現場改善のヒント

コストゼロ・効果大の安全対策「声かけ」の重要性

コストゼロ・効果大の安全対策「声かけ」の重要性

現場の安全管理では、管理者が中心となって安全性に配慮しながら作業手順書などを作成し、改善点すべき点を随時現場から集め、PDCA(Plan:計画、Do:実施、Check:評価、Action:改善)のサイクルを回していきます。ここまでは、現場の基本的な体制に関する安全管理ですが、実際に現場で作業するすべての人にとって安全管理の基本の1つとなる行為が、「声かけ」です。
簡単でありながら安全管理において大きな効果が得られる声かけは、簡単であるがゆえにさまざまな理由で軽視されたり、忘れられたりすることも少なくありません。製造現場では、ちょっとした声かけの欠如によってヒヤリハットや事故に繋がる恐れがあります。声かけの欠如によるヒヤリハットの例や声かけを怠ってしまう原因、そして声かけの効果について解説します。

この記事でわかること

「声かけ」の欠如で起こるヒヤリハットとその理由

「声かけ」の行為そのものには、技術や知識は必要なく、簡単に実施することができます。声かけが必要とされる理由は、それを伝えなければならない相手がいるということです。つまり、2名以上の複数人で行う作業において、声かけの必要性が生じます。
以下では、実際の製造現場において、声かけの欠如によって発生したヒヤリハットの事例を紹介します。また、各例において安全対策の基本となる声かけがなぜ欠如してしまったのか、その理由や注意すべき点についても考察してみましょう。

例1:ケーシングの吊上げ作業

2名でケーシングをクレーンで吊って移動させる作業。1名がクレーンの操作、もう1名がワイヤーでケーシングの玉掛け作業を担当していました。しかし、互いに声をかけ合うことなく、玉掛け担当者がワイヤーから手を放す寸前にクレーンを吊り上げ始めてしまい、玉掛け担当者の指は、危うく頑丈なワイヤーと重いケーシングの間に挟まるところでした。

声かけが欠如した理由 【思い込み・慣れ】
本来、玉掛け担当者は作業が完了し、安全な場所に離れたらクレーン操作担当者に声をかける必要があります。そして、クレーン操作担当者が玉掛け担当者の声かけに応答し、これからクレーンを動かすことを声かけで知らせることによって、安全性を確保することができます。しかし、同じ作業を何度も繰り返しているうちに、玉掛けにかかる時間や、玉掛け担当者の姿が見えなければ、クレーンを動かしてもいいといった条件から状況を憶測するようになり、声かけに対する意識が低下してしまう場合があります。
注意すべき点
メンバーが交替したときはもちろん、慣れた人どうしであっても、毎回必ずしも阿吽の呼吸が成立するとは限りません。ときには玉掛けに手間取ってしまったり、ケーシングに体が隠れてしまったりすることで、もう荷物から離れていると勘違いしてしまうことがあるためです。このように、経験則だけでは実態を把握することができないため、声かけは非常に重要な役割を持ちます。

例2:治具・材料のセットと機械操作

2名での機械加工工程で、1名は機械の中に治具と部材をセットする作業を担当し、もう1名は機械の操作を担当していました。セット作業の担当者が、治具を1つセットし忘れたことに気づき、操作担当者に声をかけず慌てて追加でセットしようとしたところ、もう1名が機械を始動させはじめ、危うく機械に手が挟み込まれるところでした。

声かけが欠如した理由 【思い込み・慌て】
セット担当者は治具のセット作業と材料のセット作業で計2回機械の中に腕を入れる動作をします。機械操作の担当者は、動作パターンが毎回同じだと思い込んでいたこと、セット担当者は治具のセット忘れというイレギュラーに慌ててしまい、声かけの欠如に繋がりました。
注意すべき点
各動作を実行する前に互いに声かけをすることに加え、イレギュラー時も慌てず声をかける心構えが重要です。いずれも、声かけが欠如すると危険な状況を招いてしまいます。

例3:手作業での部材運搬

大きな長方形の鉄板を持ち運ぶという普段行わないイレギュラーな作業が急遽発生し、2名で対応しました。うち1名が後ろ向きになる状態で運搬していたところ、通路で足がもつれ転倒しそうになりました。

声かけが欠如した理由 【リスクの軽視・作業体制の不備】
正面を向いていた人が、後ろ向きになっている人にできるだけ配慮し、声をかけながら運搬するべきでした。また、2名とも大きな鉄板によって足元が十分に確認できない状態だったため、作業そのものにも危険性があったといえます。
急遽とはいえ、この体制では、声かけをすること自体が困難です。
注意すべき点
本来であれば、作業前にリスクを十分に検討する必要がありました。もう1名加えてガイドと足元確認、声かけを担当してもらい、少なくとも3名体制で安全に作業を行うべきでした。さらに1名加えることに抵抗があるかもしれませんが、安全性の確保だけでなく運搬作業のスムーズさや素早さも得ることができます。

もっとも簡単、しかもコストゼロ。「声かけ」の効果と実践

これらの例からもわかるように、「声かけ」が欠如してしまう理由の多くは、思い込みです。人は慣れると、経験則に頼ってしまいがちです。毎日何回も繰り返している作業であっても、想定外の事態が発生する可能性はゼロではありません。突発的な作業の場合は、どれだけ急いでいてもリスクと声かけの必要性をしっかり検討したうえで臨まなければなりません。
製造現場の安全対策として、さまざまなメソッドや安全対策機器などがありますが、声かけは、意識次第でもっとも簡単に実践でき、ヒヤリハットや労働災害事故の発生抑止に大きな効果があります。しかも、コストはまったくかかりません。

もちろん、声かけは2名以上の複数人での作業で効果を発揮するため、1人だけがハキハキと大きな声を出していても、本来の効果を発揮することができません。たとえば、先輩が声かけをしないから自分もしづらいなどの理由で、半信半疑のままリスクにさらされていることもあるかもしれません。経験が豊かな人ほど進んで声かけを実践することはもちろん、声かけの欠如に気づいたら、上下関係にかかわらずお互いの安全を守るために、声かけを提案して実践することが大切です。

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