電圧計測のためのデータロガーの選び方

電圧計測に用いられる機器として、オシロスコープや高速波形記録計(メモリハイコーダ)、そしてデータロガーなどが挙げられます。それぞれに膨大な種類があるため、計測目的に最適な装置の選定は難易度が高く、比較検討に多くの時間を要します。
キーエンスは、長年にわたり数多くの研究開発や製造の現場にデータロガーを提供してきました。ここではその知見を基に、データロガーを中心とした電圧計測に最適な機器の選定における重要ポイントを解説します。また、コンパクト・軽量で、拡張性やPCとの親和性を兼ね備えた、キーエンスのデータロガーの特徴についても紹介します。

電圧計測に用いる機器の種類と特徴

電圧計測に用いられる機器の一般的な種類や特徴、用途について、それぞれ下記に示します。

オシロスコープ

電子回路の信号確認や電子部品の特性チェックなど、高速な電気信号の波形観測に用いられます。「変化が起きている時間を正確に測る」など短期の観測に向いています。トリガの種類が豊富で、サンプリング速度や波形表示、ダイレクトな操作性に特化されており、価格は高価です。

オシロスコープ
サンプリング周期 10M 10M 数GHz~ 数 GHz~
チャンネル数 2 ~ 8チャンネル
分解能 8bit(フルスケール× 1/256)
備考 長時間連続記録には不向き

高速波形記録計(メモリハイコーダ)

振動などのアナログ信号や装置の制御信号(ロジック信号)など主に中速の変化の波形観測、または、記録にも用いられます。絶縁入力を持つなど、電圧・振動・制御信号などに特化しているものも多く多機能です。データ収集がメインであれば、データロガーと比べて、オーバースペックかつ高額となるケースがあります。

高速波形記録計(メモリハイコーダ)
サンプリング周期 数 k 数K 数MHz 数 MHz
チャンネル数 数 ~ 16チャンネル
分解能 12 ~ 14bit
備考 多チャンネルの印刷に対応するA4プリンタやHDDなどを搭載し、中長期の波形観測・データ保存に適したものもある。多くの場合、計測ユニットはボード(基板)を差し込む形態。PCとの連携は複雑で、知識と習熟が問われる。

汎用レコーダ

多くの場合、温度などの低速の変化などの観測に用いられ、「記録計」とも呼ばれます。電圧・ロジック信号など、マルチ入力の用途で使われることは稀で、低速の簡易的なデータ観測に使用されます。

汎用レコーダ
サンプリング周期 100ms以上 100ms以上
チャンネル数 1 ~ 64チャンネルもしくはそれ以上
分解能 14 ~ 16bit
備考 低速であるため、電気回路や半導体・液晶画面などの分野には不向き。
また、PCとの親和性が低く、取得したデータの解析やレポート作成には向かないものが多い。

データロガー

電圧をはじめ、温度など低速から中・高速のさまざまな種類のデータを複数のチャンネルで同時かつ高精度に収集することが可能です。
計測ユニットの組み合わせで拡張性が高く、チャンネル間絶縁機能により信頼性の高いデータ収集を可能とすることが、汎用レコーダとの大きな違いです。

データロガー

キーエンスのデータロガー「NRシリーズ」

サンプリング周期 10Hz 10Hz 1MHz 1MHz
チャンネル数 4 ~ 200チャンネルもしくはそれ以上
分解能 14 ~ 16bit
備考 計測ユニットを組み合わせ、電圧・温度などの混在データの収集が可能。本体の表示や操作ボタンが簡素化されたうえPC親和性が低いものも多い。選定のポイントは、計測時とデータ収集後の作業効率。本体での視認性や操作性、PC親和性、データの扱いやすさや解析機能などが充実しているかどうかが重要。

近年のニーズや、従来のデータロガーに対する悩みに応えたキーエンスのデータロガーであれば下記のことが可能です。

  • 本体に便利な表示機能・分析機能を搭載
  • PCとの無線通信や、CSVファイルの圧縮による高速なデータ送信
  • 収集したデータを専用ソフトウェアで分析まで実行可能

PCとの親和性が高く、後作業を大幅に効率化できるデータロガーが注目されています。

電圧計測でのデータロガー選定ポイント①
チャンネル数の拡張性やコスト・機能性で選ぶ

電圧計測にデータロガーを使用する場合、組み合わせる計測ユニットの種類によって、計測できる電圧・チャンネル数が変わります。
データロガーの利点として、目的に最適な計測ユニットを選んで組み合わせることで、高電圧や多チャンネル計測にも対応できることが挙げられます。また、複数チャンネルでも信頼性の高い電圧計測をするにあたり、「チャンネル間絶縁機能」が搭載されているどうかも重要なポイントです。

