半導体パッケージのリード浮きをすばやく正確に測定する方法

半導体パッケージのリード浮きをすばやく正確に測定する方法

近年、スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスなどの小型・低背化や、自動車の通信・電子制御化の増加などを背景に、電子デバイスの実装品質・信頼性への要求が高まっています。なかでも、半導体パッケージ(リードフレームパッケージ)のピンに浮きがあると、接続不良や、接続部の強度が低下するため、特に注意が必要です。
ここではリードフレームやリード浮きに関する基礎知識や、従来のリード浮き測定における課題、課題解決のみならず、作業効率と正確性を飛躍的に向上することができる、最新の測定方法までを解説します。

リードフレーム(リード)とは

「リードフレーム(英語:lead frame)」とは、ICやLSIなどの半導体パッケージにおいて、半導体チップ(半導体素子)を支持・固定すると同時に、パッケージからムカデの脚のように出た複数の外部接続端子「アウターリード」で外部配線と接続する部品のことです。
このような形態の半導体パッケージ完成品は、「リードフレームパッケージ」とも呼ばれ、樹脂から露出しているアウターリードは、単に「リード」とも呼ばれます。リードフレーム各部の名称と、半導体パッケージ内部における構造を下図に示します。

リードフレーム(左)・半導体パッケージの断面図(右)
リードフレーム(左)・半導体パッケージの断面図(右)
A
インナーリード
B
アウターリード
C
ダイパッド
D
フレーム(枠)部
E
ダムバー
F
半導体チップ(半導体素子)
G
電極パッド
H
樹脂パッケージ
I
ボンディングワイヤー

リードフレーム(リード)の材質・加工・用途

リードフレーム(リード)は、一般にCu合金(銅合金)系素材や鉄合金系素材など、電気伝導度・機械的強度・熱伝導度・耐食性などの優れた薄板が用いられます。
これらの長い薄板を順送で精密プレス(打ち抜き・絞り・曲げ)加工します。それにより、半導体チップ(半導体素子)を支持固定する「ダイパッド」や半導体素子と配線される「インナーリード」、外部配線と接続する「アウターリード」などを成形します。また、リードフレームの製造工程には機械加工以外にも、エッチングやめっきなど表面処理の工程があります。
リードフレームは、ICやLSIなどの集積回路のパッケージの他に、ディスクリート半導体やフォトカプラー、LEDなどにも用いられます。いずれも半導体素子の各電極とインナーリードを内部接続する手法として、ワイヤーボンディングが用いられます。

リード浮き・接続不良など表面実装でのトラブルと対策

近年は、実装する電子デバイスの小型化や電子回路の高密度化に伴って、リードフレームとその接続にはよりシビアな精度が要求されるようになりました。表面実装工程においては、アウターリードの寸法や形状、コプラナリティの不良は、実装時の不具合原因となります。また、リードの表面処理不良やリフロー熱不足によるはんだペースト(クリームはんだ)の広がり(濡れ)不足、リフロー条件の不適によるはんだの溶融不足、さらには基板の反りなどさまざまな条件によっても、表面実装デバイス(SMD)の「リード浮き」が生じ、接続不良や接点強度の低下に繋がります。
リード浮きなど代表的な実装不良の原因や対策の例を以下に示します。

リード浮き(部品浮き)

リード浮き(部品浮き)
A
基板
B
マウントパッド
C
はんだ
D
リード(部品)浮き
  • 現象:アウターリードなど電子部品の端子にはんだが付いておらず浮き上がった状態。
  • 原因:はんだ印刷または部品の位置ズレ、はんだ印刷量または溶融時間の不均一、リードなど端子の変形、搭載機押圧不足。
  • 対策:位置ズレの修正、フラックス含有量の低減、リードなど端子形状の検査・管理、印刷条件の検討、リフロー条件の検討。

はんだ未溶融

はんだ未溶融
A
基板
B
マウントパッド
C
はんだ粉末の残留
D
リード浮き
  • 現象:はんだが十分に溶融せず、粉末が残留。実装部品の接続強度低下やリード浮きなどが発生。
  • 原因:リフロー条件不適、はんだペーストの劣化。
  • 対策:リフロー条件の見直し、はんだペースト保管方法の確認や変更。

未はんだ

未はんだ
A
基板
B
マウントパッド
C
はんだの不足または不在(リード接続不良)
  • 現象:マウントパッドにはんだがない、または極端に少ない。
  • 原因:はんだペースト印刷量の不足、マウントパッド・リードの表面状態やはんだペーストの劣化による濡れ不足、リフロー時の熱量不足。
  • 対策:マウントパッド・リードの表面・印刷マスク・はんだペーストの状態確認、リフロー条件の見直し。

はんだ広がり不足

はんだ広がり不足
A
基板
B
マウントパッド
C
はんだ(濡れ広がっていない)
D
リード
  • 現象:はんだがマウントパッドやリードに十分濡れ広がらず、接続部分の強度低下やリード浮きなどが発生。
  • 原因:はんだペースト印刷量の不足、マウントパッド・リード・はんだペーストの劣化、熱量不足。
  • 対策:マウントパッド・リードの表面・印刷マスク・はんだペーストの状態確認、リフロー条件の見直し。

