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熱処理の基本

熱処理の方法

確実な熱処理を施す工程とは

鋼材の熱処理はきわめてデリケートな作業で、加熱や冷却の方法、工程設計の良し悪しで品質に大きな影響が出ます。ここでは、熱処理工程で押さえておきたいポイントや加熱・冷却の進め方などについて詳しくご説明します。

熱処理工程について

高い品質と安定した性能を実現するためには、熱処理プロセス以外にも注意するポイントがあります。素材選びや工程設計、前処理、製品検査、出荷工程など、全体像を理解していなければ品質を担保することは困難です。そこで、まずは一般的な熱処理の全体像を流れに沿ってご説明します。

Step1注文・準備 <熱処理設計の成否を握る>
「どの材質・素材を使うのか」「どんな形状に加工するのか」「切削加工でねじ穴を作るのか」「曲げ加工で変形させるのか」「部品の端はどう処理するのか」といった注文情報は、熱処理パターンを決めるうえで欠かせません。これらの情報に加えて数量や工期なども考慮し、最適な処理能力を持った熱処理工程を設計します。
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Step2前処理 <鋼材品質を確保>
鋼材の表面に付着した圧延油や脱炭層、錆びを脱脂処理や研磨で取り除き、熱処理に悪影響が出ないようにします。ほかにも熱処理を実施するうえで問題になる形状やキズ、素材の不均一などを適切に前処理し、鋼材品質の均一化を図ります。
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Step3本処理 <正しい工程設計が不可欠>
熱処理が適切に行われるかどうかは、事前の工程設計の良し悪しで決まります。たとえば設備は何を使うか、どの種類の雰囲気ガスをどの順番で何分程度流すかなど、初期条件を厳密に設定することが重要です。
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Step4出荷検査・出荷
<規格・取引基準を満たした製品のみを出荷>
熱処理中には製品検査ができません。それだけに完成した熱処理品が材質的に規格や取引基準を満たしているかどうか、あるいはキズがあるかどうかなどを出荷時の検査で厳しくチェックする必要があります。

熱処理の赤め方と冷まし方

熱処理は「加熱=赤め方」と「冷却=冷まし方」で品質が決まります。ここではそれぞれがどのようなプロセスなのかを解説します。

赤め方

鋼材は高温で加熱し続けると表面の酸化が進み、加熱γ粒径が粗大化して表面の性質や材質が劣化します。そこで可能な限り、加熱温度を低く抑えることが焼入れの基本になります。そこで赤めるときには、オーステナイト化するギリギリの温度で熱処理することが大切です。

①亜共析鋼
炭素濃度0.8%以下の亜共析鋼では、A3の右下がりの線を境界にフェライト(α鉄)からオーステナイト(γ鉄)に変化します。そのため、焼入れではA3の線を最低温度として熱処理を実施します。

②過共析鋼
炭素濃度0.8%を超える過共析鋼は低温状態ではパーライトとセメンタイトから構成され、A1を超えるとパーライトはオーステナイト化します。セメンタイトは変化せずにそのまま残ります。Acmを超えれば、すべての組織がオーステナイト化されますが、焼割れや残留オーステナイトの増加などのリスクが高くなります。

焼入れでは、亜共析鋼ならA3以上、過共析鋼ならA1以上の温度に加熱していくのが一般的です。

赤め方

冷まし方

焼入れした鋼材を冷却する方法を「冷まし方」と呼びます。そのポイントはパーライトやフェライトが析出をはじめるTs曲線を冷却曲線が横切らないようにすることです。Ts曲線の先端部分がある550℃までは横切ることがないので一気に冷やし、その後は横切らないようにゆっくりと冷やしていきます。こうすることで、フェライトを析出させずにオーステナイトを残すことができます。また、Ms点を超えてからは、水やオイルなどの冷却媒体から引き上げて、空気で熱を取り除いていきます。これは急激なマルテンサイト変態を避けるためです。

冷まし方

このように冷却速度を変化させる焼き入れを二段焼き入れと言います。焼入れでは550℃付近までは急冷、Ms点以下ではゆっくりと冷却する徐冷が基本になります。

二段焼き入れ方

鋼は冷やし方で組織が異なる

熱処理の加熱と冷却については前述したとおりですが、鋼材は焼入れ後の冷却の仕方で組織が大きく変化します。ゆっくり冷却する「徐冷」では、素材の拡散変態が起こりフェライトやパーライトなどの軟らかい組織が作られます。素早く冷却する「急冷」なら、無拡散変態を起こしてマルテンサイト化して硬い組織になります。

このように赤め方と冷まし方の組み合わせで、「焼入れ」「焼もどし」「焼なまし」のように熱処理の名称が変化します。熱処理によって鋼材の結晶状態も変化するので、赤めて冷ますことでさまざまな特性の鋼材を生み出すことができます。

焼入れ・焼もどし・焼なまし・焼ならしについて

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熱処理工程における各種管理で、お困りごとはございませんか?

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