機械要素の種類

機械要素の中でも、ボルトやナットといったねじ、軸・ベアリング、ベルトやチェーン・ばねなどは、どのような機械でも共通した目的で使用されます。これらの機械要素の多くは国家規格(JISやISO)で規格化されており、機械に使用したり製図で表記する場合は、規格に従って選択/表記しなければなりません。

また、機械要素にはねじや歯車、ばねといった細分化された要素から、クラッチやブレーキなどの小さな部品で組み立てた要素まで、機械を構成するさまざまな部品が含まれます。ここでは、その中でも最も細かな要素に分けて説明します。

ねじ

「ねじ」は、主に部品の固定や部品同士の結合に利用される機械要素です。ボルトやナット・小ねじなどがあり、緩みを防ぐための工夫が施されたねじもあります。また、万力などでは、回転運動を直線運動に変換する役割りも担っています。

六角ボルト
六角ボルト
ナット
ナット
鍋小ねじ
鍋小ねじ

軸とベアリング

「軸」は、動力を伝えたり他の要素を支えたり、運動の種類を変換する機械要素です。たとえば、軸を回すと軸(伝動軸)に取り付けた歯車も回り、噛み合う歯車を取り付けた軸(従動軸)に動力を伝えます。このとき、従動軸は伝動軸とは逆回転します。また、車輪に取り付けられた軸は、車体からの荷重を支えます(車軸)。

変速ギヤ
変速ギヤ
車軸
車軸
  1. A:軸受
  2. B:伝動軸
  3. C:従動軸

「ベアリング」は「軸受」ともいわれ、回転する軸の回転がブレないよう支える機械要素です。回転する軸は、動力側で固定されています。このとき軸は、片持ち梁*の状態です。片持ち梁の状態で軸に強い回転力が働くと、軸の回転にブレが発生します。このブレを抑えるための要素がベアリングです。ベアリングは、「ボールベアリング」といわれる「転がり軸受」 と、「ブッシュ」といわれる「滑り軸受」に大別されます。共に、摩擦による摩耗で部品が破損しないための工夫が施されています。このほか、磁気の反発力を利用した「磁気軸受」もあり、非接触での軸受を実現しています。

転がり軸受
転がり軸受
  1. A:転がり軸受
  2. B:軸
滑り軸受
滑り軸受
  1. B:軸
  2. C:滑り軸受
  3. D:潤滑油
片持ち梁
「梁」とは、荷重を支点に伝える材料のことです。軸方向に対して直角や斜めから受けます。そして「片持ち梁」とは、梁の一方の端を固定し、もう一方の端を自由にした状態のことです。
片持ち梁
A:固定 B:梁 C:軸方向

歯車・ベルト/チェーン

「歯車」は、歯と歯を対にしてかみ合わせることで、回転運動を確実に伝える機械要素です。1つの軸から他の軸に動力を伝える機能があり、伝える動力の回転方向は、基本的に変わりませんが、歯車を介することで回転方向を変えたり、かみ合わせる歯車の歯数によって回転速度を変えることもできます。工業用から船舶用のタービン・自動車、一般の電動工具にまでいたるところで利用されています。「ギヤ(ギア)」といわれるものも、歯車です。

「ベルト」と「チェーン」は、「巻き掛け伝動装置」といわれ、回転運動の伝達や何かを搬送する場合に用いられます。代表的な部品として、ベルトには平ベルト・Vベルト・歯付きベルトがあり、自動車変速機のベルト式CVTもその一種です。
また、チェーンにはローラーチェーン・リーフチェーン・サイレントチェーン・コンベアチェーンなどがあり、リーフチェーンはチェーン式CVTに使用されています。

ローラーチェーン
ローラーチェーン
リーフチェーン
リーフチェーン
サイレントチェーン
サイレントチェーン

ばね(緩衝要素)

「ばね」は、弾性変形によるエネルギーの蓄積/放出を利用し、仕事を行う機械要素です。ばねは、力を加えると変形し(エネルギーの蓄積)力を除くと元に戻ります(エネルギーの放出)。この動作を利用し、衝撃や振動を吸収したり、他の機械要素の動作を制御します。また、ばねの動作は、減衰機能であるショックアブソーバーなどと組み合わせることで制御することができます。
ばねの素材には、金属や非金属だけでなくゴムや空気や液体も使用されます。

圧縮コイルばね
圧縮コイルばね
引張コイルばね
引張コイルばね
ねじりコイルばね
ねじりコイルばね

カム

「カム」は、運動方向を変えることができる機械要素です。たとえば、回転する円盤を立てて、その円盤の上の面に棒を押し当てます。その状態で円盤を回すと、棒は円盤の外周にしたがった運動をします。このとき、円盤が楕円であると円盤の動きに対し、棒は上下に動きます。

