現場改善のヒント

楽することは経済的!?「動作経済の原則」とは

楽することは経済的!?「動作経済の原則」とは

「時は金なり」。1日の生産数を増やすために、もし作業者に「作業スピードを2秒ずつ縮めてほしい」とだけ伝えるとどうでしょう。作業者への負荷とミスだけが増え、歩留まり率が低下するリスクしか生じません。
たとえ世界レベルのランナーであっても、突然、無条件に自己ベストのタイムを縮めることは困難。体の動かし方や道具、練習の環境や方法など、多くの視点での研究が不可欠です。それが製造現場ともなれば、複数の作業者に対して同様の効果が出るような動作研究が必要です。今回は多様な視点からムダな動作を体系的に研究し、「楽にする」ことで効率化や生産性向上を目指す「動作経済の原則」とその活用方法などを紹介します。

この記事でわかること

動作経済の原則とは

現場での作業のムダをなくし改善を目指すには、作業者の動作にムダがないか、作業者の環境も含めた見直しと改善が必要になります。作業者の環境とは、たとえば、作業を行う現場の材料や治具、工具、機械・装置などの置き場所や設置場所、それらの形状、またはその働きなど、作業に関連する物事のことです。
「動作経済の原則(The principles of motion economy)」とは、人の動きを作業や操作の方法、環境などを含む事象を「4つの基本原則」と「3つの視点」、つまり合計12通りの視点から、体系的に研究するための手法です。ここでは、基本原則と視点それぞれの概要を説明します。

動作経済の原則の「4つの基本原則」

・動作の数を減らす
不要な動作を排除します。動作数の削減による作業時間の短縮が目的です。動作を減らす余地がないように思えても、手順や環境の見直しなどで削減できる場合があります。
・動作の距離を短くする
作業に必要な材料や部品、工具と作業者との距離を短くします。移動距離が最も長い動作が歩行です。次いで胴・腕・肘・手首・指という順に、動かす部位が大きいほど、動作の距離が長くなります。
・動作を同時に行う
たとえば、両手を同時に使うことによって、動作を合理化します。ただし、左右の動きの組み合わせ方が適切でない場合、作業の難易度が上がり、かえって動作に時間がかかったり、ミスが起きたりすることがあるため注意が必要です。
・動作を楽にする
動作経路をシンプルにしたり、重力や慣性を利用したりなど、楽な動作で作業者への負担を軽減すると同時に、作業効率を向上させます。

動作経済の原則の「3つの視点」

【視点1】動作方法
作業方法や体の動かし方など、人を軸とした観点です。
【視点2】作業場所
材料や治工具などの置き場所や作業域の広さ、場所の高さや位置など、場所を軸とした観点です。
【視点3】治工具や機械
治工具、機械・装置などを軸とした観点です。たとえば、治工具の収納方法や機械が動く方向を考慮したり、治具を活用して動作を合理化できないかなどを検討します。

動作経済の原則を製造現場で活用するには

ここまでに紹介した動作経済の4つの基本原則と3つの視点を実際に製造現場でどのように活用できるのか、その方法や例などについて解説していきます。

4×3のマトリクスで動作の改善点を洗い出す

作業現場で、動作にまつわる見直すべき点をランダムに抽出することは困難です。そこで、4つの基本原則の行と、3つの視点の列で構成した表をつくり、それぞれが交わる箇所に現場での気づきを記入していきます。それにより、思考を整理すると同時に、検討すべき原則や視点に漏れがないかを可視化することもできます。

たとえば、組立作業での動作についての課題や改善アイディアを、4つの原則と3つの視点で洗い出す簡単な例を以下に示します。1マスに対し、複数の事象を挙げていくとそれぞれの相互関係や因果関係が見つかる可能性もあります。

