有線LANから無線LAN(Wi-Fi)にするメリット
LANとは、『Local Area Network:ローカルエリアネットワーク』の頭文字を取った言葉で、家庭や会社、また工場や生産ラインなど、限られたエリア内で、パソコンや通信機器などを接続し、相互にデータ通信する技術です。また、LANケーブルで物理的に接続する『有線LAN』と、電波などを用いて無線接続する『無線LAN』に大別でき、無線LANのひとつがWi-Fiとなります。
こちらでは、有線LANから無線LAN(Wi-Fi)に変更するメリットについて、工場やFAの利用におけるメリットを紹介します。有線LANと無線LANの違い、Wi-Fiについては、以下の関連ページもあわせてご覧ください。
メリット1 最小限のケーブル接続で済む
無線LAN(Wi-Fi)を導入する最大のメリットは、LANケーブルを最小限に抑えて、オフィスや工場内、さらに生産ライン内でネットワーク構築ができることです。有線LANは、機器同士をLANケーブルで接続し、相互にデータ通信を行います。一方で無線LANは、電波などを用いて無線接続するので、LANケーブルを最小限に抑えられます。
たとえば、家庭やオフィスなどであれば、床や壁にLANケーブルを張り巡らせる必要がなくなりスッキリします。さらに工場で有線LANを用いる場合、床にLANケーブルを這わせるのは安全上問題がありますので、高所での配線作業が必要になり、専門資格を持った業者に依頼すれば手間も費用もかかります。また、床に配線を張り巡らせる必要がなくなるので、配線に引っかかってLANケーブルが抜けてしまうなど、それによる生産停止や事故も未然に防げます。
また、生産ラインの組み換えやレイアウト変更の際、有線LANに比べ、無線LANは自由度が高いことも大きなメリットです。近年は製品ライフサイクルの短期化や多品種少量生産も増え、柔軟な生産体制の構築と迅速なレイアウト変更が求められますが、そういった要求に対して無線化は有効です。
そのほか、工場では、PLCのデバッグなどで制御盤を開け、パソコンを接続してデバッグやプログラム変更などを行います。無線LANを使用すれば、制御盤を開けずにデバッグやプログラム変更ができますので、デバッグのために設備を停止する必要もありません。
メリット2 複数の機器を同時接続できる
無線LANは、使用する設備によって変わりますが、簡単に複数の機器を同時接続できることもメリットです。有線LANの場合、LANケーブルを接続するポートの数に依存し、それ以上の機器を接続する場合にはハブなどで分岐する必要があります。そういったわずらわしさからも解放されます。また、分岐のためにハブを使用すれば、接続箇所が増えて脱線などのトラブルの可能性も高くなります。
メリット3 ライン/フロア間で手軽に接続できる
有線LANは、LANケーブルの届く範囲でしかネットワークが構築できません。無線LAN(Wi-Fi)であれば、LANケーブルを接続しなくても電波の届く範囲であれば接続可能です。Wi-Fiの接続エリアは、ルーターを増やすほか、中継器やアクセスポイントを増設することで無線接続可能なエリアを拡大できます。
また最近では、広いエリアで高品質な通信が可能な『メッシュWi-Fi(無線)』も普及しています。メッシュWi-Fiとは、網の目状(メッシュ状)にネットワーク通信を行い、通信経路のどこかで障害が発生しても迂回し、常に安定した通信を実現するシステムです。キーエンスの産業用ワイヤレスシステム『WS-1000シリーズ』もメッシュ無線に対応しているので安定通信を実現し、さらにユニットを簡単に追加できるので通信エリアの拡大も簡単です。
無線LANのデメリット
ここまでは無線LANのメリットを紹介してきましたが、デメリットも存在します。たとえば以下のような内容です。
- 設置方法/周辺環境によって接続が不安定になったり、途切れてしまったりすることがある
- 同じ周波数帯の機器が近くにある場合、電波干渉で通信速度の低下などの恐れがある
- 広いエリアの場合は、電波が届かず、通信ができないこともある
- 有線LANに比べて通信速度が遅く、大容量のデータ通信では不利
- 電波を使う特性上、傍受されてデータ漏洩のリスクがあり、セキュリティ対策が必要
ただし、近年は通信品質や通信速度も向上し、工場のような広いエリアをカバーできるメッシュWi-Fiが普及し、新たにWi-Fi6Eが登場したことでデメリットもなくなりつつあります。それ以上に接続の自由度は、製造現場によって大きなメリットになるでしょう。次のページでは、デメリットへの対応策なども含め、具体的に無線LANの特徴などを解説します。