現場改善のヒント

いますぐ降りて!7つのムダ「かざふてつどう」

ムダの排除は、企業として経営上のメリットが得られることはもちろん、製造現場を支える作業者や管理者のムリや負担を軽減できるため、改善の基本ともいえます。ところが、製造現場は複雑な要素から成り立っているため、見直すべきムダの洗い出しは一筋縄ではいきません。たとえば、細かいムダが知らないうちに山積し、年間のコストを増加させている場合もあります。
さまざまなムダが潜在する製造現場で、念頭に置いておきたい言葉が「かざふてつどう」です。今回はこの言葉を用いて複数の観点から排除すべきムダを抽出する方法や対策のヒントなどを紹介します。

いますぐ降りて!7つのムダ「かざふてつどう」
この記事でわかること

「かざふてつどう」とは

「かざふてつどう」とは、製造現場における7つのムダのことです。ムダとは付加価値を生まない物事のことで、以下に挙げるムダの頭文字を取って並べ、覚えやすい標語にしたものです。

  • 「か」=加工のムダ
  • 「ざ」=在庫のムダ
  • 「ふ」=不良・手直しのムダ
  • 「て」=手待ちのムダ
  • 「つ」=作り過ぎのムダ
  • 「ど」=動作のムダ
  • 「う」=運搬のムダ

語呂合わせとはいえ、もしこれが鉄道だったら、いますぐ降りたくなります。また、「かざってとうふ」という呼び方もありますが、現場のどこかに豆腐を飾るなんてナンセンス。いますぐ見つけないと腐ってしまいます。

これらのムダは経営上のロスであると同時に、人員への不必要な負担でもあります。
ムダの原因が経営や管理の体制によるものも含んでいますが、その反面、現場でしか気づくことができないムダもたくさんあります。そのため、現場でもムダを抽出して改善につなげる取り組みが重要となります。

製造現場に見る「かざふてつどう」と対策のヒント

製造現場における7つのムダそれぞれについて、現場での例や他のムダとの関連、対策のヒントなどを交えながら解説します。

加工のムダ

加工工程では、製品やその仕様が変更になっても、古くからある手順だけが残り、それに従って不要な加工や段取りをしている場合があります。また、不要な検査もそれに該当します。標準が決まっていない、または曖昧な部分もムダの要因となります。ちょっとしたムダも、長期的に続けば作業者への慢性的な負荷や大きな工数のロスにつながります。

対策のヒント
  • 例:組み付けると見えない部分まで研磨して外観を良くしたり、仕入れている部品のねじ穴の精度が大幅に向上しているにもかかわらず、従来通りタッピングの仕上げを行ったりしていました。
  • 対策:従来からのルーティンにムダがないかどうか作業者と管理者が議論することが大切です。また、技術的な観点からより効率的な工法がないかなどを見直すことも重要です。

在庫のムダ

製造現場における在庫は、原材料や部品、仕掛品、完成品などさまざまです。この中に不必要、つまり付加価値を生まず、保管スペースや在庫管理のコストだけがかかるものがあれば、それはムダな在庫といえます。また、在庫のムダは、ほかのムダと大きく関係します。作り過ぎのムダは在庫が増え、倉庫に入れる際も運搬のムダが増えます。

対策のヒント
  • 例:追加発注に備えて受注数より多く作ってしまったものの、実際に来た注文で仕様や材料などの指定が変更されていた場合、こうした在庫は付加価値を失い、在庫品にかかったすべての労力とコストがムダになるリスクがありました。
  • 対策:必要なときに必要分だけを製造する「ジャストインタイム(JIT)」で、可能な限り在庫を持たないような工夫が必要です。

不良・手直しのムダ

不良の発生と廃棄によるムダ、手直しや作り直しにかかるムダです。歩留まり率の低下による作業者の労働力や材料のロス、廃棄や一時保管するスペースにかかる費用など多くのムダの原因となります。

対策のヒント
  • 例:成形工程で大量のワークに発生した小さなバリが、次工程での組付けに影響してしまうことが判明した場合、貴重な人員の労力と時間をバリ取り作業に費やすことがありました。同時に、仕掛品による在庫のムダや次工程での手待ちのムダにもつながっていました。
  • 対策:このような事態を防ぐには、標準の見直しや工程ごとの検査による不良の早期発見と再発防止、また、機械や装置の状態監視による予知保全などが重要となります。

