線維化の定量化
線維化とは
線維化とは、組織中の結合組織が異常増殖する現象のことをさします。心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓など、脳以外のほぼ全身の主要な臓器で発生し、線維化を起こした臓器は、最終的に機能不全に陥ります。
心筋線維化が起きると、拡張型心不全の原因になることが知られており、また不整脈や突然死の原因にもなるとされています。肺での線維化は間質性肺炎を引き起こし、肺の間質が厚く硬くなって肺が縮み、酸素が取り込みにくくなって安静時でも息切れする症状が発生します。肝臓での線維化は、肝硬変の原因となっています。また、線維化を引きおこす線維芽細胞は、がん間質組織内にも多数存在することが知られており、がんとの関連についても研究されています。線維化が生じた臓器を元に戻すことは難しく、早期の発見・進行の抑制が重要とされています。線維化の進行度を評価するために、マーカーとして、産生されるコラーゲンや、血小板数、糖鎖バイオマーカーなどを利用する手法も開発されています。
また線維化に対する有効な治療薬が乏しく、症状が進行すると変化が不可逆になることから、再生医療の観点からも線維化は研究されています。
線維化のメカニズム
正常な組織では、組織障害により炎症反応が起きると、マクロファージによる免疫応答とともに、TGF-βなどの炎症性サイトカインが分泌されます。炎症性サイトカインは、線維芽細胞の増殖と、筋線維芽細胞への分化を促進します。筋線維芽細胞は、細胞外マトリックスを構成するコラーゲンを産生し、修復の材料として十分な量が供給されることで炎症部が治癒していきます。
慢性的な炎症が発生していると、過剰な損傷修復反応により、筋線維芽細胞によるコラーゲンが吸収されずに沈着することで、線維化が進行していき、最終的には臓器の機能不全につながっていきます。
線維化率の計測事例
以下の例では、キーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡BZ-X800を利用して、心臓の観察とその線維化率の計測をおこなっています。線維化部の観察においては、低倍率では画像が不鮮明になり、精度の高い計測はできません。一方で、高倍率では観察する場所により、計測結果が異なってしまい、安定した計測ができません。
そこで、解像度を維持したまま全体像を撮影するために、連結画像を作成することで、精度高く安定した結果を得ることができました。
セルカウント機能を使うことで、線維化している箇所の全体組織における面積率を、簡単に計測できています。
使用対物レンズ:CFI60 CFI Plan Apo λ 4x
イメージジョイント:3枚×4枚
また、線維化率の計測に使用した条件を保存しておき、他の標本に対して一括適用することもできます。
複数の組織における線維化率の違いを、簡単に再現性高く評価できます。
オールインワン蛍光顕微鏡 BZ-X800を導入すれば
- 視野に入りきらない大きな切片に対して、ステージを移動しながら画像を取得し、撮影した画像を連結させることで、1枚の高解像度画像を撮影できます。
- 標本に傾きや段差があってもZ方向に複数枚の画像を取得し、撮影した画像からフォーカスが合っている部分だけを合成することで、標本全体にピントがあったフルフォーカス画像を構築することができます。
- ハイブリッドセルカウントを使用して、切片全体の中から線維化している部分だけを抽出し、割合を自動計算できます。
- ハイブリッドセルカウントで抽出した条件を元に、マクロセルカウントを使用して複数の画像を一括処理できます。