安定性の高い無線LAN(Wi-Fi)構築のポイント
『有線LANから無線LAN(Wi-Fi)にするメリット』でも触れましたが、無線化には多くのメリットもありますが、デメリットも存在します。そのひとつが安定性です。こちらでは、無線LAN(Wi-Fi)の安定性を高めるポイントについて説明します。
無線LAN(Wi-Fi)の安定性とは
物理的にLANケーブルで接続する有線LANに比べ、電波などを使って無線通信を行う無線LAN(Wi-Fi)は、その性質上、壁や天井といった障害物、そのほか電波干渉によって通信が不安定になったり、接続が途切れてしまったりするという課題もあります。
とくに工場や生産ラインのような過酷な環境では、さまざまな産業機器が動作し、電磁波やノイズの発生源はいたるところにあり、電波環境としては厳しい場所です。そこで重要なのが通信の安定性です。
次からは、無線LAN(Wi-Fi)で大切な安定性を高める『メッシュWi-Fi』と『無線LANコントローラ』について説明します。
安定通信を実現する『メッシュWi-Fi(無線)』
産業用無線LAN(Wi-Fi)では、広い工場内や生産ラインをカバーするために広範囲なエリアでの安定した通信が求められます。そして通信可能エリアを拡大する方法として、『ツリー型ネットワーク』『中継器』『メッシュネットワーク』といった方法でのアクセスポイント増設が一般的です。
- ツリー型ネットワーク
LANスイッチ(スイッチングハブ)からアクセスポイントまでLANケーブルを敷設し、LANエリアを増設する方法です。LANスイッチ(スイッチングハブ)からアクセスポイントまでは有線接続になるので工事費用がかかります。いわゆる従来型のネットワークと言えます。 - 中継器
無線LANエリア内に中継器を設置し、無線エリアを拡大するもっとも手軽な方法です。ツリー型ネットワークのようにLANケーブルを敷設する必要はなく、簡単に無線LANエリアを拡大できることが特徴ですが、接続デバイスが増えるとルーターに負荷がかかり、通信速度低下などが発生しやすくなるといったデメリットがあります。 - メッシュネットワーク(メッシュWi-Fi/メッシュ無線)
『コントローラ』と呼ばれる親機と、『エージェント』や『サテライト』、『ユニット』と呼ばれる子機を設置し、網目状(メッシュ状)にLANネットワークを構築する方法です。その特徴は、通信経路のどこかで障害が発生しても、正常なルートで通信を行うので安定性が高いことです。とくにメッシュネットワークの中でも無線LAN(Wi-Fi)のものを『メッシュWi-Fi(無線)』と呼び、広いエリアで手軽に、さらに安定した無線環境を構築する方法として近年人気を集めています。
それぞれメリット・デメリットがありますが、工場や生産ラインで無線化する場合、安定性という面でメッシュネットワーク(メッシュWi-Fi)が有効です。メッシュネットワーク(メッシュWi-Fi)は、ツリー型ネットワークに比べてアクセスポイント増設のコストが安く、中継器に比べて通信速度の低下が少ないといった特徴があります。また、ルーターへの負荷が分散され、速度低下が少なく、通信の安定性も高くなっています。そのほかにも導入や運用のハードルが低く、故障/障害発生時の普及も容易です。
ちなみにFAに特化したキーエンスの産業用ワイヤレスシステム『WS-1000シリーズ』は、1つの経路が遮断しても、別の経路で継続できるメッシュ無線に対応。ユニットの数を増やせば、そのぶん通信エラー時のリスクヘッジが行えます。このようにユニットを追加することで安定性が高くなることもメッシュネットワーク(メッシュWi-Fi)の魅力であり、工場や生産ラインに適している点です。
Wi-Fi環境を監視する『無線LANコントローラ』
無線LANコントローラとは、複数の無線LANアクセスポイントを統合管理する装置です。さまざまな機能のある無線LANコントローラですが、一番のメリットは一括管理することでトラブルシュートが簡単にできることです。
FAに特化したキーエンスの産業用ワイヤレスシステム『WS-1000シリーズ』もコントローラ(親機)とユニット(子機)で構成され、各経路の通信状態や電波状況などをタブレットやパソコン、スマホから確認可能。通信負荷の高い箇所や速度低下している経路を一目で確認できるので、目に見えない無線LAN(Wi-Fi)の安定通信に効果的です。そのほか、既存無線との干渉をモニタリングしたり、無線の周波数帯域を確認して選択するといったことも可能。無線LANコントローラを使用することで、目に見えないWi-Fi環境を監視でき、安定性向上が望めます。