歯車の種類
歯車は、噛み合う2軸を平行・交差・食い違いというように相対位置を変えることで、力が伝わる向きを変えることができます。また、歯車の大きさを変えることで、駆動側と従動側の回転速度を変えることができます。そして、これらの機能を満たすために、歯車には多くの種類があります。
また、歯車の歯の曲線形状(歯形)には、大きく分けて「インボリュート曲線」を用いたものと「サイクロイド曲線」を用いたものがあります。
ここでは、歯車の種類を噛み合う2軸の相対位置と歯の形状によって分類し、それぞれについて説明します。
2軸の位置関係による分類
歯車にはさまざまな形状がありますが、それらは主に力の向き(軸方向)と伝わる力を変えるために存在します。
緻密で複雑な動きをする精密機器も、強い力が働く内燃機関も、これらの歯車を組み合わせることで、さまざまな動きを実現しています。
2軸の 相対位置 |
歯車の種類 | 特徴 | |
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平行 | 平歯車 | 円筒形で歯筋が軸に平行 | |
はすば歯車 | 円筒形で歯筋がつるまき線状 | ||
やまば歯車 | 左右両ねじのはすば歯車 | ||
内歯車 | 円筒の内側に歯がある | ||
ラックとピニオン | 円筒形の歯車の基準ピッチ間隔の歯を持つ直線状のロッド 「すぐばラック」「はすばラック」などがある。 (A:ピニオン B:ラック) |
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交差 | すぐばかさ車 | 歯筋がピッチ円錐母線と同じ形状のかさ状の歯車 | |
曲がりばかさ車 | 歯筋がつるまき線ではない曲線状かつかさ状の歯車 | ||
はすばかさ歯車 | 歯筋がつるまき状になっているかさ状の歯車 | ||
食い違い | ウォームギヤ | ウォームとウォームホイールでできた対の歯車。 (A:ウォーム B:ウォームホイール) |
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ハイポイドギヤ | 食い違い軸で円錐またはそれに近い形状でできた対の歯車 |
歯の形状による分類
歯車の歯には、曲線形状(歯形)の違いにより、「インボリュート歯形」と「サイクロイド歯形」があります。
インボリュート歯形は、歯形に「インボリュート曲線」といわれる曲線を用いています。また、サイクロイド歯形は、「サイクロイド曲線」といわれる曲線を用いています。
それぞれが持つメリットとデメリット、またそれによって使い分けられるアプリケーションについて説明します。このうち、JISではインボリュート曲線を規定しています。
インボリュート歯形
インボリュート曲線といわれる形状の歯形です。インボリュート曲線とは、円筒に糸を巻きつけて、ゆるみなく引きほどいていったときに、糸の先端が描く曲線です。
インボリュート歯形を持つ歯車の最大のメリットは、歯車の中心距離の誤差が回転精度や噛み合いに影響しないという点です。また、圧力角が噛み合いの始まりから終わりまで一定で、摩耗の少ない滑らかな動作が可能です。
さらに、インボリュート歯形の歯車は、形状がシンプルで加工が簡単、低価格であるということから、多くの機器の歯車にはインボリュート歯形が使われています。
サイクロイド歯形
サイクロイド曲線といわれる形状の歯形です。サイクロイド曲線とは、直線上を円が転がるときに、円のある1点が描く軌跡です。上下反転させたサイクロイド曲線は、物体が最も速く滑り落ちる曲線としても有名です。
サイクロイド歯形のメリットは、インボリュート歯形に対して歯元の面積が大きいので強度が高いということです。そして、最も大きなメリットは、噛み合う歯どうしに、まったく干渉が発生しないという点です。
サイクロイド歯形の歯車は、「歯元面が広く、歯形に滑りがない」「完全な転がりなので回転抵抗が低い」といった特徴から、時計や精密機械などの低負荷の製品に使用されています。
- A:円周上の点
- B:サイクロイド曲線
- C:円の回転