計測器とは?

研究開発や生産の現場では、各種試験データの記録と分析や、製造に用いる装置・設備などの状態・傾向の把握といったことが求められます。いずれも製品の品質や効率の向上、トラブル回避にとって重要です。そこで、目的に応じてさまざまな項目を同時に計測します。それに用いられる計測器とその種類、選定ポイントなどについて解説します。

計測器とは

温度・ひずみ・加速度・電圧・電流・回転数(パルス)・CANなど、各種センサに対応した入力を持ち、取得したデータを変換または演算などして計測や記録する装置のことです。
目的に応じてデータを計測する際の、速さ・緻密さ・記録する期間、そして、データの種類や数、異種混在したデータを同時に計測するかなど、研究開発や生産現場での目的・用途に応じて使い分けます。

計測器の種類と特徴

オシロスコープやメモリハイコーダ、データロガーなど、計測・記録に用いられる代表的な計測器の種類と、それぞれの特徴について解説します。

オシロスコープ

時間の経過とともに電気信号の波形の高速な変化を観測することができ、電子回路の信号確認や電子部品の特性チェックなどエレクトロニクス分野で用いられます。波形が変化している時間を正確に測るといった、短期の観測に向いています。価格は高価ですが、さまざまなトリガで計測でき、高速サンプリングによる波形表示とダイレクトな操作性を持ちます。

オシロスコープ
サンプリング周期 10M 数 GHz~
チャンネル数 2 ~ 8チャンネル
備考 長時間連続記録には不向き

高速波形記録計(メモリハイコーダ)

オシロスコープに比べるとサンプリング速度が低く、中低速域で変化する波形観測、または記録に用いられます。振動などのアナログ信号や強・弱電混在回路、装置の制御信号(ロジック信号)などの波形観測を目的に、ch(チャンネル)間絶縁入力など多機能なものが主流です。データ収集を主目的とする場合は、データロガーに比べ導入コストが高くなります。

高速波形記録計(メモリハイコーダ)
サンプリング周期 数 k 数 MHz
チャンネル数 数 ~ 16チャンネル
備考 多チャンネルの波形を同時印刷するプリンタのほか、HDDを搭載し、中長期の波形観測が可能なものもあります。しかし、PCとの親和性が低く、計測ユニットはボード(基板)形式でch単価が高いなど、レコーダーとしての運用や拡張性には注意が必要です。

汎用レコーダ

装置やプロセスの温度など低速な波形変化の記録・観測に用いられることが多く、記録計とも呼ばれます。低速なデータの観測とチャート紙に印刷した波形へのメモの書き込みなど、直感的な取り扱いが可能です。多くの場合、ロジック信号や電圧などが混在したマルチ入力が必要な用途には不向きです。

汎用レコーダ
サンプリング周期 100ms以上
チャンネル数 1 ~ 64チャンネルもしくはそれ以上
備考 サンプリング速度が低く、半導体や電子回路、液晶画面などエレクトロニクス分野には不向きです。プリンタのみ搭載のタイプは、PCとの親和性がなく、データ解析やレポート作成の作業が非効率です。

データロガー

温度や電圧、電流、加速度、ひずみ、パルス、CANなど、低速から中・高速のさまざまな種類が混在するデータを複数チャンネル同時に収集することが可能です。一般に、計測ユニット(入出力モジュール・拡張ボードなど各社で呼び方が異なります)を組み合わせることで高い汎用性・拡張性が得られます。また、ch間絶縁機能により信頼性の高いデータ収集が可能です。ただし、データロガーの多くは、設定・操作が煩雑で、PCとの親和性が低く後作業が非効率になる場合があるため、選定には注意が必要です。

データロガー

キーエンスのデータロガー「NRシリーズ」

サンプリング周期 10Hz 1MHz
チャンネル数 4 ~ 576チャンネルもしくはそれ以上
備考 データロガーの多くは据え置き型で、本体表示がほとんどなく、計測状態がわからず計測ミスに気付かない場合があります。また、多くの場合、PCとの接続・設定・操作やデータの回収・分析、レポート作成に多くの時間と手間を要します。そのため、データロガーを選ぶ際は、扱いやすさや作業効率を考慮することが重要です。

計測器のスペックと選定ポイント

ここでは最適な計測器を選ぶうえで、目的に対して考慮すべきスペック(仕様)や計測作業の効率などの項目について解説します。

計測器のサンプリング周期

サンプリング周期とは、アナログの信号波形をデジタルデータに変換するための処理(サンプリング)の周期(間隔)のことです。計測器はこの間隔でデータを採取して計測することになるため、目的に合ったサンプリング周期に対応する計測器を選定する必要があります。たとえば、電子回路などエレクトロニクス分野であれば、デジタルオシロスコープのように高速なサンプリング周期での波形観測を要しますが、温度のように急激に変化しにくい項目を測定するのであれば低速なサンプリング周期で問題ありません。なお、スペック上では「サンプリング周波数」と表される場合があります。

計測器の分解能

計測器における分解能とは、測定の細かさの限界(識別限界)、つまり、測定および表示できる最小の刻み幅のことで、測定精度に関係します。デジタル計測器のスペック表記における分解能には主に下記の種類があります。

  • 「A/D分解能」アナログ信号をどこまで細かくデジタルデータに変換できるか。
  • 「表示分解能」どこまで細かく測定値を示すことができるか(最小表示桁)。

計測器のA/D分解能は、14~16bitが標準的です。計測器を選定する際に注目すべき項目は、表示分解能です。表示分解能は、測定レンジ(測定可能範囲)によって変わるため、計測したい電圧(信号)の範囲に対して、どこまで細かい値を表示できるかを確認することが重要です。

計測器の測定精度(確度)

