プレカット材・家具・鋳造木型など木材製品の寸法測定の効率化

プレカット材・家具・鋳造木型など木材製品の寸法測定の効率化

木材は建築材料や家具、さらに鋳造の木型として多くのメリットを持っています。木の持つ美しさ・加工の容易さ・資源の豊富さなど、数えるとキリがありません。
しかし、木材はメリットばかりではありません。耐火性・繊維方向による強度の差・収縮・反りによる変形、そして何よりも大きなデメリットは「品質のバラつき」です。
木が持つメリットを活かしてデメリットを抑制し、安定した品質を維持するには、適切な寸法測定による検査が必要です。
ここでは、木材や木材製品が変形するメカニズムなどの基礎知識や寸法測定の必要性と注意すべき測定のポイントを説明。さらに測定器具の違いによる効率の差や、測定の効率化を実現するさまざまな事例を紹介します。

木材製品とは

木材製品とは

木材とは、原木を切断して原料や材木の材料として用いる木のことです。似た言葉に材木がありますが、材木は原木を一定の長さや大きさなどに製材し、建築や製品の用材になったもののことです。
木材でできた木材製品には、自然の風合いや手触りの良さといった官能的な利点以外に、温度や湿度を一定に保つ・加工が容易でデザインの自由度が高い・断熱性が高いなど、鉄やプラスチックなどにない特長があります。なかでも、湿度を一定に保つ「調湿作用」は、湿度が高すぎるときには湿気を吸収し乾燥してくると湿気を放出する作用で、木材が持つ大きな特長です。
ほかにも、再利用が可能である・伐採後に植樹することで資源サイクルを確立できるなど、環境に優しい資源でもあります。このように多くのメリットを持つ木材でできた製品には、一般に知られる家屋の柱や梁・家具以外に、鋳造木型などがあります。

木材製品の反りとたわみの原因

多くのメリットを持つ木材ですが、一方で反りやたわみなどの変形が発生しやすいといったデメリットもあります。木材の反りやたわみなどが発生する原因はさまざまですが、大きな要因の1つに木材内部の含水率の変化があります。
木材は常に呼吸しています。木材内部の含水率は、木材の呼吸により内部の水分が放出と吸収を繰り返されることで変化します。一般に、木材は含水率が高いと伸びて、低いと縮みます。含水率の変化は心材(中心部)と辺材(周辺部)で異なり伸縮に差があります。また、木目の通り方によっても伸縮が異なります。これら伸縮の差が木材の反りやたわみの原因になります。
木材の反りやたわみは、含水率が20%~30%のときに発生しやすく、これを抑制するために十分に乾燥させたり表面に塗装を施したりといった対策が取られます。また、合板などの加工材をはじめ、集成材やCLTといったエンジニアリングウッド*など、反りやたわみが発生しにくい木材も開発されています。

エンジニアリングウッド:
エンジニアリングウッドは、木材が持つ欠点を克服すべく開発された木材です。現在では木材を二次加工することによって反りやたわみ、強度のバラつきなどの欠点を補う技術が進んでおり、代表的なエンジニアリングウッドには、集成材やCLTなどがあります。
乾燥前
乾燥前
乾燥後(反らない)
乾燥後(反らない)
乾燥前
乾燥前
乾燥後(木表へ反る)
乾燥後(木表へ反る)

プレカット材とは

プレカット材とは

プレカット材とは、工場で機械加工した木材製品です。従来、大工などの熟練技能工が手作業で行っていた木造住宅の柱・梁の継手・仕口・接合金具の取り付けなどの加工を機械化することで、部材の加工精度の向上・品質の安定化・建築現場作業の軽減・工期の短縮などを実現し、木製部材の付加価値の向上や流通・販売の合理化・木造住宅の需要促進などを推進する手段としても採用されています。
また、近年ではコンピューターを活用したCAD/CAM全自動機の導入により、CAD入力された木造住宅の平面図や立面図などの加工データをCAMに転送し、自動的に切削することで加工精度の高い柱や梁・羽板材・パネルなどを生産することが可能になっています。さらに、木材製品の品質管理や標準化・構造設計・施工など住宅建築工程をトータルで管理することも、可能となりつつあります。
なお現在、軸組工法用部材のプレカット工場は全国に大小約700を数え、木造軸組構法*におけるプレカット材の利用率は93%に達しているといわれています。(出典:令和元年度 森林・林業白書)

木造軸組工法:
柱に梁を組み合わせて建てる工法です。現在、日本では最も多く採用されている工法で、「軸組み」ともいわれます。

木材製品の寸法測定の必要性

木材が持つ保湿性や自由度の高い加工性は、一方で寸法誤差の原因になります。このため、木材製品には厳しい寸法検査が必要です。

プレカット材

プレカット材は、変形に強い集成材などのエンジニアリングウッドをコンピューター制御された加工機によって製材し、寸法や形状を高精度に仕上げます。しかし、CADデータの入力ミスや加工機の不具合による加工不良が発生する可能性があります。たとえば家屋の部材の場合、寸法に誤りのある木材製品で建築を進めると設計通りの家屋になりません。また、仕口の形状や寸法の精度が低いと、現場での手直しが発生します。これらの問題は、いずれも大きなクレームの原因になります。

