物流コストの削減

物流コストの削減

物流コストのうち、全体の5~6割は輸送・運送費が占めます。しかし、人員不足や燃料費の増減などの問題が伴うため、その削減は容易ではありません。
一方、それ以外の物流コストの多くは、倉庫や物流センターでの業務に関係しており、コストにおける課題は少なくありません。しかし、昨今は倉庫の課題を解決するテクノロジーの進歩により、コスト削減の容易化が進んでいます。ここでは、物流コストの内訳や倉庫での諸課題を洗い出し、それらを解決することで実現するコスト削減の方法を紹介します。

倉庫における物流コストとは

有形・無形を問わず物流業務で発生する物流コストは、大きく「輸送・運送費」や「保管費」、「荷役費」、「物流管理費(物流管理人件費)」の4つに分類されます。 物流コストの約半分は、輸送・運送費が占めています。一方、それ以外の分類のほとんどは、倉庫や物流センターそのものの使用にかかる費用や、倉庫での荷物(製品や商品)の管理、庫内作業などの業務と人件費に関係しています。これらの物流コストの分類について説明します。

輸送・運送費

運送会社の配送賃や、自社便であれば、それにかかる車両費や燃料費、高速料金、駐車料金、人件費などを含むコストです。そのほか、チャーター便や路線便(混合便)の運賃、国内外への輸送にかかる航空便や船便の費用もこれに含まれます。

保管費

荷物を倉庫に保管する際にかかるコストです。
物流業者の倉庫など保管場所を借りている場合には賃借料が、自社所有の場合にもその場所の維持・管理費がかかります。また、保管している製品や商品のサイズや重量、保管日数、保管スペースや坪単価などによって決まる費用として保管料もあります。さらに、在庫管理や保管する荷物の出し入れにかかる入出庫の費用も保管料に含まれます。

荷役費

荷物を倉庫や物流センターに入荷したり出荷したりする際に生じるコストです。
入庫する荷物の数量と1ケースあたりの単価などを掛けることで入庫費が算出されます。出庫費も入庫費と同じような方法で算出され、その料金はピッキング料とも呼ばれます。
また、倉庫や物流センターでの梱包費や、シールやタグを付けるなどの作業は流通加工費と呼ばれます。さらに、国外への輸出時にかかる費用(通関料・関税・ドレージ料・取扱手数料・港湾設備利用料など)も荷役費に含まれます。

物流管理費

物流の管理にかかるコストで、そのほとんどが人件費であるため物流管理人件費とも呼ばれます。ただし、通常、物流に関する分析・企画・戦略にかかる人件費はこれに含まれません。
製品の製造における物流管理費には、2つの区分があります。1つは、「調達物流費」といい、製品の原材料の調達にかかる物流コストです。一般に、物流プロセスの統合管理を行うため、他の原価項目とは区別して計上されます。
もう1つは、「社内物流費」といい、製品として流通する前段階での物流コストです。これには輸送費だけでなく、倉庫での諸経費や保管費などさまざまな管理コストが含まれます。

物流コスト削減における倉庫での課題

ECサイトやインターネットのショッピングモールの利用者増加と競争激化を背景に、ますます製品や商品の流通量が増加しています。それにより、倉庫での入出庫管理やピッキング、出荷の正確さや迅速さは、競合他社との競争においてとても重要な要素です。しかし、それを実現するために「本来は不必要な物流コスト」が増加すると、利益を圧迫しかねません。
自動化やシステム化など効率化が進んでいるはずの倉庫や物流センターであっても、増加する倉庫での物流コスト。その代表的な例として挙げられるのが、荷物の量に比例して増加する読み取りエラーや処理能力による制限です。それらを補うために増加する人手による作業(荷役費や人件費)や保管スペース(保管費や管理費)などの増加は、大きなコスト負担となるため、解決すべき課題といえます。

庫内作業の効率化と物流コスト削減における、4つの代表的な課題を以下に挙げます。

課題1:コードの読み取りエラー

課題1:コードの読み取りエラー

雨などの悪天候時や積み込み・運搬時の摩擦などで発生するバーコードのかすれ・にじみ、バーコードラベルの損傷などは読み取りエラーの原因となります。読み取りエラーが生じた荷物は人手での確認や管理、再度のラベルの発行・貼り付けといった作業を要し、人件費の増加につながります。印字工程の改善だけでは防ぐことができないケースがあるため、重要な課題といえます。

