レーダー式レベルセンサ

レーダー式レベルセンサは、レベルセンサの中では新しい原理のレベルセンサです。
レーダー自体の技術は、車の衝突防止のため前の車との車間距離を測定する技術にも使用されています。
この技術をレベルセンサに使用したものがレーダー式レベルセンサです。
非接液で可動部がなく、液体の変化や使用環境の影響を受けずに測定ができます。
1台で複数点の接点出力が可能で、用途を選ばず常時安定検出できるメンテナンスフリーのレベルセンサと言えます。
ここではレーダー式レベルセンサの原理や構造などを紹介します。

原理

センサ底面から電波を送信し、計測物の表面で反射した信号がセンサに跳ね返ってくるまでの時間を直接的、または間接的に測定することで距離を算出します。
レーダー式と呼ばれますが、レーダーを出しているわけではありません。
レーダーとはRadio Detection and Rangingの略で、電波を利用して物体の位置や速度を測定する技術のことを指します。
レーダー式の原理は大きく2つに分かれます。

TOF方式

TOF方式

この方式ではセンサがレーダーパルスを送信し、計測物の表面で反射した信号がセンサに跳ね返ってくるまでの時間を直接測定します。
計測面までの距離をL、光の速さをC、送信から受信までの時間の時間をtとすると、液面までの距離は以下の式で表されます。

L=C×t/2

FMCW方式では

この方式ではセンサが周波数が経時的に変化する連続的な信号を送信します。
計測物の表面で反射した信号はセンサから送信した信号と同じ波形をしていますが、送信信号の波形と比較すると計測物の表面までの距離Lに比例した往復分の時間Δtだけ遅れます。

Δt=2×L/C(Cは光速)

周波数は経時的に変化しているため、計測物の表面で反射した信号がセンサに跳ね返ってきた際に、送信信号と受信信号の波形を比較するとΔtに比例した周波数の変化Δfが発生します。
FMCW方式ではセンサで周波数の変化Δfを測定することで、計測物の表面で反射した信号がセンサに跳ね返ってくるまでの時間を間接的に測定しています。

FMCW方式
縦軸:周波数、横軸:時間

構造

構造

電子回路が入った本体、プロセス接続、レーダーに指向性を持たせて送信するレンズ(ホーン)で構成されます。
構造上、接液しないため、可動部による破損や汚れが付くことがありません。
プラント用にも開発されており、2線式、防爆タイプもあります。
複数の接点出力と、4-20mAのアナログ出力の両方を備えているものもあります。

選定方法

レーダー式レベルセンサは検出できる対象が多岐にわたります。
さらに大きな弱点がありません。
このため、幅広く使用できることが特長です。
商品によって検出距離が異なるため、検出距離や出力有無などにより選定することが多いです。

注意点

近距離特性

レーダー式はセンサから液面までの距離が近い場合、精度が悪化する領域が存在します。
設置時に周囲環境を覚える機能がある製品もあり、その影響を軽減できます。

泡の種類によっては、液面ではなく泡の表面で反射した信号を検出したり、検出が不安定になる場合があります。

まとめ

このページでは、レーダー式レベルセンサの原理や構造、選定方法・注意点について説明しました。
それらをまとめると、以下の通りです。

  • 液体の変化の影響を受けずに非接触で測定が可能。メンテナンスフリーのレベルセンサ。
  • 測定対象面に電波を送信し、反射して戻るまでの時間でレベルを検出する。
  • 汚れや気泡に強く、長期間の安定検知が可能。

検出する液体によって、レベル検査の方法もさまざまです。
最適なレベル検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や他のページに記載しているレベルセンサの知識や事例について、1冊にまとめた資料「レベルセンサ ハンドブック」は、下記からダウンロードできます。

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