拡張性や将来性、チャンネル単価で選ぶ

データロガーへの計測ユニット取り付けイメージ

データロガーへの計測ユニット
取り付けイメージ

将来的により多くのチャンネル数が必要になる可能性がある場合、データロガーであれば計測ユニットを増設するだけで簡単にチャンネル数を増やすことができます。計測器本体ごと買い換える必要がないため経済的です。
また、一般に、高機能な高速波形記録計(メモリハイコーダー)でのチャンネル増設と比較した場合、データロガーは高速サンプリング・高分解能はそのままに、チャンネル単価を抑えて増設可能であることもメリットです。

チャンネル間絶縁(CH間絶縁)の有無で選ぶ

複数チャンネルを同時計測する場合、ノイズによる影響を低減することができる「チャンネル間絶縁(CH間絶縁、アイソレータ)」の機能が備わっているかどうかも重要なポイントです。
一般に、汎用レコーダには、絶縁機能が備わっていないことが多いため、電圧を同時計測する際、計測値のシフトや他の入力によるノイズの影響を受ける場合があります。その対策として、チャンネル間絶縁機能を搭載したデータロガーを選択することをおすすめします。

小型・軽量ながら抜群の拡張性と信頼性を実現

関連ページ:チャンネル間絶縁の効果

電圧計測でのデータロガー選定ポイント②
精度とサンプリング速度で選ぶ

「精度」の定義の仕方や捉え方はさまざまで、人によって認識が異なるケースがあります。ここでは、データロガーに求めるスペックを商品カタログで確認するにあたって、重要となる精度の種類や考え方について整理します。

精度の定義を明確化し、必要な仕様を選ぶ

要求する計測値の精細さ、つまり「精度」には、「最小表示桁(読みとりたい最小の桁)」なのか、「絶対的な値」なのかを明確にする必要があります。それにより、計測器に求めるスペックが異なります。

  • 表示可能な最小桁数=「表示分解能」
  • これ以上はズレない絶対的な値=「絶対精度」

これらを明確化したうえで、計測器の「測定確度(確度)」を参照し、必要なスペックを確認します。
スペック表の例を以下に示します。

測定可能範囲 表示分解能
測定レンジ ±1000V −1000.00V〜+1000.00V 50mV
±500V −550.00V〜+550.00V 20mV
±200V −220.00V〜+220.00V 10mV
±100V −110.000V〜+110.000V 5mV
±50V −55.000V〜+55.000V 2mV
±20V −22.000V〜+22.000V 1mV
±10V −11.0000V〜+11.0000V 0.5mV
±5V −5.5000V〜+5.5000V 0.2mV
±2V −2.2000V〜+2.2000V 0.1mV
測定確度 ±0.1% of F.S.

測定確度の行に書かれている「F.S.」は、フルスケールと呼ばれます。上記の表では、測定レンジが±5Vのとき測定可能範囲は-5.5~5.5Vなので、F.S. は11Vです。測定確度は11V(±0.1%)であることがわかります。

サンプリング速度と精度・分解能の関係を理解して選ぶ

一般に、サンプリング速度(周期)と分解能はトレードオフの関係です。同じ測定レンジであっても分解能が低くければ、計測の精度が低下します。そのため、計測対象によって選び分けることが重要です。なお、精度とサンプリング速度を両立させようとすると価格が高くなる傾向にあります。

さまざまな計測要求に対応するサンプリング速度と分解能

関連ページ:「分解能」と「精度」の考え方

電圧計測でのデータロガー選定ポイント③
操作性やPC連携、収集後の作業効率で選ぶ

多くの場合、データロガーは社内の複数の人が使用するため、属人化することなく、簡単に取り扱えるかが重要です。そのため、設定・操作やデータ収集後のPCとの連携、データ分析やレポート作成まで、作業効率が高いデータロガーを選ぶことが重要です。計測時のポカヨケや状態把握、後作業の効率なども考慮しておく必要があります。

設定・操作の簡単さ・表示のわかりやすさで選ぶ

設定・操作の簡単さ・表示のわかりやすさで選ぶ

多くのデータロガーは、本体に簡易なインジケータのみを持ち、操作ボタンも最小限です。PCでの設定・操作を前提としているため、本体では計測状態がわかりにくいことがほとんどです。そのため、計測がスタートしていないことに気づかず、テストを続けていたというケースも少なくありません。
本体のモニタで計測状態や計測データの確認ができ、PCなしでも簡単に設定・操作できるデータロガーを選ぶことで、ポカミス防止と作業効率の向上を図ることができます。

端末との接続方法で選ぶ

端末との接続方法で選ぶ

A:無線LANユニット NR-W1

社内ネットワークを介さずに、
無線接続することも可能。

PCやタブレットなどの端末とデータロガーの接続方法も重要です。USBケーブルやEthernetケーブルでの有線接続のみで使用するのか。または、無線LAN接続でノートPCやタブレット端末から遠隔操作する可能性があるのかを検討します。
たとえば、自動車のエンジンのデータ取得を座席で行う場合、無線接続に対応するデータロガーなら、わずらわしい配線の引き回しなどにかかる時間と手間はもちろん、配線トラブルのリスクも大幅に削減することができます。