課題2:ラインスピードの制限

課題2:ラインスピードの制限

一定時間内により多くの荷物を倉庫で取り扱うには、ラインの搬送スピードを向上させなければなりません。しかし、コードの読み取り速度・処理速度が遅いと、それがボトルネックとなってラインの搬送速度を上げることができません。荷物が増加しても、取り扱えるスピードと量が制限され、迅速に入出庫ができないばかりか、在庫量が増え、保管スペースや管理のコスト増加にもつながります。

課題3:荷物の多様化への対応力

課題3:荷物の多様化への対応力

物流倉庫では、取り扱う荷物の量だけではなく、多品種化によってサイズや形状の種類も多様化しています。これが原因となり、従来はインラインでのコード読み取りに問題がなかった倉庫でも、突然読み取りエラーが頻発し始めることがあります。荷物の種類が増えるたびに人手による作業が増加すると、人件費が増えるだけでなく、管理の煩雑化や出庫の遅延にもつながります。

課題4:コスト削減策の行き詰まり

課題4:コスト削減策の行き詰まり

思いつく限りのコスト削減策を実施しても期待通りの効果が得られず、新しいアイディアが枯渇してしまうケースは少なくありません。その要因の1つとして、倉庫の既存設備・装置による制約が、柔軟な発想を妨げていることが挙げられます。このボトルネックを解消するには、必ずしも大規模な設備投資が必要であるとは限りません。

1.コードの読み取りエラーの課題と解決のポイント

【課題】悪条件による読み取りエラーで、人員コストが増加

悪天候や搬送時の摩擦、印字状態などにより、バーコードのかすれ・にじみ、ラベルのしわ・破れなどが生じます。 バーコードの状態が悪い場合以外にも、パッケージとバーコードのコントラストが低かったり、光が乱反射するストレッチフィルムに包まれた状態だったりした場合、読み取りが難しくなります。それが原因となってインラインでコードの読み取りエラーが生じてしまいます。

読み取れなかった荷物は、作業員が目視確認して、ラベルを再発行・再添付するなど、工程の自動化によって不要になったはずの手作業が必要となり、人員配置でコストが増加してしまいます。

かすれ
かすれ
インクジェットのにじみ
インクジェットのにじみ
しわ
しわ
やぶれ
やぶれ
低コントラスト
低コントラスト
ストレッチフィルム
ストレッチフィルム

【解決】コードの状態による影響を激減させ、スループット向上・物流コスト削減

さまざまなコンディションのコードをインラインで読み取ることができれば、荷役作業の重複や本来不要であるはずの人件費を削減することができます。

物流現場の声と先進的なテクノロジーを活かした物流向けコードリーダ「SR-5000シリーズ」は、従来は読み取りにくかったコードの「かすれ・にじみ」のほか「しわ・やぶれ」など極限の悪条件であってもコードを読み取ります。もちろんコントラストの低いコード印字やハレーションが生じやすいフィルム越しのコードであっても、読み取りエラーを回避し、スループットを向上。倉庫での物流コストのムダを削減します。

従来:エラー
従来:エラー
かすれやにじみでノイズが生じ、不明瞭となり、読み取り不可。
SR-5000シリーズ:OK
SR-5000シリーズ:OK
かすれやにじみを除去し、コードを鮮明に読み取り可能。

「SR-5000シリーズ」であれば、しわ・やぶれ・フィルム越しといったさまざまな悪条件下でもコードの読み取りが可能です。

「SR-5000シリーズ」は、さまざまな状態のコードをコンベアラインの広範囲から読み取る高い性能を持ちます。このような物流の現場に特化した性能で、倉庫での読み取りエラーによる物流コストの課題を解決します。
「SR-5000」の詳細は、カタログをダウンロードしてご覧ください。

2.ラインスピード向上における課題と解決のポイント

【課題】コードリーダの処理能力にラインスピードが制限される

ラインを高速化すれば、1日により多くの荷物を扱えます。たとえば、ラインスピードを1.2倍にできれば、1日あたり1000個の荷物の処理能力が、1200個に増加します。365日稼働の場合、その差は1年で73000個。売上増加だけでなく、年間にかかる倉庫の保管・管理コストも考慮すると、無視できる数とはいえません。

従来のコードリーダは、撮像とデコードを交互に繰り返したり、デコードに時間がかかりすぎたりすることで、一定時間内に処理できる荷物の数に制限が生じました。ラインスピードがコードリーダの処理速度を超えると、コードを逃したり、処理が間に合わないことで読み取りエラーが生じてしまうためです。このようにコードリーダの処理能力に合わせ、物流ラインスピードを減速せざるを得ないことが課題でした。

