• 文字サイズ
  • 標準
  • 大きく

熱処理設備

熱処理炉の変遷

日本の工業化を支えてきた熱処理炉の歩み

日本において、熱処理炉が一般的になったのは戦後になってからです。以来、今日まで鋼材の素材改質・表面強化・部品硬化などを目的とした熱処理技術は、熱処理炉と共に躍進してきました。こちらでは現在までの熱処理炉の歴史と変遷をご覧ください。

製鉄の歴史

熱処理の創成期
熱処理の創成期

ボルネオにおける直接製鉄
(Schwanerの1843年〜1847年の旅行記)

現代の熱処理炉
現代の熱処理炉

熱処理炉の歴史を知るためには、まず製鉄の歴史を理解する必要があります。人間と鉄の関わりは古く、紀元前3000年以前の古代エジプトから鉄製(隕鉄:鉄質隕石)の装飾品が発見されています。それから現在まで永きにわたり、人間は鉄を使い続けてきました。そして鉄製品を作るためには、まず鉄鉱石や砂鉄から鉄を取り出す「製鉄」の技術が不可欠。その手段として高炉やコークス炉、焼結炉など、鉄鉱石から鉄を取り出すいわゆる“炉”が発明されました。日本では5世紀頃から製鉄がはじまり、日本刀の生産などで室町時代から鉄の需要が急速に増え、炉の大型化が進んだと言われています。

ここまでは鉄鉱石や砂鉄から鉄を作りだす製鉄の炉の話です。このように鉄が一般的に使われるようになれば、より使いやすくするために加工が必要になります。そこで鉄をより硬くする「焼入れ」、靱性を与える「焼もどし」などの熱処理技術が開発されました。例えば日本刀もその一つです。鋼を硬く、鋭く、粘り強く仕上げるためにさまざまな優れた熱処理技術が生まれました。

そして熱処理と共に「熱処理炉」も進化してきたのです。以下では、主に戦後日本における鋼材の熱処理と熱処理炉の進化をたどります。

素材改質技術(昭和30年代〜現在)

昭和30年代「連続熱処理システムの夜明け」

焼入れ・焼もどし炉

戦後間もない当時の熱処理は工程ごとに面倒なセッティングが必要でしたが、加熱→冷却→洗浄→焼もどしを一気に行える連続熱処理システムが誕生したおかげで、生産性は飛躍的に改善されました。

昭和40年〜50年代「無酸素焼入れ・焼もどし炉誕生」

大気炉での焼入れよりもムラが少なく、安定した硬度が得られ、しかも製品表面の酸化がない無酸素焼入れ・焼もどし炉が誕生。処理品の品質が格段に向上しました。

昭和60年代「ローラーハース式炉の誕生」

脱脂・昇温・浸炭・拡散・降温・油槽の各ゾーンを仕切り扉で分離したローラーハース搬送式炉が普及。各ゾーンを分離することで雰囲気炭素濃度と温度の制御が向上し、処理リードタイム短縮や品質安定化を達成しました。炉壁もそれまでのレンガから軽量で断熱性に優れたセラミックファイバーが用いられ、バーナー類も一新されたことで生産性・省エネ性もアップしています。熱処理炉の設計や材質にも進展が見られたのもこの頃です。

〜平成10年「脱脂炉の進歩」

鋼材の表面に付着した圧延油や熱処理への悪影響を除去する専用の脱脂炉(燃焼脱脂炉、真空脱脂炉など)が開発され、熱処理の前処理が格段に効率化しました。

〜現在「炉の高性能化・高機能化」

メッシュベルト式焼結炉
メッシュベルト式焼結炉

ローラーハース式焼結炉やメッシュベルト式焼結炉など、熱処理の工程を連続処理できる優れた製品が次々と誕生・普及。ITによる温度制御などの技術も処理品質に大きく貢献しています。

表面強化技術(昭和30年代〜現在)

