温度レコーダーの基礎知識

温度レコーダには、熱電対や測温抵抗体などを接続します。計測した温度は、温度レコーダに記録します。ここでは温度レコーダの仕様の読み方や温度データ収集時の信頼性について、説明します。

温度レコーダの仕様

温度レコーダを選定する際は、温度レコーダの仕様の意味を理解する必要があります。ここでは温度レコーダの仕様の読み方について説明します。

チャンネル数

その温度レコーダが収集することが可能な点数(チャンネル数)を表します。

測定周期

アナログ信号の情報をサンプルする速さのことで、何秒ごとに1点サンプリングするかを示します。サンプリング周期とも呼びます。

A/D分解能

A/D変換を行うときの分解能です。通常bit数で表します。
16bitであればフルスケールの値を2の16乗(65536)分割した値が最小のA/D変換時の分解能となります。

入力種類

その温度レコーダに入力できる信号の種類を示します。

最大入力電圧(定格)

入力の+,-間に印加しても破損しない、最大の電圧値のことです。測定できる電圧値ではありません。

入力インピーダンス

入力インピーダンスとは温度レコーダの入力部に信号を入力した際の抵抗値を示します。

測定確度

温度レコーダの精度を示します。測定確度の表記にはFS:フルスケール(測定領域全範囲)とrdg:リーディング(読取値)の2種類の表現が用いられます。rdg表記の方が、精度が高いことが一般的です。
また、実際の測定確度として、シフト量を± ** digit( ** °C )と加算しているものが多くあります。

例)「±0.1% of FS」と「±0.1% of rdg」でレンジがK熱電対の場合に「100°C」を測定したときの測定確度(精度)を比較します。

  1. ±0.1% of FS  FS=1572°C
    したがって測定確度は±0.1%×1572°C=±1.572°C
  2. ±0.1% of rdg  rdg(読み取り値)=100°C
    したがって測定確度は±0.1%×100°C=±0.1°C

基準接点補償確度

熱電対を使用した温度計測を行う際に関わる精度のスペックです。
熱電対は異なる2種類の金属の接合部(測温接点)と温度レコーダ側の接点(基準接点)との温度差を計測し、そこに基準接点の温度を測定して加算して測温接点の温度を計測します。
基準接点補償確度は基準接点温度の精度を示します。

下記は一般的な温度レコーダの仕様表です。

仕様表
温度レコーダーの具体的な導入方法がわかる

温度データ収集時の信頼性

温度データ収集は長期にわたるケースが多いため、データ収集に対する信頼性は
温度レコーダ選定の大きなポイントになります。

予期せぬ電源OFF時の動作

電源の瞬低等、予期せぬトラブル(電源OFF)が発生したとき、それまで計測していたデータが消失してしまっては大変です。そのようなケースでも収集データを保護できる温度レコーダを選定します。

キーエンス NR-600 シリーズ

キーエンス NRシリーズでは独自のアルゴリズムとスーパーキャパシタによるマイクロUPS回路が、計測データ保存の信頼性を大幅に向上させています。予期せぬ電源OFFが発生してもSDカードへのデータ保存処理を完了します。データの消失やファイルシステム破損の危険性を減らした、信頼性の高い設計です。

電源復帰時の動作

電源の切断トラブルなどで電源がOFFし、再び電源復帰したときに計測停止のままでは困ります。電源復帰時に自動で収集開始ができる温度レコーダを選定します。

電源復帰時の動作

キーエンス NRシリーズでは電源ON自動スタート機能を装備しています。ONに設定すると、電源投入時に自動的に収集を開始します。

大容量メモリ

長期にわたるデータの収集は、データ容量が膨大になります。
大容量メモリを搭載した、あるいは外部メモリに記録できるレコーダーを選定します。

キーエンスのNRシリーズでは、16GBのSDカードに対応しており、下記表の通り、長期間の計測が可能となっています。メモリの残量不足を気にする事なく、データ収集して頂く事ができます。

サンプリング周期 サンプリング周波数 収集時間
1µs 1MHz 1時間30分
10µs 100kHz 15時間
100µs 10kHz 6日と4時間30分
1ms 1kHz 61日と20時間30分
10ms 100Hz 618日と12時間30分
100ms 10Hz 6185日と4時間30分
1s 1Hz 61851日と20時間30分

※データ領域を15400 MBとして計瀬案
※CH数は全て1 CHにて計算
※SDカードは純正品をご使用ください
※NR-EN16の収集時間は約60%の収集時間
※NR-C512の収集時間は約30%の収集時間

温度データ収集後の処理方法

収集した温度データは必ず解析します。
計測機能だけでなく、レポートの作成のし易さなど、解析機能をどれだけ備えているかも大きな選定ポイントとなります。

簡単レポート作成

収集した温度データは解析用に、最後は必ずレポートにまとめます。レポート作成にはなるべく工数をかけず、データ解析に重きを置きたいものです。PCとの親和性が高い(レポート作成が簡単にできる)温度レコーダを選定します。

簡単レポート作成

キーエンス NRシリーズではレポート作成に便利なExcelリアルタイム転送機能を装備しています。収集と同時に日ごろ活用しているExcelの定形フォーマットへ直接データを書き込みます。収集が終了すると自動的にレポートが作成されますのでデータ編集やレポート作成が簡単です。

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