はんだ量不均一

はんだ量不均一
A
基板
B
マウントパッド
C
はんだ(量の不均一・高さの不均一)
  • 現象:はんだ付け部のはんだ量が一定でない。リード浮きや接続不良の原因となる。
  • 原因:はんだペーストの印刷性(抜け性)が低い、印刷条件が適当でない。
  • 対策:はんだペースト・印刷条件の検討。

従来のリード浮き測定の課題

実装された半導体パッケージ1つにつき多数あるリードの接続状態を確認することは、容易ではありません。特に電子部品の小型化・実装基板の高密度化を背景に、測定の難易度は増すばかりです。
従来のハイトゲージや三次元測定機を用いたリードの浮き(高さ)測定では、以下のような課題がありました。

ハイトゲージでのリード浮き測定の課題

ハイトゲージでのリード浮き測定の課題

ハイトゲージは、ダイヤルゲージと組み合わせることで高さの測定を行うことができます。
測定が点に限られ、精度を向上させるには時間をかけて多点を測定する必要があります。しかし、多くの時間をかけて多点測定しても、面全体の状態を把握することができません。

また、高密度な基板実装における半導体デバイスのリードの場合、狭窄部の極小箇所に接触して測定することが困難なケースがあります。さらに、人による測定結果のバラつきや、測定機自体の誤差により安定した測定はできません。

三次元測定機でのリード浮き測定の課題

三次元測定機でのリード浮き測定の課題

三次元測定機で測定するには、対象物の測定箇所の複数の部位にプローブ先端の接触子を当てる必要があります。
しかし、接触子の測定圧で基板や部品が少しでもたわむと、測定値にバラつきが生じてしましいます。

また、半導体パッケージのリード部分は小さいため、事前に測定機のプログラミングを精密に組む必要があります。さらに、リード接続部分のサイズや配置によっては、測定そのものが困難な場合もあります。

リード浮きにおける課題解決方法

従来から使用されている接触式測定機では、立体的な対象物・測定する面に対して点で接触する必要があるため、測定に時間がかかります。また、人によるバラつきなど測定値の信頼性の低さや数値のデータ化と後処理も容易ではないといった課題がありました。

こうした測定の課題を解決すべく、キーエンスでは、ワンショット3D形状測定機「VRシリーズ」を開発しました。
対象物の3D形状を非接触で、かつ面で正確に捉えることができます。また、ステージ上の対象物を最速1秒で3Dスキャンして3次元形状を高精度に測定することができます。このため、測定結果がバラつくことなく、瞬時に定量的な測定を実施することが可能です。ここでは、その具体的なメリットについて紹介します。

メリット1:最速1秒。「面」で対象物全体の3D形状を一括取得。

「VRシリーズ」は最速1秒で、面のデータ(ワンショットで80万点のデータ)を取得することができるため、これまで多点測定にかかっていた時間を飛躍的に短縮します。対象物全体の3D形状を正確に測定し、すばやく評価することができます。
また、カラーマップで複数のリードの高さの違いを可視化することができるため、どのリードがどんな値で浮いているのかが一目で把握することができます。さらに、一度スキャンすれば、後からでも任意の箇所のプロファイルデータを得ることができるため、詳細な状態も把握することができます。

リード浮きの一括測定とカラーマップ表示・プロファイル測定
リード浮きの一括測定とカラーマップ表示・プロファイル測定

メリット2:小さな対象物でも定量的な測定が簡単に実現

メリット2:小さな対象物でも定量的な測定が簡単に実現

低倍率/高倍率カメラを切り換えることにより、半導体デバイスのリードのような小さな対象物の全体/細部も正確に3Dスキャンすることが可能です。

また、対象物をステージの上に置き、ボタンを押すだけの簡単操作で、3D形状の測定を実現しました。対象物の特徴データから自動的に位置補正が可能なため、シビアな位置決めは不要です。経験や知識を問わず、人によるバラつきなく定量的な測定が可能なため、N数増やしが実現します。
設定においても測定範囲を自動設定・ステージ移動する「Smart Measurement機能」を業界で初めて搭載し、測定長やZ範囲などを設定する手間を一切排除しました。

まとめ:従来は困難だった、リード浮きの測定を飛躍的なスピード・精度で実現

「VRシリーズ」なら、高速3Dスキャンにより非接触でリードの浮きや各部品の実装状態など、面全体の正確な3D形状を瞬時に測定可能です。

  • 最速1秒。面で捉えた複数のリードの浮き(高さ)をカラーマップで把握でき、そして任意の断面のプロファイル測定による詳細なデータ取得も可能です。
  • 小型でデリケートな実装部品の全体/細部も、倍率の切り換えで、非接触で高精度な形状測定が可能です。
  • 位置決め不要。経験や知識も不問。対象物をステージに置いてボタンを押すだけの簡単操作で測定が完了します。
  • 3D形状をカラーマップで表現可能。視覚的にわかりやすいデータを共有できるため、連携や対策もスムーズに行えます。
  • 複数の測定データの定量的な比較・分析が簡単に実現します。

複数の測定データを並べて比較したり、設定の一括反映でデータを分析したりが可能です。3D形状データの共有で、測定作業から不良解析、不良対策まで飛躍的な時間短縮・効率化を実現します。