このように、カムは運動の方向を変えることができ、カムの機能の元となる要素(円盤の回転)を「原動節」、原動節の動作を受け止める要素を「従動節」といい、原動節と受動節が接する部分を「フォロア」または「対偶部」といいます。

カムによる動作は非常になめらかで、高い精度と耐久性が特徴です。また、少ない部品で構成することができるため、耐久性が高くメンテナンス性にも優れています。

原動節と従動節
原動節と従動節
  1. A:原動節
  2. B:フォロア(対偶部)
  3. C:従動節

リンク(リンケージ)

「リンク」とは、可動する部品と部品のジョイント(関節)を結ぶ棒のことです。リンクはジョイントによって可動する機能を残したまま結合されていて、産業ロボット、パワーショベル、自動車のワイパー、電車のパンタグラフ、卓上の電気スタンドのアーム、傘の骨組みなどに利用されており、ジョイントは「対偶」ともいわれます。また、リンクによって接続された部品の動作を「リンク機構」 といいます。

リンクの種類

リンク機構の関節である対偶(ジョイント)には、大きく以下の2種類があります。

点対偶
球体の機械要素が点で接触している対偶です。たとえば、ボールベアリング(玉軸受)を使ったジョイントは点対偶です。
線対偶
円柱の機械要素と線で接触している対偶です。たとえば、ローラーベアリングを使ったジョイントは線対偶です。

このほか、機械要素どうしが面で接触している「面対偶」があります。面対偶には「回り対偶」・「滑り対偶」・「ねじ対偶」などがあり、ほかにも自動二輪のシフトペダルのジョイントに使われるボールジョイントは「球面対偶」といわれます。

リンク機構の種類

リンク機構には、オープンループ構造とクローズドループ構造の2種類があり、このうちクローズドループ構造には4節クランク機構・スライダクランク機構・両スライダクランク機構があります。

4節クランク機構(4棒機構)
4本のリンクのうち、1本を固定したリンク機構です。固定するリンクによって、動作を変えることができます。
スライダクランク機構
3本のリンクのうち1本を固定、滑り対偶が一か所を連結したリンク機構です。

4節クランク機構には、てこクランク機構・両クランク機構・両てこ機構などがあり、スライダクランク機構には往復クランク機構・回転スライダクランク機構・揺動スライダクランク機構・固定スライダクランク機構などがあります。

リンク機構の種類の例
オープンループ構造
オープンループ構造
クローズドループ構造
クローズドループ構造
コラムColumn

CVT(Continuously Variable Transmission)

「CVT」は、自動車が多く採用する可変トランスミッションの一種です。伝動軸のプーリーと従動軸のプーリーをベルトまたはチェーンでつないで動力(トルク)を伝達します。プーリーの幅を広げたり狭めたりすることで伝動軸と従動軸の回転比を変えるので、無段階の変速が可能です。

動力の伝達方法にはベルト式とチェーン式があり、ベルト式は「エレメント」と呼ばれる金属片をつなぎ合わせたベルトを用い、チェーン式は一般的なチェーンと同じように小さなコマをつなぎ合わせたチェーンを用います。ベルト式もチェーン式もプーリーとの接触によって動力を伝えますが、ベルト式はエレメントの両端がプーリーに接触するのに対し、チェーン式はチェーンのピン尖端が接触して動力を伝えます。バック(後進)するときには遊星ギヤを用います。

一般に、性能面ではベルト式よりチェーン式の方が有利といわれています。しかし、チェーン式はノイズが大きい、製造コストが高いなどのデメリットがあります。一方ベルト式は、薄い金属であるエレメントをつないだだけのシンプルな構造でありながら、ゴムのようなしなやかさと耐久性を持ち、静粛性とコスト面で大きなメリットがあることから、多くの自動車で採用されています。

現在、各自動車メーカーによる電気自動車(EV)の開発が進んでいます。そのアプローチはさまざまですが、多段トランスミッションを使うことで消費電力を抑え、動力の伝達効率を向上させている例もあります。また、モーターの小型化に貢献するとの見方もあります。

ガソリン・ディーゼルからハイブリッド、そして電気へと動力源が変わる中、今後、どのような自動車が開発され、どのようなトランスミッションが搭載されるのか、興味は尽きることがありません。

CVTエレメントの断面
CVTエレメントの断面
ここがプーリーに接触する

イチから学ぶ機械要素 トップへ戻る