ケース1:撮像とデコードを交互に行い、コードを逃してしまう。

ケース1:撮像とデコードを交互に行い、コードを逃してしまう。

連続的に画像を並べると、緑の枠で囲った1枚だけが、唯一コードの読み取りが可能であることがわかります。ラインスピードが処理速度よりも速い場合、前後の荷物のコードを逃すことになってしまいます。

ケース2:撮像とデコードを同時進行させても、デコードに時間がかかり荷物の搬送スピードに間に合わない。

ケース2:撮像とデコードを同時進行させても、デコードに時間がかかり荷物の搬送スピードに間に合わない。

【解決】高速かつ安定したデコードで、ラインスピードとスループットを向上

物流向けコードリーダ「SR-5000シリーズ」は、最大13個のマルチコアを搭載し、圧倒的な処理能力で複数並列デコード(特許出願中)を実現します。従来に比べ100万画素あたりの転送時間が、6.5msから2.0msに、つまり約1/3の時間での高速転送が可能になりました。これにより、ラインスピードを上げ、より多くの荷物のコードを読み取ることができます。

「SR-5000シリーズ」は、この複数並列処理により、ラインスピードを上げてもコード逃しやエラーの発生を回避します。それにより、インラインでの安定した高速読み取りが実現します。
1日に取り扱う荷物の量を増加できると同時に、スループット向上により、コード逃しやエラーの対応にかかる人員や荷物の保管・管理コストを削減することができます。

3.荷物の多様化における課題と解決のポイント

【課題】荷物のサイズや形状、位置のバラつきでうまくコードを読み取れない

近年では、物流倉庫で取り扱う荷物の大きさや形状は多種多様になりました。梱包サイズの種類を減らし、小さな製品や商品も一律に大きな箱で梱包すると、輸送・運搬や倉庫での保管スペースにムダなコストが生じます。しかし、この問題の解消とコスト削減を両立するには、荷物の多様化へのスマートな対応が必要となります。

通常、荷物が多様化すると、コンベア上での荷物のコードの向きを揃えるガイドなどの増設が必要となります。設備が複雑化するうえ、向きを揃えてもコードの位置や高さのバラつきは解消できないため、コード読み取りエラーが生じる場合があります。エラーが多発すると人手による作業量が増え、人員コストが増加します。こうしたジレンマは、物流コスト削減において大きな課題といえます。

従来の対策と課題1:荷物の幅寄せ

コードリーダとの距離を一定にするためガイドを導入して幅寄せするといった対策が挙げられます。しかし、近年は荷物の形状も多様化しているため、コードを上手く揃えられず、人の手で揃えて読み取らせるなどの手間を要します。

A
コードリーダ
B
ガイド
C
荷物を手前に揃える

従来の対策と課題2:コードリーダの増設

コードリーダの数を増やすという対策も見られます。多面のコードに対応できる反面、設計・設置に時間がかかります。また、1台でもトラブルが起これば、すべてのコードリーダの稼働が止まってしまいます。
このように読み取り装置が煩雑化すると、トラブル時の原因特定と復旧に人手と時間を要し、荷物の取り扱い遅延につながりかねません。

【解決】荷物のサイズ・形状、コードの向きを問わず安定読み取り。設備や人員コストの増加を回避

物流向けコードリーダ「SR-5000シリーズ」なら、コンベア上のさまざまな荷物のコードを安定して読み取ります。超広視野・超深度を実現し、荷物のサイズ(コードリーダとコードの距離)が異なる場合や、バーコードの位置がズレている場合でも、1面につき1台で安定して読み取り可能です。
これにより、幅寄せのガイド設計や読み取り装置の増設・保守にかかる時間、エラー対応人員など、倉庫での物流コスト削減を実現します。

搬送ライン上の設計は下記の3つのタイプから最適なコードリーダを選ぶだけ。広視野に対応するため、1台または少数台を設置し、既存のシステムに接続するだけで導入が完了します。

※視野・深度の代表値:バーコードのナローバー幅0.339mmの場合
A
SR-5000 500万画素タイプ 2448×2048pixel
B
SR-5000W 890万画素タイプ 4096×2160pixel
C
SR-5000X 1680万画素タイプ 5456×3076pixel

4.コスト削減策における課題と解決のポイント

【課題】コスト削減の隠れたボトルネック、コード読み取り

倉庫での物流コスト削減策を検討するにあたり、コード読み取りの工程には注目すべきポイントが少なくありません。たとえば、図のようなちょっとした作業を見直すことで、エラー対応にかかる人員のコストや、装置設計・設置や導入にかかるコスト、出荷や輸送前の手作業での読み取りの工数など、年間で考えると想像以上にコストを増加させている場合があります。