建築部材・家具

木材は、さまざまな加工を施しても、性質上、湿気・乾燥などにより変形する可能性があります。変形の可能性は、家屋建築に使用する部材はもちろん家具においても同様で、施工または組み立て時に継手・仕口・接合金具が合わず組み立て現場で再加工が必要になるなどのトラブルの原因になります。

鋳造木型

鋳造木型はフルモールド鋳造が可能であり、単品または少量製作に対応でき、加工の自由度が高いため複雑な形状でも容易かつ低コストで製造できます。しかし、保管状態が悪く変形していたりメンテナンスが不十分で摩耗していたりすると、完成した鋳造品はすべて不具合品となります。鋳造において金型は鋳造品の寸法精度を決定する最も重要な部品です。このため、使用前には必ず寸法を測定しなければなりません。

木材製品の寸法測定

木材製品は、金属や樹脂などの機械加工品に比べて、高い寸法精度は求められません。しかし、変形しやすいといった特性から、乾燥・加工・製材といった工程において、逐次測定による検査を実施する必要があります。

木材製品の寸法測定のポイント

木材製品では、反り・ゆがみ・摩耗の確認が寸法測定のポイントになります。ここでは、プレカット材・家具・鋳造木型の寸法測定について説明します。

プレカット材の反り・ゆがみと仕口の寸法

部材の形状に工場で加工したプレカット材は、湿度による変形に強い木材で作られていますが、それでも反りやゆがみが発生する可能性があります。また、木材は製材後も変形する場合があり、特に長尺の木材では変形する可能性が高くなります。したがって、プレカット材は、加工前と加工後の寸法測定が欠かせません。さらに、仕口の形状や寸法、接合金具のボルト穴の寸法やピッチは施工精度に大きく影響するため、必ず確認しなければなりません。

木製家具の反り・ゆがみ・ダボの位置

木製家具の部材の反りやゆがみは、組み立て時のひずみの原因になります。また、耐久性・扉の開閉・密閉性にも大きく影響するため、家具を構成する各部材はもちろん、組み立て後の外寸も重要な測定のポイントです。また、ダボの位置やダボ穴のピッチの測定も欠かすことができません。

鋳造木型の形状

多くの場合、鋳造木型はCADデータによる自動加工で製造されます。しかし、製造後の湿度による変形や使用による摩耗などの寸法変化は、完成品である鋳造品の寸法精度に直接影響します。したがって、CADデータとの寸法比較が重要な測定ポイントになります。

木材製品の寸法測定の課題と解決法

従来のコンベックスによる測定
従来のコンベックスによる測定

建築や家具の部材の製造では、個々の部材はもちろん、建築・組み立て後の直角度や平行度などの測定も重要です。また、鋳造木型は複雑な形状であるケースが多く、三次元的な測定が必要です。
これらの測定はノギス・コンベックスなどで行います。しかし、長尺の部材は、複数人で測定する必要があり測定や調整に多くの工数を要するため、納期に影響が出るといった課題があります。また、ノギス・コンベックスといったハンドツールでは三次元的な形状を直接測定することができないため、アーム型の三次元測定機で測定しますが、測定者には測定と測定機の操作に関する高い知識と技術が必要です。さらに、CADデータとの照合や測定データからCADデータを生成するための出力機能なども必要です。 これらの問題を解決すべく、最新式の三次元測定機が活用されるケースが増えてきています。

キーエンスのワイドエリア三次元測定機「WMシリーズ」は、ワイヤレスプローブで長さが数メートルにもおよぶ長尺の柱や梁も、高精度測定が可能です。測定範囲内なら製品の奥まった部分にも自由にアプローチでき、1人でもプローブを当てるだけの簡単操作で測定することができます。また、ノギス・コンベックスなどの測定器具に比べて測定結果がバラつくことなく、定量的な測定が可能。測定データとCADデータとの照合や、測定データからCADデータを生成するための機能も備えています。

ワイドエリア三次元測定機「WMシリーズ」
ワイドエリア三次元測定機「WMシリーズ」
「WMシリーズ」による測定イメージ
「WMシリーズ」による測定イメージ

プレカット材の反り・ゆがみ測定と仕口の寸法測定

大型のプレカット材の寸法や接合金具の位置やピッチは、複数人でメジャーやコンベックスを使って測定します。また、反りやゆがみは墨出し器で測定し、仕口の寸法や平面度はメジャーや角度器で測定します。
しかし、測定箇所が多いため作業には長い時間が必要で、作業者の測定器具を当てる角度や強さによって測定値が変わります。また、検査時の状態や検査箇所の正確な把握が困難であるため、測定データの管理や検査成績書の発行は困難です。