昭和30年代「浸炭炉の普及」

浸炭炉の普及

ガス浸炭炉・連続ガス浸炭炉・浸炭浸窒炉などの誕生で、鋼材の強度を向上させるために、鋼材の表面に炭素をにじみ込ませる工程(浸炭炉浸炭処理)が格段に効率化しました。

昭和40年〜50年代「センサー制御による浸炭炉の進化」

CO2メーター雰囲気制御浸炭炉・O2メーター雰囲気制御浸炭炉など気体センサーを搭載した浸炭炉が普及し、浸炭処理がより精密に制御できるようになりました。

昭和60年代「表面加工技術のエポックが続々誕生」

無数の鉄または非鉄金属の丸い玉を高速度で表面に衝突させることで鋼材の表面を強化するショットピーニングや、プレスしながら焼もどしを行い焼入れで生じた歪みを補正するプレステンパー、防錆処理をより強固にするイオン窒化処理など、表面強化テクノロジーが次々と台頭しています。

〜平成10年「浸炭炉の高性能化」

炉内変成型連続ガス浸炭炉・別室型浸炭炉・連続浸炭炉集中監視制御システムなど、浸炭炉の高性能化やITを活用した高度化が大幅に進展したのもこの頃です。

〜現在 「浸炭炉の高性能化2.0」

浸炭炉の高性能化2.0

現在では用途や使用条件に即した活用が可能な、さまざまなタイプの浸炭炉が登場します。多セルタイプ減圧浸炭炉や炉内変性型と呼ばれる連続ガス浸炭炉などはその一例です。

部品硬化技術(昭和30年代〜現在)

昭和30年〜50年代「高周波焼入れの黎明」

自動車部品の製造工程

高周波誘導電流を利用して鋼材の表面だけを急速に熱し、急速に冷やすことで表面を硬化させる金属処理「高周波焼入れ」が一般化しました。

昭和60年代〜平成10年「高周波焼入れの全自動化」

FAの進展と同時に、熱処理や高周波焼入れの分野にも全自動化が普及。生産性の大幅な向上がもたらされました。

〜現在 「高周波焼入れ品質計測技術の確率」

電磁場を活用した加熱処理監視装置などの登場で、高周波焼入れやその他の熱処理について品質チェックがリアルタイムでできるようになりました。

さまざまな炉の種類

鋼の熱処理に用いる炉は加熱炉・乾燥炉・熱処理炉・焼結炉・溶解炉の5つに分類されます。以下では各炉について概要を説明します。

加熱炉 加熱して変形させる炉を指し、圧延時に使用する圧延加熱炉と鍛造時に使用する鍛造加熱炉があります。加熱方法にはバーナー方式、電気式、誘導式などがあります。焼きばめ工程で多く活用。
乾燥炉 鋼材を乾燥させることを目的とした炉。ヒーターによる直接加熱または熱風吹き付け、その両方を組み合わせる方式が知られています。塗装の焼付乾燥やコーティング材の乾燥などに用います。
熱処理炉 焼入れ炉・焼もどし炉・焼きならし炉などの焼入れや、めっきなどの表面処理にも用いられる一般的な炉。対象物の酸化を抑えることができるので真空焼入れ炉などでも用いられます。加熱には一般的な方式に加え、高周波が熱源として多く用いられます。
焼結炉 焼結体を作る炉。固体の粉末を融点より低い温度で加熱し固めたものを焼結体と呼び、もとの固体よりも密度や強度・弾性度が高くなります。バーナーやヒーターで加熱しますが、マイクロ波を用いることもあります。
溶解炉 対象物を溶解するための炉。溶解とは2つ以上の物質が溶けて一体化すること。素材を熱で溶かしブレンドするための炉と言えます。鉄鉱石から鉄を生み出す高炉もまた溶解炉の一種。一般に溶解炉には燃焼炉と電気炉があり、溶鉱炉などでは石炭、コークスを用いる燃焼炉が用いられています。また電気炉には誘導炉やアーク炉が使用されます。

熱処理入門トップへ戻る熱処理入門トップへ戻る

熱処理入門トップへ戻る熱処理入門トップへ戻る

熱処理工程における各種管理で、お困りごとはございませんか?

熱処理工程における各種管理で、お困りごとはございませんか?