キャップの変色
清涼飲料のペットボトルなどに使用されている樹脂製キャップの変色の検査について説明します。こちらでは、キャップの変色を検査するうえで覚えておきたい基本的な知識、よく起こる不良の種類や発生原因、従来の検査方法と最新画像処理システムを活用した検査事例を紹介します。
製造の概要・基本
キャップについて
キャップとは、ペットボトルをはじめ、瓶や缶などボトル状の入れ物の蓋全般を指す言葉です。ビール瓶に使用されている金属製の王冠、ペットボトルに使用されている樹脂製キャップなど、さまざまな種類がありますが、こちらでは主にペットボトル製品などで使用されている樹脂製ボトルキャップを中心に取り扱います。
ペットボトル用キャップの原材料
ペットボトル用キャップ(以後キャップと呼称)は、ペットボトル本体と同様に樹脂からできています。しかし、ペットボトル本体とキャップの材質は異なります。ペットボトル本体は、名前にもなっている「PET(ポリエチレンテレフタレート)」が原材料です。一方でキャップは、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)からできており、呼称も素材の違いから「プラスチックキャップ」「Plastic Closures」と区別されます。ゴミの分別時にペットボトル本体とキャップを分ける理由も原材料が異なるためです。
よく起こる不良の種類と発生要因
キャップの製造工程でよく起こる不良の種類とその発生原因について説明します。キャップは樹脂でできており、射出成形によって製造されます。樹脂製品のため、変色以外にも変形や割れなどの不良が起こりますが、こちらではキャップの変色を中心とした不良や検査項目をまとめています。
変色(カラーストリーク)
樹脂成形品では、表面の色が均一ではなく、部分的に色が変わる「変色」が起こることがあります。成形品の変色や筋状の模様を「カラーストリーク」と呼び、主な原因は着色剤の分散不足です。対策としては、樹脂や着色剤を変える、ペレタイザー(造粒機)を使って均一に混合するなどです。色ムラは、樹脂温度・金型温度が低い場合にも発生します。そのほか成形品表面に樹脂が流れた方向に銀白のスジが出る現象を「シルバーストリーク(銀条)」、成形品が黒く変色する現象を「ブラックストリーク」と言います。

黒点(パージ剤残り)
射出成形機のスクリュー表面に付着して炭化してしまった樹脂、清掃時に残ったパージ剤、そのほかゴミなどが樹脂に混ざり、成型されたものを黒点(パージ剤残り)と呼びます。対策は、射出成形機の定期的な清掃、異物混入の防止などが挙げられます。

焼け
焼けとは、成形品の端部が黒く変色する現象です。空気やガスが断熱圧縮するときに熱が生じ、樹脂が黒く焼け焦げてしまうことが原因です。空気抜けが悪い、ガスベントがない、樹脂温度が高い、樹脂の滞留時間が長い、射出速度が高い、製品表面に油分が付着しているなどの原因が考えられます。

汚れ
ゴミやチリなどの異物が混入して成形品に付着している状態です。汚れが付着する原因は、製造工程や搬送など多岐にわたるため、工程ごとに外観検査を行い確認することが大切です。

従来の検査方法
キャップの変色は、従来は目視検査やカラーセンサによる検査システムが用いられてきました。少ロットであれば目視検査でも可能ですが、大量生産では不良流出のリスクがあるのでカラーセンサによる検査が効率的です。しかし、カラーセンサでは、凹凸やハレーションの影響を受け、わずかな色の違いや微小な色ムラを発見できないという問題もありました。

最新画像処理システム検査事例

画像処理システムを用いることで、従来のカラーセンサでは検出が困難だったわずかな色の違い、微小な色ムラも検出可能です。キーエンスの画像処理システム「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」は、8色LEDと専用の制御ICを使った「マルチスペクトル照明」に対応しています。この照明のカラー判別能力を「マルチスペクトルモード」で使用すれば、判別が難しい同系色の色ムラも正確に判別可能です。そのほか、「LumiTraxTMモード」で使用すれば、凹凸やハレーションの影響を受けずにキズやスジなどの外観検査も可能です。検査項目に応じて8色の照明を使い分けられる「通常点灯モード」も便利です。
マルチスペクトルモード
わずかな⾊違いも正確に判別
- まったく新しい
カラー検査アルゴリズム - 高速⽩⿊カメラ+ 8波⻑の照明を使⽤することで、従来のカラーカメラ(RGB)と⽐較してカラー判別能⼒を⼤幅に向上。わずかな⾊の違いも簡単に判別できるようになりました。

- 従来のカラーカメラ
多少の差は⾒受けられるものの、ほぼ同⾊として抽出されてしまっています。
- マルチスペクトルモード
⾊違いを明確に切り分けできています。
また、「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」は、登録した色ごとに明度・明度への対応幅を調整できる機能「明度範囲・色範囲対応機能」を搭載しています。この機能を使えば、外観検査の不安定要素になる周囲環境の変化や対象物のばらつきを事前にシミュレーションし、対応できるので安定した外観検査が実現できます。
- 明度変動調整画面
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- 明るさを最大±20%変化させた画像をコントローラ内部で疑似的に生成すると同時に、明度範囲のパラメータを変えた色抽出状態を複数表示。
- 検出したい箇所がしっかり出ている列を選ぶだけ。
感覚に頼っていたパラメータ調整から解放されます。
まとめ
このページでは、ペットボトルなどに使用されている樹脂製キャップの変色の検査に必要な基礎知識や、トラブルと外観検査の方法についても紹介しました。それらをまとめると、以下の通りです。
- キャップの変色は、従来は目視検査やカラーセンサによる検査システムが用いられてきた。
- カラーセンサでは、表面の形状やハレーションの影響で僅かな不良が検出できないことがある。
- キーエンスの画像処理システムなら、凹凸・ハレーションの影響を受けず、微小な色ムラや汚れが安定検出できる。
ワークによって、外観検査の方法もさまざまです。最適な外観検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や、他のページに記載している外観検査の知識を1冊にまとめた資料「外観検査のすべて」は、下記からダウンロードできます。画像処理システムの導入事例集とあわせてご覧ください。