ディスペンサ

ロボットを用いることで高度な自動塗布を実現するディスペンサ。
ここでは、ディスペンサの概要や用途例について説明します。

ディスペンサの概要

製造業で用いられる「ディスペンサ」とは、塗液定量吐出装置、またはそのシステム全体の総称です。塗液を高精度に供給制御するコントローラを中核とし、塗布する材料に応じた多種多様なバレルやポンプ、ノズルやニードルなどから構成されます。塗液の性質によりさまざまな吐出方式のディスペンサ(システム)が適用されますが、中でも代表的な方式を表に示します。

ディスペンサの代表的な吐出方式
方式 特徴
空圧(シリンジ)方式 エアパルスにより塗布する材料を押し出す方式。汎用性があり最も普及している方式で、エアパルス方式とも呼ばれる。
容積計量式 空気を使うことなく、容積計量とモータ駆動により塗液を押し出す方式。メカニカル(機械式)ディスペンサとも呼ばれる。
非接触方式 被塗物に触れることなく、塗液を飛ばすことで塗布する方式。ジェットディスペンサとも呼ばれる。
チュービング方式 塗材が入ったチューブそのものに圧力をかけることで、チューブ内の液を送り出す方式。
プランジャー方式 シリンダー内で流体の圧縮を機械的に行う方式。ピストンと同様の作用で、高粘度材料など流体の圧力が高い場合に有効。

この分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしもこのとおりとは限りません。

空圧(シリンジ)式ディスペンサの基本構成例
空圧(シリンジ)式ディスペンサの基本構成例
  1. エア源
  2. 空圧配管
  3. レギュレータ/フィルタ
  4. ディスペンサ(吐出コントローラ)
  5. シリンジ

ディスペンサの概況

ディスペンサイメージ

昨今のFAにおいては、複数軸を持つロボット、ステージ駆動、センサ類を組み合わせたディスペンサによる高速・高精度な自動塗布が主流となっています。

各装置やシステムの高度化により、電子部品への精密かつ微少量の接着剤・コーティング剤の塗布から、液体ガスケットなどシール材のビード状塗布、従来は自動化が困難だったギアボックスなど狭小部の多い構造物への斜め方向からのグリス飛滴塗布まで、ディスペンサによる自動塗布の対応範囲は増加し続けています。また、従来工法からの効率化・高機能化のための代替え技術としても、新材料とともにディスペンサによる自動塗布が注目されています。

ディスペンサの用途例

電子部品関連

実装基板へのクリームはんだ塗布
スクリーン印刷では対応しにくい条件下、ディスペンサロボットによる高速・精密塗布を適用するケースが増加。
基板のアンダーフィル
実装済み基板の保護を目的に、非接触式ディスペンサでアンダーフィルを塗布。制御によりマスキングなしで目的のエリアのみに塗布。
カメラモジュールとレンズの接着
デバイスの薄型化に伴い、微小化したカメラモジュールなどの部品への微少量接着剤の非接触(ジェット)式塗布。
LEDモジュールのポッティング
高速かつ正確な固定・封止のためのポッティングにディスペンサによる高精度な滴下・分注を活用。

自動車関連

ECU基板への防湿剤塗布
非接触式ディスペンサの高精度制御により、複合部品であってもマスキングなしで目的のスポットのみに防湿材を塗布。
エンジン部品へのシール材(シーラー・プライマー)塗布
機械式ポンプのディスペンサロボットを用い、高粘度なFIPG、CIPGを自動塗布。シール材(シーラー・プライマー)・液体ガスケットを安定したビード形状に塗布することで高い気密性を得る。
内装部品へのグリス塗布
非接触(ジェット)式ディスペンサと多軸ロボットによる斜めからのグリス塗布でインパネ部品やドア部品の狭小部分に対応。
ECU基板へのモールディング
硬化時間に注意が必要な2液硬化性樹脂をロボット制御による2液混合吐出ディスペンサで自動塗布。
車体フロアへの制振材塗布
従来のシート状に比べ、床の曲面への密着性・制振性が高く、薄く軽量で作業性の高い塗布型制振材。多軸ディスペンサロボットで必要な部分のみに自動塗布。

ディスプレイ製品

有機ELディスプレイ(OELD)のガラスと偏光板の接着封止
ガラスと偏光板の微小な隙間に対し、微少量接着剤を均一塗布による充填封止。ディスペンサは、電圧を加えることで微細に変形するピエゾ素子によってロッドを往復運動させ、高速かつ微細な吐出が可能な「ピエゾ式」のジェットディスペンサが注目されている。
FPC(フレキシブル基板)のTAB補強剤塗布
薄型の液晶ディスプレイやタッチパネルに接続したFPCは、その薄い接合部に強度を持たせるため、UV硬化性の補強材を塗布。精密な塗布範囲設定、パネルへの接触を回避した制御で自動塗布。
液晶ガラス縁への偏光材塗布
従来は偏光テープで処理していたLCDのガラス縁。近年はガラスの薄型化に伴い、非接触式ディスペンサで縁に偏光材を塗布することで、ワーク条件に対応すると同時に自動化によって生産性が向上。
スマートフォンの組立
タッチパネルや有機EL(OELD)または液晶(LCD)ディスプレイ、FPC(フレキシブル基板)、小型カメラ、各種センサ類、バッテリーなど数多くの小型部品で構成されるスマートフォンやタブレット。薄型化・軽量化に伴い、組立工程の多くに各種ディスペンサによる接着剤の精密・微少量塗布を活用。

電池(二次電池・太陽電池)

二次電池
充電式バッテリーの電解液や封止部分のシール剤塗布などの用途。
太陽電池
太陽電池パネルのセル、モジュールへの線引き塗布、ポッティングなどの用途。

このようなディスペンサロボットを用いた高精度かつ高速な自動塗布を安定して行うには、正確な位置決めや塗布状態の監視、装置へのフィードバックが欠かせません。ロボットの「目」ともいえる、高精度なレーザ変位計やカメラ、センサ類の活用が塗布品質の維持・向上に必須となります。

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