ガイドパルス式レベルセンサ

ガイドパルス式レベルセンサは、レベルセンサの中ではもっとも新しい原理のレベルセンサです。可動部がなく接液タイプながら、TOFの原理(後述)を利用したレベルセンサで、液体の変化の影響を受けずに測定ができます。1台で複数点の接点出力が可能で、用途を選ばず常時安定検出できるメンテナンスフリーのレベルセンサと言えます。
ここではガイドパルス式レベルセンサの原理や構造などを紹介します。

原理

測定原理

測定原理

ガイドプローブ上に非常に短いパルス信号を送信し、このパルス信号はガイドプローブ上を光の速さで伝わります。そして、このパルス信号は特性インピーダンスの変化点で反射する性質があるため、空気と液体との界面で反射率Γに従って反射します。液面までの距離をL、光の速さをC、送信から受信までの時間をtとすると、液面までの距離は式(10.1)で表されます。

L=C×t/2・・・・(10.1)

これは時間領域反射率測定法(TDR:Time Domain Reflectometry)と一般に呼ばれています。

送信から受信までの時間tを利用する原理(TOF)のため、液体の特性に影響を受けないことが利点です。液体の導電率を問わず、液中の泡や汚れなど液体の状態が変化しても影響をほとんど受けません。

また、同じTOFの原理を使っている超音波と違い、信号の伝わる速さは光の進む速さと同じで空気の温度変化の影響をほとんど受けません。

超音波/電波式はスポット径が大きく、タンク壁などの反射の影響を受けますが、ガイドプローブ式は、ガイドプローブ上に信号密度が集中するためスポット径が広がらず、φ100mm程度間隔があれば、ほぼ周囲の配管や攪拌機のプロペラの影響を受けません。

タンク/槽の材質を選びません。静電容量式レベルセンサが苦手な樹脂タンクも問題なく、空タンク調整も不要です。

検出原理

ガイドパルス式レベルセンサは光の速さで進む信号の送信から受信までの時間を測定します。例えば1cmの距離分解能を得るには、約70psという非常に短い時間を測定しなければなりません。直接測ることは困難なので、時間軸を引き延ばす時間軸伸張回路技術を使って測定します。

時間軸伸長回路技術の説明
【目的】
反射時間を直接測ることができないので、時間軸を伸長して測定します。
【説明】
時間軸伸長回路技術の説明

送信周期(2.4MHz)、送信波(2GHz)の信号をプローブへ送信し、液面で反射して戻ってきます。

戻ってきた信号を送信周期とわずかにずれた局発周期(2.4MHz-16Hz)でサンプリングします。

そうすると時間軸が伸長された波形(16Hz)が得られます。

送信波(2.4MHz)周期の信号に対して、16Hz遅い周波数の局発(サンプリング)信号をつくり、送信波をサンプリング。そうすると、時間軸が伸長された信号がつくれます。

時間軸伸長率
= 送信周波数/送信周波数-局発周波数
= 2,400,000/16
= 150,000倍

10mmの時間
= 往復20mm/光の速度(3e11mm)
= 67ps → × 時間軸伸長率(150,000)
= 10us

よって、10mmの往復時間67psを10usまで時間軸を伸長したことになります。

ガイドパルス式レベルセンサはこの技術を使って、精度良く測定しています。レーザー式レベルセンサの位相差方式と原理的には同じです。

構造

構造
  • 電子回路が入った本体、プロセス接続、接液するプローブで構成されます。
  • プローブは、シングルプローブ、ツインプローブ、同軸プローブ、ローププローブがあり、耐薬品性を高めたPFAチューブタイプ、表面粗さを定義したサニタリタイプなどがあります。
  • PA用にも開発されており、2線式、防爆タイプもあります。
  • シングルプローブタイプは可動部や詰まる箇所、誤検知要素がありません。
  • 複数の接点出力と、4-20mAのアナログ出力の両方を備えているのもあります。

選定方法

プローブ材質

選定方法
  • 検出液体の性質に合わせてプローブを選びます。水や油の場合は、ステンレスプローブ、耐食性が必要な場合はPFA チューブタイプ、サニタリ用途で使う場合は、菌の繁殖を防ぐため、表面粗さがRa<0.8um 以下に加工されているサニタリ用プローブを選択します。
  • タンクの大きさに合わせてプローブの長さを決めます。標準のステンレスプローブであればフリーカットで自由に長さが調整できます。
  • また、ホッパータンク等で底まで測定したい場合、プローブを自由に曲げて測定することも可能です。

プロセス接続

プロセス接続に応じて、ネジ又はフランジ、サニタリ用であればフェルール接続などを選択します。

注意点

不感領域

ガイドパルス式には不感領域が存在します。これは送信パルス幅が非常に短いとはいえ有限な値なため、送信パルスがプローブ上を光の速さで進むと空間的な距離を持ってしまうことが原因です。プローブ根元と先端に数cm存在します。設置時に周囲環境を覚える機能がある製品もあり、その影響をほぼキャンセルできます。

攪拌

タンク内を攪拌する場合、液体の流れによるプローブの横トルクがセンサのスペック内であることを確認します。また、金属タンクの場合に攪拌の影響でプローブがたわんでタンク壁にぶつかると誤検出につながります。

付着

プローブ上に異物が付着すると、その付着物からの反射も存在しますが液面からの反射に比べれば小さくかなりの量まで無視できます。プローブの付着物がひどくなってきた場合に、警報を出力するタイプがあり、誤検出する前に清掃時期を知ることができます。

液体の比誘電率

液体の比誘電率によってパルスの反射率は変わります。ほとんどの液体は比誘電率が2以上あります。一部、軽油、灯油、ナフサなど防爆が必要な液体が比誘電率2を下回り検出が困難になる場合があります。この場合は、防爆仕様で同軸プローブやツインプローブタイプを選択すると測定できる場合があります。以下比誘電率一覧表です。

例)比誘電率一覧

物質名 比誘電率
アセトン 19.5
水飴 31.3
アンモニア 15~25
エタノール 24
エチルアルコール 23
エチルエーテル 4.3
エポキシ樹脂 2.5~6
ガソリン 2.0~2.2
ギ酸 58.5
空気 1.000586
軽油 1.8
鉱油 2~2.5
四塩化炭素 2.2~2.6
シリコンオイル 3.5~5
37.6
酢酸 6.2
大豆油 2.9~3.5
炭酸ソーダ 2.7
灯油 1.8
トルエン 2.3
尿素 5~8
蜂蜜 2.9
パラフィン油 4.6~4.8
マーガリン液 2.8~3.2
80
メタノール 33
メチルアルコール 3.2
水・グリ(60%) 33.2
水溶性切削油(10%) 72.2
フラックス 3
チョコレート 5
キャノーラ油 31.3

まとめ

このページでは、ガイドパルス式レベルセンサの原理や構造、選定方法・注意点について説明しました。
それらをまとめると、以下の通りです。

  • TOF方式により液体の変化の影響を受けずに測定が可能。メンテナンスフリーのレベルセンサ。
  • 測定対象面にレーザ光を照射、反射して戻るまでの時間でレベルを検出する。
  • 汚れや気泡に強く、長期間の安定検知が可能。

検出する液体によって、レベル検査の方法もさまざまです。最適なレベル検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や他のページに記載しているレベルセンサの知識や事例について、1冊にまとめた資料「レベルセンサ ハンドブック」は、下記からダウンロードできます。

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