デジタル計測器における測定精度(測定確度)とは、前述の表示分解能とは異なり、計測できる絶対的な値のことです。
計測器のスペック上の表記方法は下記の3種類が代表的です。いずれも、これ以上はズレないという誤差範囲として±○○% の表記とともに示します。

  • 「±○○% of F.S.」:F.S.(フルスケール)とは、計測器における最大表示値(目盛長)のことで、計測器の全計測範囲の幅を意味します。
  • 「±○○% of dgt.」:dgt.(デジット)とは、デジタル計測器における最小表示単位のことで、最小桁の1カウントを意味します。
  • 「±○○% of rdg.」:rgd.(リーディング)とは、読み値とも呼ばれ、計測中の値のことです。計測器が表示している値を意味します。

PCとの親和性

多くの場合、計測器はスタンドアロンでの使用に特化されています。そのため、マルチデータの計測やch間絶縁など高い機能性を持っていても、PC(パソコン)やタブレット端末との親和性が低い場合、計測時の設定・操作はもちろん、計測後のデータ回収作業や、分析、レポート作成の作業効率が低く、多くの手間と時間が必要となることが課題となります。

計測器を選ぶ際のチェックポイント

多種多様な計測器の中から、最適なものを選定するうえでのチェックポイントを以下に挙げます。

  • 要求するスペックの計測ユニット(入出力モジュール・拡張ボードなど)を選ぶことができるか。
  • 必要なch数・混在データの同時計測・収集に対応できるか。
  • PCやタブレットなどの端末と親和性が高く、簡単に接続・操作できるか。
  • 計測後、PCでのデータ解析やレポート作成の作業効率は高いか。
  • 現場でPC接続なしでも設定や操作、計測状態の確認、データ解析が可能か。
  • シンプルな構成、簡単な設定・操作で、専門知識がなくても扱いやすいか。
  • 必要なセットアップで初期導入コストを抑え、将来の拡張性・汎用性も確保できるか。また、簡単に拡張できるか。
  • 将来的にさまざまな場所で使用する場合、小型・軽量で可搬性が高く、無線通信やバッテリー駆動に対応できるか。

キーエンスの計測器でできること

種々の計測器の中でもデータロガーの多くは、さまざまな計測ユニット(または入出力モジュール・拡張ボードなど)を組み合わせ、高速から中・低速の混在データの収集に活用されます。しかし、従来のデータロガーは、現場での使い勝手やPCとの親和性の低さ、計測後の作業効率など多くの課題がありました。

そこで、キーエンスは新発想の計測器としてマルチ入力データロガー「NRシリーズ」を開発しました。計測の現場のニーズに寄り添い、従来のデータロガーとは一線を画す高い機能性・汎用性・拡張性・可搬性・視認性・PC親和性を実現。取り扱いが簡単で、設定からレポート作成まで一連の作業の効率を高めることができます。

小型・軽量なボディーに高精細液晶モニタを搭載。単体での使い勝手にもこだわった「NR-Xシリーズ」
PCとのダイレクト接続に特化。超小型・軽量で、デスク上での省スペース性も実現した「NR-500シリーズ」

次にこれらと組み合わせることで、多種多様な多ch・マルチ計測のニーズに対応する、計測ユニットについて解説します。

目的に合わせて選べる計測ユニット

上記2種類の本体ユニットに対し、計測目的に応じて自由に選んで簡単に組み合わせることができる「計測ユニット」について紹介します。
それぞれ測定目的に応じた入力や機能、スペックから選択することが可能です。混在データの完全同期収集はもちろん、同一の計測ユニットを複数接続することで多ch化も簡単に実現できます。

高精度 温度・電圧計測ユニット NR-TH08(P)

端子台に熱分布均一構造を採用し、高耐圧半導体リレーで8chの入力チャンネル間を絶縁することにより、高い耐ノイズ性を実現。
あらゆる温度計測を正確に行うことができる高精度・温度・電圧計測ユニットです。
※NR-TH08Pは温度計測専用ユニットとなります

高速アナログ計測ユニット NR-HA08(P)

サンプリング周波数1MHzのオシロスコープに匹敵する高速性・分解能14bitの高スペックな計測ユニット。8ch入力に電流(±20mA)入力を装備しています。

高速・高電圧計測ユニット NR-HV04

±2V~±1000Vの入力レンジに対応。4つの入力ch間およびユニット間をしっかり絶縁し、完全同期サンプリングします。また、フィールドで使える実効値演算回路を実装しています。

ひずみ計測ユニット NR-ST04

従来のひずみアンプに比べ圧倒的な省スペースを実現。ブリッジ回路内蔵や1~4ゲージ法のすべてに対応するなど、クラス以上の高い性能で高精度な動ひずみ計測を可能とします。

加速度計測ユニット NR-CA04

4chチャージアンプを内蔵し、同一ユニットで電荷出力型・電圧出力型の両方の加速度センサを接続することができます。また、TEDSセンサに対応し、センサ固有情報の読み取りも可能です。

パルス計測ユニット NR-FV04

回転パルス信号を検出して、周波数(回転数)を1周期ごとに演算します。4chのF/Vコンバータを内蔵し、入力レンジの設定は不要なため、計測作業の簡易化が可能です。

CANデータ収集ユニット NR-C512

最大512の多シグナル・複数系統バスのCAN(High speed・Single Wire)データをアナログと完全同期し、CAN/アナログの混在収集を実現します。プログラム作成が不要かつシンプルな設定で多種データのマルチ計測が可能なバスモニタ専用機です。

Ethernetデータ収集ユニット NR-EN16

センサや高精度測定器のデータをデジタル値のまま収集可能。電源出力機能も搭載しセンサ用電源として使用可能です。

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