蛍光顕微鏡を用いたカルシウムイメージング

カルシウムイメージングによる解析

近年、蛍光顕微鏡を用いてカルシウムイメージング(Caイメージング)に取り組む研究者が増加しています。
カルシウムイメージングとは、細胞内カルシウムの流動を測定し、活動中のニューロンのカルシウムシグナリングを直接観察する手法です。脳細胞の研究などで広く利用されています。

カルシウムは、陸上で生活する脊椎動物にとって、非常に重要な成分というのは周知のとおりです。多様な動植物を摂取するための丈夫な歯の形成にも、カルシウムは重要な役割を果たしています。また、ホルモンや神経伝達物質の分泌、筋肉の収縮、神経細胞の可塑的変化など、生体内の多くの生命現象に関与しています。カルシウムイメージングにより、生体内で活動している神経細胞のカルシウムイオン濃度を観察することで、カルシウムイオンが関与する細胞活動の詳細な観測を行うことが可能です。

カルシウムイメージングの原理

カルシウムイメージングを実施する際には、蛍光顕微鏡や蛍光プレートリーダーを用いて観察を行います。カルシウムイオンと結合すると蛍光強度が変化するようなたんぱく質やカルシウム蛍光指示薬を細胞内に導入し、その蛍光強度の変化でカルシウムイオンの濃度変化を検出します。
ただし、カルシウム蛍光指示薬は非常に微弱であり、観察する際に強力なレーザ光をあてる必要があったため、細胞が死んでしまう、という課題がありました。そのため、カルシウムイメージングを成功させるのは簡単ではない、という認識が一般的でした。

カルシウムイメージングの失敗例と対策

カルシウムイメージングの失敗例として、蛍光顕微鏡を用いてライブセルイメージングを行う際と同様、細胞が弱る、ピントがずれる、細胞が視野から逃げる、といった失敗例があげられます。

例えば、カルシウムイメージングを開始して一定時間経過後細胞の様子を確認すると、細胞が弱っていたり死んでいたりすることがあります。
大きな原因の一つに、強力な励起光によって細胞にダメージを与えてしまっているということがあります(光毒性)。
その対策としては、下記などがあげられます。

  • カメラはできるだけ感度の高いものを使用する
  • ゲインやビニングを併用する
  • 弱い蛍光も感知できるように設定する
  • 励起光はできるだけ弱く設定する
  • 撮影時以外は励起光を切る

また、カルシウムイメージングを行っていると、途中からピントがずれてしまっている、という現象が起きることがあります。これは、温度ドリフトで細胞が動いたり、設定かくるってしまう、また細胞分裂する際に、特に上下方向に細胞が動いてしまい、ピントがずれてしまう、ということが原因としてあげられます。蛍光顕微鏡観察を行っている多くの研究者が経験している事象です。
対策としては、オートフォーカス機能、またはZスタック機能を使うことで、ピントのずれを防ぐことが可能です。

カルシウムイメージングの観察事例

筋芽細胞のカルシウムイメージング(CPA Fluor8 5秒間隔・10分間)
筋芽細胞のカルシウムイメージング(CPA Fluor8 5秒間隔・10分間)
薬剤添加による蛍光強度変化
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト
G CaMP カルシウムイメージングテスト

オールインワン蛍光顕微鏡 BZ-X800を導入すれば

G CaMPとは?

タンパク質でできたカルシウムセンサーの一種です。
緑色蛍光タンパク、カルモジュリン、ミオシン軽鎖フラグメントを遺伝子工学的に結合させたカルシウムセンサーたんぱく質。遺伝子に組み込むことが可能で、モデル動物において組織・細胞特異的プロモータと組み合わせることで目的の組織・細胞腫のみをカルシウムイメージングすることができます。