「WMシリーズ」なら、測定したい箇所にプローブを当てるだけで測定できます。プレカット材の外寸はもちろん、接合金具の位置やピッチ・仕口の寸法や平面度もプローブを当てるだけで測定は完了。また、反りやゆがみといった三次元的な形状も直接測定することができます。
さらに、どこを測定したかが一目でわかる写真付きの検査成績書が自動で作成可能です。取引先との信頼につながるだけでなく、測定結果をデジタルで残すことができるので、社内のデータ管理の効率化にもつながります。

「WMシリーズ」による測定イメージ
「WMシリーズ」による測定イメージ
「WMシリーズ」による測定画面イメージ
「WMシリーズ」による測定画面イメージ
「WMシリーズ」の検査成績書
「WMシリーズ」の検査成績書

木製家具の寸法・反り・ゆがみ測定

木製家具の部材の寸法・角度・反りやゆがみ・ダボの位置は、組み立て精度に影響します。このため、製造中はもちろん組み立て後の寸法検査も重要です。
木製家具の部材の寸法・角度・ダボの位置は、メジャーやコンベックスで測定します。しかし、複数人で行わなければならず効率的ではありません。また、反りやゆがみを数値化することは困難です。

「WMシリーズ」なら、測定したい箇所にプローブを当てるだけで木製家具の部材の寸法・角度・反りやゆがみを1人で測定することができます。測定した寸法はもちろん、反り・ゆがみも平面度として数値化することができ、仮想線の距離を可視化することも可能です。また、ダボの位置やピッチ、扉の中心点から端面までの距離などの仮想距離や三次元的な寸法も簡単に測定することができます。

「WMシリーズ」による測定イメージ
「WMシリーズ」による測定イメージ
「WMシリーズ」による測定画面イメージ
「WMシリーズ」による測定画面イメージ

鋳造木型の形状のCAD比較

鋳造木型は、溶融した金属が固まって収縮する分だけ大きく作ります。その大きさは一般に約9/1000~12/1000程度といわれ、この鋳造木型の寸法は完成した鋳造品の精度に大きな影響を与えます。このため、鋳造木型の各部の寸法測定は欠かせません。しかし、ノギス・コンベックスなどのハンドツールは当てる位置によって測定値が変わるため、作業者による測定値のバラつきの発生は避けられません。また、仮想距離や三次元寸法の測定は困難です。アーム式の三次元測定機は可動範囲が狭く測定箇所が限られ、操作には熟練が必要であるため限られた作業者しか測定できません。

「WMシリーズ」なら、測定ポイントにプローブを当てるだけで、広範囲なエリアを1人で高精度に測定することができます。測定の手順を記憶させ、同じ箇所を測定することができる機能も搭載しているため、誰が測定してもデータがバラつきません。
基本的な外径寸法はもちろん、自由曲線を描く複雑な形状もプローブを当てるだけで測定完了。三次元的な位置座標が測定できます。また、設計値に対する公差値の判定も瞬時に確認することができます。測定した要素はCADデータと照合することができ、STEP/IGESファイルとしてエクスポートすることも可能です。これにより精密な鋳造木型の製作が可能になると同時に、図面のない製品でも現物の測定結果を基に、3D CADデータを作成することができます。

「WMシリーズ」による測定画面イメージ
「WMシリーズ」による測定画面イメージ
「WMシリーズ」によるCAD比較イメージ
「WMシリーズ」によるCAD比較イメージ

プレカット材・家具・鋳造木型など木材製品の寸法測定の効率化

「WMシリーズ」なら、測定ポイントにワイヤレスプローブを取り付けるだけの簡単な操作で大型の木材製品を1人で測定することができます。さらに、これまでに紹介した以外に、以下のようなメリットがあります。

広範囲を高精度に測定可能
*最大測定範囲
広範囲を高精度に測定可能
最大測定範囲25mの広範囲なエリアを、高精度に測定可能。測定の手順を記憶させ、同じ箇所を測定することができる「ナビ測定」モードも搭載しているため、誰が測定してもデータがバラつきません。
ポータブルで現場置きが可能
ポータブルで現場置きが可能
本体を台車に入れて、自由に持ち運べるポータブル仕様。現場に持ち込み、その場ですぐに施工状態を測定することが可能です。
わかりやすいインターフェース
わかりやすいインターフェース
三次元測定機のインターフェースというと、難解で馴染みにくいコマンドが多いイメージがありますが、「WMシリーズ」では、画像やアイコンなどで誰にでも親しみやすい操作性を追求し、直感的な操作を可能にしました。
データをまとめる統計解析機能
データをまとめる統計解析機能
ナビゲーション測定実行後の測定結果は、自動的にハードディスクドライブに保存されます。保存されたデータを抽出して統計値確認・トレンドグラフ・ヒストグラムなど、各種統計解析ができます。

「WMシリーズ」は、木材製品の寸法測定はもちろん、3D CADデータとの照合作業や検査成績書の発行などを強力にサポート。木材製品の製造から組み立て後の寸法確認や品質管理まで、幅広い業務の飛躍的な効率化を実現します。