  視点
動作方法 作業場所 治工具や機械
基本原則 動作を減らす 手順の途中で、視線を動かして迷う場面をなくす。 材料や工具を手順に合わせて並べる。 コンベアの搬送方向に動きが合うようにする。
距離を短く 奥にある材料を取るたび、肘を伸ばす動作を省略する必要がある。 材料の種類は多いが、作業域は狭くする必要がある。 材料の容器を前後ではなく、上下に配置して、距離を縮める。
同時に行う 作業開始と終了のタイミングが、右手と左手で異なっている。同時にするべき。 右手で工具を取ると同時に、左手で材料を置けるよう、左右に配置する。 治具を改良すれば、両手で作業できる手順がある。
楽にする 力を加える方向とワークの向きを合わせ、重力を活かして楽に作業できるようにする。 作業者の身長にバラつきがある。交代時に安全な踏み台を設置する。 材料の容器を斜めにして重力で常に手前に来るようにする。

動作経済の原則に、当事者の視点を採り入れるには

現場の管理者など第三者が現場をよく観察して、動作経済の原則の12個の視点で考察することも重要ですが、作業者自身、つまり当事者の視点を加味することも重要です。
第三者の客観と当事者の主観を合わせると、たとえ協力する当事者が1名であっても、少なくとも合計24個もの視点が得られることになります。

作業者に当事者意識を持ってもらうには

作業者は、目の前の作業に忙しく、なかなか積極的に発言してもらうことが難しい場合があります。たとえば、作業者のリーダーに先の例で紹介した表を渡したとしても、なかには自身のスキル不足を露呈するように思え、正直な意見を出しにくい人もいるかもしれません。このように、なかなか具体的な意見が出てこない場合、以下のようなちょっとした工夫をしてみましょう。

・匿名で「作業の辛いところアンケート」を実施する
作業を楽にするための、つまり自分自身の作業状況を良くするためのアンケートを匿名で実施します。特に第三者は、繰り返し作業を行っているわけではないため、12個の視点において、どうしても盲点が生じます。たとえば、第三者が動作を数回試してみた場合と、7時間程度連続的にその作業する場合とを比較すると、間違いなく後者のほうが経験に基づいたより有効な情報を得ています。当事者が改善方法を見つけ出すことは難しいかもしれませんが、作業で疲れること、嫌なことなどネガティブな情報は引き出しやすいものです。ネガティブな点は改善すべき点である可能性が高いため、大いに活用することができるでしょう。
・よりフランクな「ここが疲れているアンケート」を実施する
先に挙げたアンケートでも具体的な情報が引き出せない場合、たとえば、もっと敷居を下げ、究極の自分事である「疲れ」という結果に関するアンケートを実施します。作業後に体のどこがどう疲れているかは、誰もが答えやすいアンケートです。
もし複数人が、首の右側が凝っていると答えれば、治工具や材料の配置を再検討すべきかもしれません。腰や背中が痛いという答えが多ければ、作業台や治工具、材料の容器の高さを疑ってみてもいいかもしれません。

改善・検証の繰り返しの重要性と注意点

動作経済の原則を活用して、改善を実施したら、再び上記のようなアンケートを実施しましょう。まだ動作に改善の余地があるかもしれません。また、動作の改善が自分にとって有益であることが伝わるため、アンケートの回数を重ねるにつれ、作業者からより積極的な意見が得られることも期待できます。
ただし、注意すべき点が1つだけあります。それは、決して特定の人を責めることがないようにすることです。なぜなら、誰にとっても作業しやすい動作やその環境を研究することが目的であるためです。

自動化で楽をすることで、人員の能力を発揮

機械や装置、ロボットの技術が進歩しても、人の手でしか対応できない作業はまだまだあります。人は機械よりも繊細な動作ができるからこそ、動作による負担を最小限にして、作業効率を向上することが重要です。
また、日々アップデートする最新技術にアンテナを張り、自動化できる工程を常に探すことも重要です。部分的な自動化であっても、貴重な人員の負担を軽減し、仕事の質と量を向上することができるからです。たとえば、従来は目視でしか対応できなかった検査項目の一部でも、最新のテクノロジーで自動化することができれば、高い技能を持った検査員は、高度な検査項目のN数増加にその能力を発揮することができます。

人員確保が難しい昨今だからこそ、現場の風通しを良くし、「楽」を追究しながらも、いかにして生産性を向上するかを現場全体で考えて実践することが理想的です。一見すると難しそうな「動作経済の原則」。しかし、簡易なアンケートなどフランクなコミュニケーションから始めることで、現場が一体となって楽をするための動作研究と改善に楽しく取り組むことができるかもしれません。

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