エラーが発生するたびに人が対応
エラーが発生するたびに人が対応
設備設計費・機器導入費
設備設計費・機器導入費
手に取って1つずつ読み取り
手に取って1つずつ読み取り

具体的にどの程度のコストが削減できるのか、コード読み取りがボトルネックとなっていた倉庫・物流センターの2つの例を以下に示します。

ケース1:0.9%の読み取り率向上でコスト削減

たとえば、1時間当たり1万個の荷物を処理する物流センターで、コードリーダの読み取り率を99%から99.9%に向上できたとします。
すると、1日あたりのエラー品数を1200個から120個、つまり1/10に減らすことができます。エラー品再投入の単価が50円の場合、年間1296万円ものコストが削減できます。現在使用しているコードリーダの読み取り率を確認し、改善の余地がないか確認することは重要です。

ケース2:出荷や搬送前検品の手段と人件費を見直してコスト削減

検品時、ハンディスキャナに持ち替えてコードを読み取る場合と、荷物を移動させる際にコードリーダが自動かつ瞬時に読み取る「ハンズフリー読み取り」を比較すると、必要な人員の数と検品数、つまりコストに大きな差が出ます。繁忙期や予期せぬ受け入れ増加時には、その差は膨大となります。
たとえば、1日あたり1万4000個の荷物を扱い、作業員1人につきハンディスキャナを使って1時間あたり720個を検品する現場に、荷物の通過時にコードを自動で読み取るコードリーダを導入します。コードリーダなら1時間あたり7200個処理することができるため、処理スピードは10倍に向上します。
ハンディスキャナでは1日7時間勤務で1人あたり5040個だった検品数が、5万400個に増加。つまり、従来は1日に取り扱う1万4000個の荷物の処理に必要だった人員が2.8人だったところ、コードリーダの導入で0.3人にまで削減できます。

ケース3:既存のラインを見直して効率を向上し、コスト削減

さまざまな改善を重ねたうえで、さらに新たな物流コスト削減策を打ち出すことは簡単ではありません。それは、既存のライン設備のレイアウトに縛られていることが原因かもしれません。
もし既存の設備のレイアウトを柔軟に改善することができれば、コスト削減策の自由度も大幅に向上します。

ライン上のコードリーダの読み取り能力が向上すれば、読み取りに必要な距離を短くでき、コードリーダをコンパクトに設置できます。たとえば、下図のようにシュートや投入台のスペースを増やして仕分け能力を向上させたり、仕分け能力を維持しながら、コンベアラインを短くすることが可能になります。庫内ラインの効率化は、効率向上や省スペースなどでコスト削減につながります。

Before:コードの自動読み取り能力に制限されたライン
Before:コードの自動読み取り能力に制限されたライン
A
自動読み取り装置
B
コンベアライン
C
シュート
D
投入台
After:コード読み取り性能の向上・省スペース化でライン全体を改善
After:コード読み取り性能の向上・省スペース化でライン全体を改善
A
コードリーダ
B
シュートを増やせる
C
シュート
D
投入台を増やせる
E
投入台
F
コンベアライン短縮

【解決】高い読み取り能力で最小限の稼働台数を実現。コスト削減策のボトルネックを解消

キーエンスの物流向けコードリーダ「SR-5000シリーズ」は、1面に対して1台の設置で運用可能。さらに、超高速で読み取れるので、これまで複数のコードリーダで試行錯誤していた設計・設置にかかるコストを削減できます。もちろん、効率化を目的としたライン設計の自由度も大幅に向上します。

「SR-5000シリーズ」であれば1台で広範囲の読み取りが可能です。

ハンディスキャナを使った検品では、検査員がひとつひとつ手に取って読み取りを行う必要があるため、多くの工数を要しました。
「SR-5000シリーズ」の「ハンズフリー読み取り機能」を使えば、作業効率が飛躍的に向上します。時期によって荷物量の増減がある場合も、検査人員数を調整する手間もコストも削減することができます。

「SR-5000シリーズ」なら、ハンディスキャナに持ち替えることなく瞬時に読み取れます。
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キーエンスの物流向けコードリーダ「SR-5000シリーズ」は、広視野・超深度・高速処理を実現。高い読み取り性能でコード逃しやエラーも回避します。これまで諦めていたエラー品の回収・再投入の人員コストや、ラインスピード・設備設計の制限などのボトルネックを解消。倉庫での物流コスト削減を実現します。下記のボタンから商品ページのご確認、またはカタログをダウンロードして詳細をご覧ください。

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