電子ビーム溶接の種類

電子ビーム溶接は、加速電圧や加工室の圧力、電子銃の取り付け位置によって分類され、これらの違いは、装置の規模や扱いやすさ、対応できる溶接工程に影響します。

加速電圧による分類(高電圧型・低電圧型)

加速電圧は、電子ビームの出力に大きく影響します。一般に加速電圧が約100~150kVを高電圧型、約30~60kVを低電圧型と呼びます。
高電圧型は、鉄鋼材料なら約0.1~200mm厚、アルミニウム合金ならば約0.1~300mm厚のものまで溶接できる能力があります。
また低電圧型は特殊な用途を除いて使いやすさの点で有利であるため、電子部品業界など、さまざまな分野で幅広く利用されています。

加工室の圧力による分類(高真空型・低真空型)

電子ビーム溶接機の大きな特徴の1つに、真空状態の加工室内での溶接が挙げられます。しかし、近年では完全な真空状態でなくても溶接できる電子ビーム溶接機も開発されています。
一般に、加工室圧力が約0.067Pa以下を高真空型、約6.67Pa以下を低真空型といいます。加工室圧力は、使用形態により約6.67Pa~1.3×10-6Paで、加工室容積は大型化が進み内容積が数百m3の装置もあります。

一般的な高真空型の排気装置は、

  • 油拡散ポンプ
  • メカニカルブースタポンプ
  • 油回転ポンプ

で構成されています。

一方、低真空型は

  • メカニカルブースタポンプ
  • 油回転ポンプ

で構成されています。

また、近年では設置環境の改善や省エネルギー性の向上から、騒音・振動・発熱などの少ないスクロールポンプやターボ分子ポンプを装着した装置が増加しています。

電子銃取り付け位置による方法分類(電子銃固定型・電子銃移動型)

電子ビームを発射する電子銃の取り付け位置による分類で、加工室外に電子銃を取り付ける室外型と加工室内に取り付ける室内型があります。

「室外型」には、一般的な電子銃固定型と特殊なスライディングシール機構を用いた電子銃移動型があります。電子銃固定型は、母材を動かして溶接位置を変えます。
一方、電子銃移動型は電子銃を動かして溶接位置を変えます。電子銃移動式には移動ストロークが数mの装置もあり、さまざまな位置の溶接が可能です。

「室内型」の電子銃は、電子銃移動型で、5軸(X・Y・Z・A・C)を同時制御できるロボットに電子銃を取り付けています。3次元の溶接が可能で、溶接可能領域が10m以上の装置もあります。3次元の溶接位置は、弱ビームが溶接線を横切る方向に走査します。そして、そのときに発生するX線を電子銃に内蔵したセンサで検出し、開先に対して正確な溶接を実現しています。

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