異物付着

ホコリなどの異物の付着は、ものづくりの現場でしばしば課題になります。
異物付着について、どのようなことに気をつければ良いのか、ポイントを確認しましょう。

異物付着
レンズ洗浄後にホコリが付着する例

異物付着のメカニズム

そもそも異物付着はどのように発生するのでしょうか。
異物付着のメカニズムは、異物が付着する対象が「導体」か「絶縁体」かによって異なります。

導体の異物付着

導体は電気を通しやすく、導体内部では電気が自由に移動しています。
プラスに帯電した異物が導体周辺に近づくと導体の表面はマイナスに、反対にマイナスに帯電した異物が近づくと導体の表面はプラスになります。ちょうど磁石のN極とS極が引き合うのと同じ状態で、導体の表面は異物と逆の極性の静電気を帯びたような状態になります。

導体の異物付着

このように、近づいてくる異物の帯電によって、逆の極性の電気が導体表面に引き寄せられる現象を「静電誘導」といいます。
「静電誘導」が起こると、異物と導体の間にクーロン力がはたらき、導体に異物が引き寄せられて付着します。

この時、いくら導体側を除電しても、電気の移動が自由であるという導体内部の特性上、静電誘導が起こるため、帯電した異物との間のクーロン力はなくなりません。したがって、異物そのものを除電しなければ、異物付着を防ぐことはできないのです。

異物を除電すると付着を防止できる
異物を除電すると付着を防止できる

絶縁体の異物付着

絶縁体への異物付着は、異物と絶縁体の両方が帯電している場合に発生します。帯電した絶縁体に対し、逆極性に帯電した異物が近づくと両者の間にクーロン力がはたらき異物が付着します。

絶縁体の異物付着

この場合は、絶縁体か異物か、どちらか一方を除電して静電気をなくすことでクーロン力がはたらかなくなり、異物付着を防ぐことができます。

どちらか一方を除電すると付着しなくなる
どちらか一方を除電すると付着しなくなる

異物付着の対策

次に、問題となる異物がどんな場所に漂っているのか、対象が導体か絶縁体かなどに着目し、対策を考えてみましょう。

漂う場所別の対策

製造現場で問題となるのは、主に以下の場所に漂う異物です。

  • 広い空間を広範囲に漂っている異物
  • 製品近くを局所的に漂っている異物

それぞれどのように対策をしているのか紹介します。
いずれの場合も除電器(イオナイザ)を使用することで対策可能です。

広い空間を漂う異物への対策

異物が浮遊している空間に対して、バータイプの除電器(イオナイザ)を使用し、部屋ごと広範囲に除電します。異物自体を除電することで、静電気による異物付着を防ぎます。

広い空間を漂う異物への対策

製品近くを局所的に漂う異物への対策

対象物がプラスチックやゴムなどの絶縁体で、静電気が発生している場所が明確な場合は、局所的に除電をすることで異物付着対策が可能です。
広範囲の除電に比べると、除電器の使用数量を減らしても効果が見込めます。

製品近くを局所的に漂う異物への対策

導体・絶縁体別の対策

先に述べたとおり、導体の場合は異物自体を除電することで、絶縁体の場合は異物か絶縁体のどちらか一方を除電することで対策が可能です。
つまり、対象の近傍の空間を除電しておけば、異物も対象も除電できるため、対象が導体であっても絶縁体であっても対策になります。必ずしも大きな空間全体を除電する必要はないのです。

対象物の近傍を除電すれば導体も絶縁体も対策可能
対象物の近傍を除電すれば導体も絶縁体も対策可能

人の帯電対策

一方で、広い空間の除電が必要な場合があります。それは、人の帯電対策です。
人は動くことで常に帯電し続けており、異物を引き寄せたり、帯電したホコリを発生させたりしています。方々動き回る人を絶えず除電し、また人への異物付着を防止するためには、広い空間を広範囲に除電しておく必要があるのです。

次のグラフは、人が歩くことでどれだけ帯電するかを調査した結果です。一歩進む間にも帯電量が変化し続けていることがわかります。

人の帯電対策

人の帯電量は歩くだけでも激しく変化します。その影響も大きいため、広範囲を除電できる除電器(イオナイザ)を設置して空間全体を除電しておくことが必要です。

広い空間を除電するには、イオンを遠くまで運ぶ必要があります。除電器(イオナイザ)には、プラスイオンとマイナスイオンを作る周期(周波数)を変更できる機種があります。周波数を低くすると、同極性のイオンを放出している時間が長くなるので、お互いに反発し合ってイオンが広がりやすくなります。一方、周波数を高くすると短い時間でプラスとマイナスが切り換えられるため、イオン同士が引き合って遠くまで届きません。広い空間を除電する際には、周波数設定を低くすることがポイントです。

人の帯電対策

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