「安全第一」「〇〇第二」「〇〇第三」で生産性がアップ?
ものづくり現場でもおなじみのスローガン「安全第一」。 実はそれには続きの言葉があることをご存じでしょうか。
安全の重要性は誰もが認識しているものの、あまりにも見聞きし慣れたフレーズだけに、本来の意図や意味が風化してしまいがちです。「〇〇第二」「〇〇第三」を知ることによって、安全第一を守る理由が明確になり、現場の意識が変わるきっかけとなり得ます。
- この記事でわかること
「安全第一」は、ものづくりの現場で生まれた名言!?
「安全第一」という考え方が生まれたのは、1900年代初頭のアメリカ。当時のアメリカは1800年代後半から始まった第2次産業革命の中心で、大幅に国内産業を成長させていました。ガソリン自動車の大量生産が始まったのもこの時代です。
当時のアメリカの工場では「生産第一・品質第二・安全第三」が合言葉でした。安全性よりも生産性が重視されていたため、労働災害が日常的に起きていました。
この状況を打開するために、製鉄会社の経営者がスローガンを変更して作業者を守る方策に転換。すると、労働災害が減っただけではなく、作業効率が向上して生産性や品質も向上しました。やがて他の工場もそれに倣うようになったといわれています。
その方策が、「安全第一・品質第二・生産第三」という考え方でした。その後、安全第一というスローガンは、さまざまな現場に広く浸透していきました。
どうすれば「安全第一」を徹底できるのか
「安全第一」の起源からわかるのは、安全を重視すると、結果的に生産性や品質が向上するということです。しかし、「安全第一」というスローガンだけが独り歩きしている現場では、こうした本来の意図やメリットにまで考えが及ばないことでしょう。
昨今は、製造業において適切な安全衛生管理が義務付けられています。しかし、取り組みにおいて、労働災害による損害の大きさなどネガティブな理由が強調されがちです。しかし、安全衛生管理によるメリットを現場レベルで発信していくことで、皆がより参加意識を持つことができるのではないでしょうか。
たとえば、安全衛生管理活動の一環として作業場の片付けや整理整頓を行うことで、下記のようなメリットを提示することができます。
- ・工具や治具を探す手間がなくなる
- ・動線がスムーズになり、作業性と同時に安全性が向上する
- ・作業者の働きにくさだけでなく、リスクも解消される
これにより、作業の効率化や生産性の向上はもちろん、仕事へのモチベーションにも良い影響が期待できます。
ものづくり現場に「安全第一」を定着させるポイント
班やチームなど小集団で安全衛生管理に関する意識や行動が改善できても、企業全体で実施することは簡単ではありません。
これを全社的に浸透させるには、まずトップが意思表示をしてコンセンサスを形成することが効果的といわれています。事業主や工場長が安全衛生管理に積極的に取り組むことを明確に伝え、実際の活動でも率先して行動することで、作業員に本気度を示すことができます。
実際に、厚生労働省が発表している製造業の安全衛生管理の取り組み事例には、たとえば下記のような事象が報告されています。
- ・社長と工場長が定期的に各職場の安全衛生チェックを行ったところ、従業員の意識が向上して改善が進んだ。
- ・社長自らが面談を行い、健康管理の指導を行ったところ、「社長が言うなら」と健康管理を行う従業員が増えた。
こうした取り組み事例から、ただスローガンを掲げて安全衛生管理の担当者に任せるだけでなく、会社のトップはもちろん管理者や持ち場のリーダーなども積極的に安全衛生管理へかかわり、作業者と意識を共有することが有効であるということがわかります。
安全衛生管理への理解や取り組みの手法を改善することは、現場に「安全第一」本来の意味を根付かせ、作業環境や生産性を「改善」する転機となり得ます。
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