データの保存方法で選ぶ

取得したデータどのように記録するかも大切です。接続したパソコンの内蔵ストレージ(HDDやSSD)だけでなく、データロガーに挿入した大容量CFメモリカードにもデータを保存することができます。
また、パソコンとデータロガーの両方で同時データ保存(ミラーセーブ)することで、データ保存の安全性・信頼性を高めることができます。

PCとの親和性や後処理の簡単さ、作業効率で選ぶ

PCとの親和性や後処理の簡単さ、作業効率で選ぶ

ほとんどのデータロガーは、文字通り「データ収集」を主目的としています。そのため、PCでのデータ回収など後作業やデータ分析に手間と時間がかかってしまうことが少なくありません。しかし、PCやExcelとの親和性が高いデータロガーを選ぶことで、作業工数を大幅に削減することができます。

キーエンスのデータロガーは、作業効率を考慮し、PCとの親和性を追求しました。

  • 専用ソフトウェアで簡単接続、詳細なデータ表示が可能。
  • 圧縮CSV保存機能でデータ容量を軽減。PCへのデータ転送時間を大幅短縮。
  • 専用解析ソフトウェアで、PCでの解析作業を大幅に効率化。
  • Excelにダイレクトにデータ書き込みができるなど、作業効率を大幅に向上。

電圧計測でのデータロガー選定ポイント④
可搬性や電源環境で選ぶ

データロガーはさまざまな場所でのデータ計測に用いられます。場合によってはサイズや可搬性が高さが要求されます。また、AC100V電源に接続できない環境において、バッテリー作動に対応できるかも、選定における大切なポイントです。

  • データロガーを据え置き状態のみで使用するのか
  • データロガーの使用場所を移動させる場合はあるか
  • AC100V電源が取れない環境で使用することがあるか
  • バッテリーでの使用が可能かどうか
可搬性や電源環境で選ぶ
可搬性や電源環境で選ぶ

データロガーを移動させて使う必要が生じた場合、大型なものや重量の大きいものは可搬性の問題が生じます。また、AC電源だけでなくバッテリーによる電源供給が可能かどうかも重要になります。

さまざまな環境に対応できる豊富なラインナップ

電圧計測でのデータロガー選定ポイント⑤
電圧以外に同時計測するデータの有無で選ぶ

電圧計測以外にも温度や電流・歪み・加速度など複数のデータを同時に計測する可能性がある場合、必要な機器の構成も変わってきます。
ここでは、導入する機器の選び方による課題と解決、マルチ入力可能なデータロガーを使用した場合のメリットを説明します。

従来の方法における課題
【複数の機器を導入・使用する】

電圧以外の計測は外部機器を用いて電圧に変換し、それぞれに専用のデータロガーを用意するという方法もあります。しかし、この方法では、複数の機器の導入でコストが多くかかります。また、システムや配線の煩雑化やトラブル原因の多様化、計測後に複数のデータの管理・処理に多くの手間と工数がかかるなどの課題がありました。

データロガーによる解決
【1台で複数の種類のデータを一括収集する】

電圧以外の計測を同時に行う可能性がある場合は、マルチ入力可能なデータロガーの選択をおすすめします。
1台で複数の種類のデータを収取できるデータロガーは、単一のデータのみを記録する機器に比べて価格は高くなりがちです。しかし、変換器や専用のロガーの複数台購入を考慮すると、結局は同じぐらいの導入コストとなります。
導入コストが同等程度である一方で、マルチ入力可能なデータロガーには下記のようなメリットがあります。

  • 複数のデータを一括して収集・分析できるため、計測後の工数を削減できる
  • 機器を集約することで、トラブル原因となる配線の数を削減
  • 使用方法に統一感があり、設定・トラブルシューティングもスムーズ
  • 各種入力ユニットも同一メーカーであるためサポートが受けやすい
1台で混在データの計測をスムーズに実現

まとめ

ここまで、電圧計測におけるデータロガーの選び方について説明してきました。選定において重要となるポイントをまとめると、以下の通りです。

①チャンネル数の拡張性・コスト・機能
チャンネル増設における拡張性を考慮。絶縁によるトラブル対策も重要。

②精度とサンプリング速度
精度・分解能の定義を明確化し、求めるスペックを確認。

③操作性やPCとの親和性、後処理の作業効率
設定・操作・表示のわかりやすさ・容易さ。また、PCとの簡単接続やデータ転送・解析機能、Excelとの親和性は、後処理の工数に直結。

④可搬性や電源環境
常にAC電源供給可能な環境か、バッテリー駆動が必要になる可能性はないか。

⑤複数の種類のデータを同時計測
電圧以外のデータも同時計測する際、システム構成はシンプルで信頼性が高いか。

NRシリーズ

キーエンスのマルチ入力データ収集システム「NRシリーズ」は、可搬性に優れたコンパクト設計でありながら、高い拡張性・信頼性を持ちます。そして、PCやExcelとの親和性を追求し、作業効率を大幅に向上させたデータロガーです。研究開発や品質保証、製造現場における電圧計測はもちろん、複数種類のデータの同時収集に「NRシリーズ」が選ばれています。

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