手待ちのムダ

文字通り、手待ち状態のことで、付加価値を生まないムダな状態といえます。作業者にとっても手待ちと納期の兼ね合いで残業が必要になるなどの負担が生じます。作業とそれにかかる時間が標準化されていないと、作業スピードが不明確となり、手待ちを顕在化することができません。特に多品種少量生産かつ短納期の場合などでは、工程ごとの標準化が間に合わない場合も少なくありません。

対策のヒント
1つの工程での手待ちは、前後の工程と影響し合います。一般的な対策として、まずは1個流しで検証をすることが挙げられます。ほかにも、現場レベルで体系的に標準化を行う方法もあります。たとえば、品種替えなどの都度、各工程で標準作業と時間を素早く検証し、各リーダーが標準時間の見積もりを報告する体制です。こうした体制があれば、急な受注であっても管理者が各工程の見積もりを素早くまとめて全体の標準化をスムーズに行うことができ、手待ちのムダを最小限に抑えることができます。もちろん、管理者と現場のリーダーとメンバーであらかじめ標準化についての教育や訓練、ケースごとのパターン化、イレギュラー時の取り決めなどを行っておく必要があります。

作り過ぎのムダ

7つのムダのなかでも最も注目すべきムダといえます。作り過ぎると在庫のムダや運搬のムダなどにつながるためです。また、作り過ぎている状況では、現場がフル稼働して大多数の人員が忙しくなり、手待ちのムダや動作のムダの検証や改善が放置されてしまうケースも少なくありません。

対策のヒント
工程やライン単位で、全体的な生産量を見直すことは現実的ではありません。しかし、作り過ぎの状況では管理上見過ごされがちな、手待ちや動作のムダは現場レベルでしか気づくことができません。同時に、現場が標準通りに作業していても上手くいかない場合、生産量の管理に問題を疑うことができます。一方、必要量以上を作っている工程を止めれば、手持ちのムダが顕在化します。つまり、標準化に不備・不足などがあり、見直しが必要であることがわかります。

動作のムダ

現場作業における動作のムダは、タクトタイムに影響するだけでなく、作業者に必要以上の負担や疲労を与えている可能性もあります。

対策のヒント
現場では作業を標準化して、異なる人が担当してもムダな動きが生じないようにすることが重要です。ムダな動作をしているのは作業者ですが、その原因となっているのは作業の手順や環境などです。動作のムダの原因を顕在化させるには、適切な動作を体系的に検討する必要があります。それには、「動作経済の原則」を活用することが有効です。

運搬のムダ

不必要な運搬のことです。動作のムダと共通する部分もありますが、運搬の距離や回数、理由などを検証することが大切です。

対策のヒント
運搬のムダとして代表的なのが、ムダな積み替えや仮置きの発生です。これらは、タクトタイム上の割り振りが悪いことで他工程とうまく同期できていないことや、標準化が不足していることによる必要以上の運搬回数とともに生じます。また、作り過ぎのムダの項目でも説明したように、作り過ぎていることによって運搬のムダを生むこともあります。こうした性質から、多角的な見直しが重要となります。

体系的な課題抽出と連携が、ムダ排除の鍵

経営・管理体制を最適化してムダができないようにコントロールすることが基本ですが、現場から経営や管理を改善する機会が作られるケースも少なくありません。現場では5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底するなかでムダを見つけることができるほか、工程やライン、作業場といった単位でしか気づかないムダは多岐にわたります。
一方、現場でムダを見つけても、それを排除するための具体策の検討が容易ではない場合があります。そこで、「組み合わせる・組み替える・簡素化する」というように思考を変えることで、ムダの排除につながることがあります。こうした思考法としては「ECRSの4原則」が代表的です。

多くの場合7つのムダそれぞれにフォーカスすればするほど、他のムダとの関係性が顕在化されていくことがあります。持ち場のムダを体系的に見直すことはもちろんですが、多種多様な要素で構成され、チームワークで成り立っている製造現場では、他工程や他部門とのバランスを調整することがポイントになります。
日頃から身の周りのムダを抽出し、それを互いに情報交換して調整することで改善会議がより有意義なものになります。そして、たとえ小さなムダの排除であっても、それの積み重ねや相互作用が、やがては会社全体の利益向上につながります。何よりも自分自身の仕事にムダがなくなり、より実りのあるものへと変わっていくので、モチベーションを維持して取り組めそうですね。

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