 802.11ax | 最大通信速度 (理論値) |
9.6Gbps |
具体的に工場や生産ラインで必要な通信速度は、使用用途によって異なりますが、通常使用であれば100Mbpsが目安になります。100Mbps前後の通信速度が出ていれば、たとえばCADデータのアップロード・ダウンロード、またセンサからの情報収集、その他オンライン会議やメール送受信など、一般的な業務利用に支障が出ないでしょう。
Wi-Fiの通信速度が低下する原因
Wi-Fiを利用していると、実測値(実効スループット)を大幅に下まわり、通信速度が遅くなる場合があります。その原因として、以下のような理由が挙げられます。
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アクセスが集中して混雑している
1つの回線にアクセスが集中すると、通信速度が低下する場合があります。 -
接続している端末のスペックに問題がある
Wi-Fiルーターやアクセスポイントなどが最新でも、接続しているパソコンなど端末側のスペックが古い、またアップデートしていないなどの場合、通信速度が低下する場合があります。 -
壁や天井などの障害物がある、アクセスポイントからの距離が遠い
Wi-Fiは、ルーターやアクセスポイントからの距離が離れると、電波が届かない、または届きにくくなって通信速度が低下する場合があります。また、障害物によって電波が届かなくなるケースもあります。 -
既存電波と電波干渉や電波混雑が発生している
工場や生産ラインには、電波やノイズを発生する機器があります。これらにより電波干渉や電波混雑が起こってしまうことがあります。
上記は、あくまで代表的な原因となり、この他にも通信速度が低下する原因はさまざまです。そのためにWi-Fiを導入する際には、Wi-Fi機器のスペックや設置方法、現地調査などが重要です。また、運用時に電波状況を監視・改善することも大切です。選定や運用のポイントについては、以下のページで詳しく解説しています。
Wi-Fiの通信速度が低下した場合の対処法
Wi-Fiの速度低下を防ぐには、アクセス集中や障害物の配置などを考慮し、適切な位置にアクセスポイントを設置したり、ネットワークを構成したりすることが大切です。その他、Wi-Fiの通信速度低下を防ぐ対処法をまとめてみました。
IPv6(IPoE)対応製品を選ぶ
インターネットの通信方式には、従来のIPv4 PPPoEの他、新しいIPv6 IPoEがあります。詳細な説明は省きますが、Wi-Fiルーターやアクセスポイントを選定する際には、通信速度の速いIPv6(IPoE)対応製品を選びましょう。
メッシュWi-Fi/無線対応製品を選ぶ
アクセス集中や障害物などに強いネットワーク方式が『メッシュWi-Fi』です。『安定性の高い無線LAN(Wi-Fi)構築のポイント』で説明していますが、メッシュWi-Fiは、網の目状(メッシュ状)に無線LANネットワークを張り巡らせることで死角をなくし、安定した通信環境を構築できます。
Wi-Fi6E対応製品を選ぶ
既存電波との電波干渉や電波混雑については、『最新規格Wi-Fi6Eとは』でも説明していますが、6GHz帯で通信ができるWi-Fi6E対応機器を選ぶことで防げます。
従来のWi-Fi6以前の機器は、2.4GHz帯と5GHz帯のいずれかで通信を行っていますが、ともに一般的に利用されている周波数帯のため既存設備との電波干渉や電荷混雑が起こりやすいといった欠点があります。その他、2.4GHz帯は障害物に強いが比較的通信速度が遅い、5GHz帯は比較的障害物に弱いが通信速度が速いといった特性もあります。
さらに5GHz帯は、気象レーダーや航空レーダーに使用され、レーダー波とWi-Fiの電波干渉を防ぐため、レーダー波を検出すると5GHz帯の電波を停止する「DFS(Dynamic Frequency Selection)」という機能の搭載が義務化されています。そのため、レーダーを受信した場合は最低1分通信が止まってしまい、通信不能期間が発生します。
それらの問題に対して、6GHz帯に対応したWi-Fi6Eは、新しい規格なので既存電波との電波干渉や電波混雑の影響を受けにくく、通信速度低下の防止に効果的です。また、DFS規制も受けないので、たとえば通信不要期間によって各種センサのログが一時的に取れなくなってしまうというトラブルも未然に防げます。
Wi-Fiの接続台数(接続人数)
Wi-Fiルーターやアクセスポイントの接続台数は、一般家庭向けでは5台前後が多くなっていますが、業務用・産業用のものでは1台で15台以上、同時接続可能なものもあります。とくに工場や生産ラインなどでは、多数のPLCやセンサなどを接続するので、接続台数も大切なポイントです。
また、1台のWi-Fiルーターでは、接続エリアが狭いため、工場や生産ラインで使用する場合は、メッシュWi-Fiが手軽です。メッシュWi-Fiは、接続エリアを拡大しやすいほか、コントローラと呼ばれる親機と、エージェントもしくはサテライトやユニットと呼ばれる子機(アクセスポイント)を使用するので、1台のルーターにかかる負荷を軽減し、同時接続しても通信速度が安定するといったメリットもあります。